耳障りだ
早くこの音を止めろ
花火の音がする
耳障りだ
早くこの音を止めろ
一体何なんだよ!
父さんまで!
優、良く聞きなさい。
優は父さんに従っていればいいんだ
わかったね?
…はい
父さん…
昔父さんに言われた言葉が脳裏をよぎった
ゆうちゃん…
あの子…
女の子はこちらへ不安定な足取りで近づいてくる
…貴方の名前を教…えて…
吸い込まれそうな瞳に
俺はしばらく呆然としていた
……ちゃん…
…ゆうちゃん!
あぁ、悪い。
ぼーっとしちまって…さ
そういえば名前を聞かれているのだった
他の事で頭がいっぱいになっていて
忘れてしまうところだった
俺は優 こっちは俺の姉貴の由美だ
由美だよ!
よろしくね!
そう…
いい…名前ね…
まぁ、それは母さんに感謝だな…
そっちは
母さん…
嫌なことを思い出す前に俺は話を変えた。
な…まえ…?
…忘れちゃった
この子…
さっきから何かがおかしい…
見た目や年と挙動が一致してないような…
優、由美そろそろ行こうか
長老様に怒られてしまうよ
う、うん
そう言ってその少女の話を聞けぬまま
俺たちは祭りは会場へ急いだ。
ゆうくんか……
そうこうしてるうちに祭りの主となるところ
つまり島の中心だ。
遅かったのう
待ちくたびれたぞ
いやぁすいません
もう、始まっちゃいましたか??
父さん…
大丈夫じゃよ
主役が来ないと祭りは始まらんからの
「主役が来ないと祭りは始まらない」
このフレーズ…
主役…祭り…
…俺の予測が正しいのであれば
もしかしたら…俺は…俺たちは……
あぁ、言い忘れていたが
今回の祭りで由美たちは指名されるんだ。
俺は一瞬理解が出来なかったが
不思議と体は勝手に動き出していた。
由美姉!
え、ちょ、ゆうちゃん!?
俺は姉貴の手を取り夢中で
石段を蹴った。ただ走った。
いや、走らなければならなかった。
くそ…
どうなってんだ…!
きゃっ
誰かにぶつかった
こんなときに!!
悪い!
急いでて…
ちょっと!ゆうちゃん!
なんで急に走るの!?
そうしなきゃ俺たちは…
奴隷になってたんだぞ?!
じょ、冗談はやめてよ…
ね?ゆうちゃん…
あの…
一体何が…
…こっちの話だ
さっきは悪かったな
ほら、行くぞ姉貴
ゆうちゃん!
っ痛…
姉貴は表情を歪めた。
ど、どうしたんだよ
さっきの石段で足を…
どうやら足をくじいてしまったみたいだ
あの、よかったら僕の家近くなので
手当しましょうか…?
…そうさせてもらえると助かる
じゃあ、着いてきて下さい!!
少年(?)は嬉しそうに手招きをしている。
姉貴…
とりあえずはあの子んちでお世話になろう
うん…
あと、優ちゃん
ん?
どうした?
姉貴は頬を赤らめながらこっちを見ている。
おんぶ…して…?
…わかったよ
ほら…
そういうと姉貴は嬉しそうにおぶられた
ほら!
早くしないと置いてきますよー!
あ、あぁ!
すぐ行く!
そう言って俺は少年(?)の元へ急いだ。