マリーさんは、やっぱり怒っていた。
しかし、それにかまわず、クロードさんは話を続けた。
……。
マリーさんは、やっぱり怒っていた。
しかし、それにかまわず、クロードさんは話を続けた。
木の実を採りに、森に入ったときのことです。
マリー様は、当時、活発なお方でして、晴れている日は、いつもお屋敷の外に出て、遊んでいたんです。
クロードさんは思い出すように話し始めた。
へえー。意外ですね。
マリーさんの第一印象として、とても優しい穏やかな人という印象があったので、少し驚いた。
そして、いつもなら、当時子供であった、私を含める使用人の誰かがついていたのです。
しかし、その日に限って仕事が多く入っていて、マリー様についていられる使用人がいなくなってしまったのです。
クロードさんは少し暗い顔をした。
仕事ですし、仕方がないことじゃないですか。
私は、クロードさんに言った。
誰でも、そういう時はある。
ええ、確かにそうなのですが……。
その日、マリー様は森に木の実を採りに行ったみたいで……。
ああ、よくある展開……。
森で迷子になっちゃったんですか?
私は、言った。
はい……。
私たちが気づいた頃には、日が傾きかけていて……。
すると、マリーさんが話しに入ってきた。
あ、あの時は仕方なったのよ。
誰も、私のことを相手にしてくれないし……。
少し照れながらマリーさんが言う。
意外と寂しがりやさんなんですね。
このとき私は、マリーさん使用人達に好かれている理由がなんとなくわかった気がした。
え!?
私、からかわれてる!?
それで、、私たちは総出でマリー様を探したんです。
どこにいたんですか?
私はクロードさんに聞いた。
それが、森の中にある花畑で、眠っていらっしゃって。
マリーさん可愛いですね。
……。
マリーさんは何も言わないで、顔を赤くして俯いている。
ええ、正直、ほっとしました。
だから、こういうことが無いようにと、マリー様のお父様から、怖い昔話を作り、勝手にマリー様が森の中に入るのを防ぐという依頼があり、当時の使用人達でこの話を作ったということですね。
まあ、正直、怖くもなんとも無いのですが……。
それを言ったら、マリーさんがかわいそうですよ。
ふ、ふんっ!
そんな話、怖くもなんとも無かったわ!
こういう性格が、使用人から好かれる性格なんだろうなー。
私は心の中で思った。
あらあら、はじめてこの作り話を聞いた夜にお漏らしをしたのは誰でした?
サフィラさんが不適な笑みを浮かべて話しに入ってきた。
そ、そんなこと……。
わ、忘れたわ!
マリーさんは、たぶんこのことを鮮明に覚えているのだろう。
私には、わかってしまった。
こらこら、食事中にそういう話は厳禁だ。
まあ、マリーの可愛い話が聞けたから、別に良いけど。
とうとう、アーサーさんまで話に乗ってきてしまった。
ア、アーサー!
ハハハッ。
フフフッ。
フフッ。
そんなこんなで、私は、このお屋敷の住人達と楽しく食事をした。
このときは、まだ思いもしなかった。
これから始まることになる、恐怖の時間の存在を……。