――キルケー魔法女学園 研修施設 廊下――
――キルケー魔法女学園 研修施設 廊下――
いつもはサリーがアン先生に詰め寄ってるのを見て『やめてください』とばかり思うのに……
今回はもっとやれと思ったと
違いますけど、遠からずです
そんなことを話しながら廊下を歩いて行く。
やけに靴音が響く廊下は薄暗く、ほこりっぽい匂いがした。
壁にツタが絡んであちこち痛んでいる外観よりはマシと言えるだろうが、内装もとにかく古い。
豪奢なシャンデリアもところどころ蜘蛛の巣が張っているし、ランプの代わりに取り付けられた電球も瞬いている。
漆喰の壁は部分的に剥がれ落ち、隙間からは虫が這って出てきていた。
これにはレイリーも真っ先に悲鳴をあげていたくらいだ。
部屋はもう少しマトモだといいんですけれど……
さてこの様子だとどうでしょうね
あ、夫人~。ヴェロニカたちの部屋はこっちだよー
廊下を右に曲がったところでヴェロニカが手を振る。
部屋は二人につき一部屋割り当てられており、ヴェロニカはエマニュエルと、サニーはレイリーと、チズはナタリアと同室だった。
ドアは立派なんですけどね……。ではまた後ほど
うん、また後で……
気落ちしすぎじゃないですか、サリー。気持ちはわかりますけど
豪華な洋館で二日遊べると思ったらお化け屋敷だった時の絶望
でも私たち、遊びに来たわけじゃ――
そう言いながらレイリーが自分たちの部屋のドアを開けようとする。
が、開かない。
あら? 鍵がかかってるんでしょうか
何度ノブを回しても同じことだった。
押せども引けどもドアはビクともしない。
ええ? これだけ古い施設なんだから、錆び付いてるだけかもよ。ちょっと貸して
そしてサニーがノブを回すと驚く程あっけなくドアが開く。
ほら、開いたじゃん
んん……気のせいでしょうか
――キルケー魔法女学園 研修施設 部屋――
あーでも部屋は結構いい感じ!
そんなに広くないけどベッドもキレイだし、シャワー付きだ~
本当ですね。これなら落ち着いて寝られそう
自然とサニーがドアに近いベッドを、レイリーが窓際のベッドを選ぶ。
そして荷物を置いてまた広間に戻ろうかという時。
窓に映った影に気が付いたのは、レイリーだった。
?
ん? どしたのレイリー
窓の外から誰か覗いてました。誰かのイタズラかしら
もう広間に戻る時間のはずだけど、と言いながらレイリーが窓を開けてみると。
ヒュウと風がレイリーの髪をさらう。
……え?
そういえばここ2階じゃん。
見間違いじゃないの?
見下ろすと外から見たボロボロの外壁があった。
足場も特になく、大きな洋館なので地面まではだいぶ高さがある。
確かに見たと思ったんですけど……
呟きながら窓を閉め、二人は広間へ戻る。
人気のなくなった部屋でカタンと窓枠が鳴った。