どうして急にそんなに弱々しいの。
私何かまずいこと言ってしまった?

頭の中がはてなで支配されていると、
渡くんはニコリと笑った。

渡斗真

そういえばさ、学祭の準備始まるじゃんか。俺、青木さんと一緒に実行委員するよ。

青木尚

は、い、?





渡くんによって急に変えられた話に、一瞬ついていけなくなった。


渡くんと木下さんことで頭がぐるぐるとまわっていたものだから。



青木尚

よ、よくないよ。




話をそらすのが随分と下手だな、と思いながら否定をした。

私はクラスメイトBくらいの立ち位置で生活を送っていたいのだ。
そんなヒロインルートに引き込まれても困ってしまう。


渡斗真

俺と、恋愛するんでしょう?フラグは立てておこうよ。ね?




馬鹿じゃないの、

そう言おうとしたけれど
私の声は飲み込まれる。



決定ね。と言った渡くんが
なぜか酷く痛そうな表情を浮かべていたから。




やはり、渡くん変だ。
どうしてなのかわからないけれど、様子がおかしい。



そんなことを考えていたら、


青木尚

うん…。





彼に思わず頷いてしまった。


















それでは渡くんと青木さんに決定します。
という担任の声でまばらな拍手が飛んだ。


帰りのホームルームで、私は見事実行委員に選出されたのだ。


渡くんと私の立候補、
クラスの誰しもが驚いていたと思う。



また敵が増えてしまうのは、
もうわかりきっていた。



王子様である渡くんの隣で、
驚きと不満そうな顔をしたクラスの女子の前で、
目を輝かせた佐藤の前で、

私は小さくため息をついては泣きそうになった。





渡くんが立候補したことにクラスメイトはみんな大賛成で喜んだ。
でも、渡くんが立候補したことにより、私もやりたいという女子はたくさんいたのに。


手をあげろよ?青木さん。


そう、言われていたことに従うしかなかった私は、心臓をばくばくとさせながら誰よりも早くに手を挙げて。



青木さん?


と驚くクラスメイトを横目に、
さっさと私に決定してしまったのだ。



青木尚

ありえない…。

佐藤藍

ねね、やっぱり!

青木尚

んーん、違うよ。




佐藤がニコリとして、よかったね!と私の手を握った。



違う、という心からの否定なんて彼女の耳には届かない。


佐藤藍

でもまあ…。もっと引きずるかと思ってたから。




あの人のこと、

佐藤が指したあの人とは、
リトさんと出会うきっかけとなった人のこと。


青木尚

大丈夫、それは、ないよ。





佐藤に対する嘘がどんどんと増える。
大丈夫だよ、の一言に何も込められていないことに、きっと佐藤は気付かない。



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