俊之

おはようございます。

朝早く、絵美の家に俊之がやって来た。

今日は絵美の父と釣りに行く予定だ。

絵美の父

おお、来たか。
ちょっと待っていてくれ。

家の奥から絵美の父の声が聞こえてきた。

そして隆行が玄関にやって来る。

隆行

おはようございます。

俊之

隆行も行くの?

隆行

俊君が行くのに、実の子の俺が
行かない訳にはいかないですよ。

俊之

そか、そか。

隆行

それに、俺、俊君とちょっと
色々と話をしたいなって思って。

俊之

ん!?
何を?

隆行

それは、
釣りでもしながらって事で。

俊之

OK。

すると、絵美の父がやって来る。

絵美の父

お待たせ。
道具はもう全部、車に積んであるから。

俊之

すみません。

絵美の父

じゃあ、行こうか。

俊之、隆行の順に玄関から外に出て、
絵美の父が最後に玄関から外に出た。

そして絵美の父が玄関の戸を閉める。

家の前の道に車が停めてあった。

普段は少し離れた駐車場に停めてある。

俊之が来る前に絵美の父が準備の為、
家の前まで車を移動させていたのだ。

絵美の父

さあ、乗った、乗った。

そう言いながら、絵美の父は運転席に座った。

続いて隆行が運転席の後ろの席に座る。

俊之

お邪魔します。

最後に俊之が助手席の後ろの席に座った。

絵美の父

なんだ!?
二人共、後ろでいいのか!?

絵美の父が車のエンジンを掛ける。

隆行

俺、俊君と話をしたいから。

俊之

だそうです。

絵美の父

そうか。
じゃあ、出発をしよう。

絵美の父がギアを入れて、アクセルを踏む。

車が発進した。

すぐに丁字路に突き当たる。

絵美の父がハンドルをきって、車が左折をした。

絵美の父

俊君、ありがとうな。

俊之

どうしたんですか?

絵美の父

俊君が来なかったら、
隆行は来なかったと思うんでね。

俊之

そうなんですか!?

隆行

俺、父さんと釣りに行くなんて、
何年ぶりだか。

俊之

そうだったんだ。

隆行

父さん、こんなに喜ぶんだったら、
たまには相手をしてあげれば
良かったかな。

絵美の父

何、生意気を言っているんだ。

俊之

やっぱり、いいですね。

隆行

何がですか?

俊之

父親ってさ。

隆行

そうでもないけどな~。
うるさいばっかで。

絵美の父

隆行、父親に向かって、
うるさいとは何だ。

隆行

ほら、これだもん。

俊之

ははは。

この後も三人は他愛のない話を続けながら、
海へと向かった。

一時間ちょっとも過ぎると、目的地に到着する。

今日は磯釣りをする予定だった。

三人はそれぞれ、
車のトランクから出した釣り道具を抱えて、
釣りをするポイントへと向かう。

そして俊之は先ず、
絵美の父に釣りの仕方を教わる。

絵美の父は俊之に釣りの仕方を一通り教えると、
俊之の事を隆行に任せて、
自分のポイントを探しに行く。

隆行はすぐ近くの岩場で腰を下ろして、
釣りを始めた。

俊之も隆行の方へ行き、
少し距離をとって釣りを始めて、
隆行に声を掛ける。

俊之

んで、話って何?

隆行

姉貴の事なんですけど、

俊之

うん。

隆行

俊君、なんで、姉貴なんかと
付き合っているんだろうなって。

俊之

お前な~、姉ちゃんに向かって、
なんか、はねぇだろ。

隆行

実際のところ、
姉貴の何処がいいんですか?

俊之

何処って言われてもな~。
俺は絵美の可愛らしいところが
好きだとしか言えないな。

隆行

そんなに可愛いですかね。

俊之

だから、一言で言えば、
俺のタイプなんだよな。

隆行

確かに見た目は、
悪くはないのかもしれないけど。

俊之

けど!?
何だよ?

隆行

姉貴、馬鹿でしょ!?

俊之

お前な~、
俺の彼女に向かって馬鹿って。

隆行

すみません。

俊之

まあ、いいさ。
その内、びっくりするだろうから。

隆行

どういう事ですか!?
それ?

俊之

だから、絵美、今、
俺と一緒に勉強をしているからさ。

隆行

そんな簡単にびっくりする程、
成績が上がったりしますか?

俊之

少なくとも、
絵美が馬鹿じゃないって事は
判ると思うよ。

隆行

ふ~ん。

俊之

隆行は絵美の事を二度と、
馬鹿とか言えなくなると思うな。

隆行

じゃあ、100番以内に入ったら、
ちょっと見直すかな。

俊之

100番以内だったら、
先ず間違いないかな。

隆行

マジですか!?

俊之

上手くいけば、50番以内だって、
いけると思うよ。

隆行

そうなったら、
マジでびっくりしちゃいますね。

二人は釣りの事なんか忘れて話し込んでいた。

恐らく、針についていた餌はもう、
なくなっているであろう。

そんな事は気にも掛けずに
二人は話を続けている。

俊之と隆行は別に誰かを待っている訳ではないが、
まるで中国の故事に登場する太公望の様に、
釣れるはずのない釣り糸を垂らして、
格好だけ釣りをしている様な感じで、
いつまでも尽きる事の無い話を続けていた。

エピソード17/二人の太公望!?

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