見たらダメか？
見たらダメか？
あいつはホントに
何、考えてるんだ？
さぁ……。
締め出された与兵は、とりあえず納屋から持ち出した武器の整理を始めました。
吾助はその隣で、腕を組んで納屋の壁に寄りかかって立ち、与兵の作業を見ています。
怪我だって骨がくっついたってだけで、まだ完全じゃないんだろ？
全部違う武器のようで、重ねて収納することができません。
筋力が落ちてるが、よっぽどのことをしなければ、悪化したりしないはずだ。
とりあえず、与兵は同じ種類の物で区別することにして、槍とさすまたと斧と刀に分けました。
座ってできるし、足も動かすみたいだし、いいリハビリになるかもしれない。
そうなのか？
ああ。
与兵がさっきの柄が取れた刀を、他の刀と一緒に束ねていました。
……。
吾助はそれを、じっと見つめています。
とんからりん
とんからりん
とんからりん
中から軽快なはた織りの音が聞こえてきました。
この音、
なんだ？
とんからりん
とんからりん
とんからりん
とんからりん
とんからりん
とんからりん
さぁ？
はた織りの音？
与兵は武器をガチャガチャさせるのをやめ、耳をすまします。
こんな音すんのか？
与兵たちには馴染みのない音です。
とんからりん
とんからりん
とんからりん
俺も実際に聞くの初めてだし。
とんからりん
とんからりん
とんからりん
とんからりん
とんからりん
とんからりん
はた織りって、
何するんだ？
布ができるらしい。
布？
それで、着物ができるとか。
とんからりん
とんからりん
とんからりん
とんからりん
とんからりん
とんからりん
……。
与兵は心配そうにその音を聞いています。
とんからりん
とんからりん
とんからりん
とんからりん
とんからりん
とんからりん
とんからりん
とんからりん
とんからりん
何やってるのか、
覗いてみたくなるな……。
とんからりん
とんからりん
とんからりん
とんからりん
とんからりん
とんからりん
とんからりん
とんからりん
とんからりん
やめとけば？
でも、恥ずかしいって言ってたのも気になるし。
とんからりん
とんからりん
とんからりん
とんからりん
とんからりん
とんからりん
こんな感じ……?
とんからりん
とんからりん
とんからりん
お前が想像しているはた織り
エロいな……。
いや……
芸術的な感じ？
これじゃ織れないと思うが……。
とんからりん
とんからりん
とんからりん
とんからりん
とんからりん
とんからりん
じゃ、これ？
あいつが女じゃないって、
確認してるんだよな？
うん……。
こうだったらいいのになっていう幻想が入った……。
とんからりん
とんからりん
とんからりん
とんからりん
とんからりん
とんからりん
成長して、こうならないかな……。
巨乳……、
好きだもんな。
ないよりは
あった方がいい。
手術してみるか？
吾助はなんでもできるスーパードクターです。
そういうのはダメだ。
自然がいいんだ。
わりと即答しました。
……。
俺、今のままで……
そか。
与兵も「何がなんでも女がいい！」というわけでもありませんでした。
基本、来る者は拒みません。
今までは女性ばかりだったというだけです。
吾助はそんな与兵を、ずっと見ていました。
とんからりん
とんからりん
とんからりん
とんからりん
とんからりん
とんからりん
とんからりん
とんからりん
とんからりん
……。
与兵は黙って武器を片付けています。
とんからりん
とんからりん
とんからりん
とんからりん
とんからりん
とんからりん
とんからりん
とんからりん
とんからりん
とんからりん
とんからりん
とんからりん
とんからりん
とんからりん
とんからりん
見てないで、
手伝ってくんない？
なんで俺が？
そうだよな……。
吾助はこういうことはしません。
与兵は仕方がなく、ひとりでやります。
とんからりん
とんからりん
とんからりん
とんからりん
とんからりん
とんからりん
とんからりん
とんからりん
とんからりん
あいつ、女装趣味なのか？
それとも、女になりたい？
そういう風習があるところらしいが……。
男が女装する風習？
そんなのあるのか？
あの格好が普通だと言っていた。
男と女が同じ格好をしているから、それがおかしいと思ってないのかも。
似合わないヤツも
女装してるってことか？
女装が似合うようなヤツばかりの町とか……？
美形ばかりいる町……？
とんからりん
とんからりん
とんからりん
だが、女だと思って付き合っても、男という可能性がある恐ろしい町だ……。
それくらいのリスクは負わないと。
とんからりん
とんからりん
とんからりん
とんからりん
とんからりん
とんからりん
あの愛らしさで
女っていうヤツもいるのか？
もし、そういう女が現れたら
どうする？
鶴太郎の顔をした女？
とんからりん
とんからりん
とんからりん
とんからりん
とんからりん
とんからりん
与兵は首を振ります。
あんなのが二人もいたら
頭おかしくなるよ。
二人とも面倒見る気なのか？
え？
とんからりん
とんからりん
とんからりん
とんからりん
とんからりん
とんからりん
とんからりん
とんからりん
とんからりん
女がいないとか……。
だとしたら、
全員がトラップってことか？
とんからりん
とんからりん
とんからりん
同じ顔のヤツしかいない町……。
全員鶴太郎？
とんからりん
とんからりん
とんからりん
とんからりん
とんからりん
とんからりん
ホラーだな……。
そうだな……。
名前も鶴次郎、鶴三郎、鶴四郎、鶴五郎とか……。
そこまで考える？
とんからりん
とんからりん
とんからりん
とんからりん
とんからりん
とんからりん
とんからりん
とんからりん
とんからりん
とんからりん
とんからりん
とんからりん
とんからりん
とんからりん
とんからりん
冗談は置いといて……。
冗談だったのか？
まあ、
ちょっとだけ？
とんからりん
とんからりん
とんからりん
あいつさ、嫁になりたいだけって気もするんだよな……。
嫁ってことは、女になりたいってことなんじゃないのか？
なんか微妙に違うんだよ。
とんからりん
とんからりん
とんからりん
とんからりん
とんからりん
とんからりん
嫁＝夜の営み
みたいな？
だから「しようね」って感じがするんだよな。
ガサツだしガキだし
図々しいし。
とんからりん
とんからりん
とんからりん
とんからりん
とんからりん
とんからりん
そこがかわいかったりするんだけど……。
とんからりん
とんからりん
とんからりん
とんからりん
とんからりん
とんからりん
バカだろ……。
……。
とんからりん
とんからりん
とんからりん
とんからりん
とんからりん
とんからりん
「恩返し＝嫁になる」
とも言ってたぞ。
とんからりん
とんからりん
とんからりん
とんからりん
とんからりん
とんからりん
どうしてそうなる？
パパに言われたそうだ。
パパ……？
とんからりん
とんからりん
とんからりん
とんからりん
とんからりん
とんからりん
そういう男がいるのか？
忘れていましたが、与兵は鶴太郎がいかがわしい組織から逃げてきたと思っています。
実のパパだそうだ。
……。
とんからりん
とんからりん
とんからりん
とんからりん
とんからりん
とんからりん
実のパパか……。
そりゃ、いるよな……。
与兵は背筋がヒヤっとしました。
俺、そうとう怒られるよな……。こんなちっこいのに手を出して……。
ワシの娘になんてことするんじゃ！
与兵は父親という言葉を聞いて、おじいさんを思い浮かべました。
与兵にとっての父親は、おじいさんでした。
あ……
違った。
ワシの息子に
なんてことするんじゃ。
娘より、息子の方が怒りも減るかな？
いや、
もっとダメだろ……？
こんの
下半身男が！！
……。
やっぱりそう言われることを、想像してしまいました。
とんからりん
とんからりん
とんからりん
はぁ……。
与兵は小さくため息をつきました。
とんからりん
とんからりん
とんからりん
とんからりん
とんからりん
とんからりん
とんからりん
とんからりん
とんからりん
武器の仕分けも終わったので、あとは納屋に戻すだけですが、納屋ははた織り専用ルームと化してしまうでしょう。
どこに片付けよう……。
与兵は吾助の隣の壁に移動して、そこに寄りかかって座りました。
とんからりん
とんからりん
とんからりん
吾助は武器をじっと見つめます。
９９９にはまったく及びませんでしたが、８０はありました。
後で調べてみるか……。
吾助はそっと思いました。
とんからりん
とんからりん
とんからりん
とんからりん
とんからりん
とんからりん
とんからりん
とんからりん
とんからりん
とんからりん
とんからりん
とんからりん
とんからりん
とんからりん
とんからりん
中、見てみたいよな……。
またそれを思い出したようです。
そうか？
とんからりん
とんからりん
とんからりん
とんからりん
とんからりん
とんからりん
どうやって織っているのか、
正解が見たくないか？
お前が想像してるのは違うと思うけど……。
とんからりん
とんからりん
とんからりん
とんからりん
とんからりん
とんからりん
たしかに、
見たい気もする……。
だろ？
こういう作業って、面白そうなんだよな。
職人技みたいなのって、
見てて楽しいんだよ。
とんからりん
とんからりん
とんからりん
とんからりん
とんからりん
とんからりん
でも、何度も「覗くな」って言ったってことは、「覗け」ってことかもしれない。
……。
とんからりん
とんからりん
とんからりん
とんからりん
とんからりん
とんからりん
お笑い芸人？
さあ？
とんからりん
とんからりん
とんからりん
とんからりん
とんからりん
とんからりん
そう思うと、
見たくなくなる。
そか。
とんからりん
とんからりん
とんからりん
とんからりん
とんからりん
とんからりん
とんからりん
とんからりん
とんからりん
とんからりん
とんからりん
とんからりん
とんからりん
とんからりん
とんからりん
けっこういいリズムだけど、これって上手いのか？
さぁ？
織ってるところを見ているわけでもないし……。
とんからりん
とんからりん
とんからりん
とんからりん
とんからりん
とんからりん
やっぱり
見たくないか？
お前、思いっきり
見たそうだな……。
とんからりん
とんからりん
とんからりん
とんからりん
とんからりん
とんからりん
とんからりん
とんからりん
とんからりん
あ……、
止まった。
ドアが開いて、鶴太郎が出てきました。
うるっさいんだけど。
気ぃ散るからあっち行っててくんない？
あ……悪い……。
追っ払われました。
