考えたところで、僕の脳みそでは…あれが限界なのだろう。
諦めて食堂へ向かい、途中にある調理場へ足を運んだ。
早くも夕飯の準備を始めているのか、調理場はいい香りが漂い、不謹慎にも少しお腹が減ったと思った。
あれ…アンタ…。
あぁ、宮代さん。
夕飯の準備ですか?
そう。
アンタはどうしたの?
……何か…
忙しいんじゃないの?
そういえば…
千堂さんがフォローしても
工藤さんの死を知ってる人は…。
あの……。
まぁ…そうなんです。
遠くにいるけど…
ここで話すのは憚られるな。
あ、話さなくていいから。
想像はついてるの。
そうなんですか?
うん。
一度、羽鳥がきてるしね。
羽鳥さんが…?
アイツ意味わかんない。
イカとタコとひじき…
ジューサーにかけて持ってたのよ。
飲めるか!!!
そういえば、そんな感じの独り言してたな…本当に作るなんて…大丈夫かあの人。
でしょ。
なんでも田畑用らしいけど。
…そんなことしたら田畑さんが…!
さぁ?
アイツもおかしいから…。
飲んでも大丈夫なんじゃないの?
…………そうですね。
あ、それであの…
聞きたいことがあったんです。
ん?
えっと…羽鳥さんが来たときから居たってことは…その時から今までここに?
………そうよ。
あ、よかった。
その間に、只野さん来ました?
……只野…?
ご存知ないでしょうか…。
あぁ、いや…わかった。
あの腹黒そうなモノクルだ。
腹黒そうなモノクルって…。
来るには来たわ。
なんだか水が欲しかったみたい。
じゃあ…本当のことだったんだ。
あぁ、でもね。
そんときくらいかな?
包丁が一本なくなってるの。
え…。
……私、作業中で見てなかったけど…もしかしたらソイツ一本持ってたのかもしれないのよ。
そんな…。
結局…包丁は…ここから来たもの…なんだ。
その時に刃物がなくなったのなら…日向さんは自殺が出来ない。
だとしたら…まるで只野さんが…。
………何かあったのね。
はい。
ま、いいわ。
解決したら聞かせて。
はい。
それじゃあ僕…
食堂に行って来ますね。
うん。
いってらっしゃい。
ふー…あれじゃ…まるで只野さんが殺したか、包丁を渡したって感じだけど…どうやって確かめようかな。
今の状態じゃ判断しがたいな、なんて結論に押されてお目当ての西園寺さんを探して、周囲を見渡す。
西園寺さんは常に騒がしい人なので、だいたい位置は把握しやすい。
だが、近くには意外な人物が立っていた。
ふふ、そうなの。
いいなぁ。
私も誰かを好きになってみたい。
てっきり…只野さんと一緒にいるとばかり思ってたけど…。
それになんだか…思った以上に明るいなぁ…。
ん?何が明るいって?
まさか俺の髪が…後退してるって!?
うわ、いつの間に背後に。
いや、言ってませんし
田畑さんのことじゃないです。
気を使ってくれるのか…
君は実に優しいやつだ。
自意識過剰か!
あー…ところで…
ちょっと…事情が…。
そういえば、この人…たぶん日向さんのこと知らないよね。
ん?
あとで…書庫に行ってもらえますか?
羽鳥さんが…今一人でいるんです。
んー…さすがに佐倉さんのこともあったし…見張りって意味なのは…伝わるかな?
佐倉さん、あっちで楽しそうに雑談してるけど。
わかった、粗品を持っていこう。
家に遊びに行く感覚か!
ふっふっふ…
弘継め…お前は書庫にいる…
ならば粗品をやろう…ふふふ。
何持ってく気だよ…。
気になるか?気になるか?
いえ、なんか…どうでもいいです。
えええ、マジ?
マジです。
早く行ってください。
むー…。
いや、可愛くないですよ。
それじゃ、行って来よう。
さらば!!!
イラッ
そう言って厨房にまっしぐらだ。
本気で粗品を持って行く気なのだろう。
どう考えても、ふざけていい状態ではないと思うのだが、イカタコひじきのミックスジュースを作る羽鳥さんといいネジが足りないように思える。
僕も人のこと言えないか。
……だいぶ変なことで時間食っちゃったけど…西園寺さん達に声…かけてみようかな。
西園寺さん、佐倉さん。
あ、佐藤君。
およ?
話に横槍入れてすみません。
どうかしたの?
あのね、佐藤君。
今ね!ももちゃんから…
彼氏の話を聞いてたのよ!
え、あ…はい?
まさか日向さんのこと…
言っちゃったり…とか…。
あ、ごめん。
あのね…ももちゃん…
只野くんと付き合ってるんだって!
え………?
そんな大きな声で言わないでよ…もう。
ん…と…え…?
付き合ってるんですか?
えへへ…。
ついさっき…恋人になりました!
え……えぇぇぇ…。
いいわよね。
私も恋したいわ。
佐藤君は彼女いるの?
え、いや、あの…
いませんけど………。
いや、そうじゃなくてですね。
あー…佐倉さんの前じゃ言いにくいな。
あの…お菓子の薬って…取り返しました?
こういうときに限って、この言い方が使えるとは…。
えーとね…はい、コレ。
あれ…お菓子の薬って書いてある。
いや、これ別もんだろ!
え?お菓子の薬って書いてるよ?
いや、だからですよ。
んー?
ダメだ、わかってない。
まぁいいです。
なんかもう、この人達って聞けば聞くほどわけわかんないな。なんでいきなり付き合ってんの…この人は冗談じゃなくて、本気でお菓子の薬だと思ってるわけ…。
あれ、結局僕…なにもわかってなくない!?
はぁ…とりあえず…
ありがとうございました。
あの…それと…
佐倉さんはなんで只野さんと?
さっきね、告白されたの。
はい?
ずっと前から好きで居てくれたんだって…。
そ…そうですか。
いっつも…相談に乗ってくれたのは…そういうことだったのね。
ん…いっつも?
そう。日向くんが冷たいときに、どうやったら振り向いてくれるかなーって。
…………。
そう…ですか……………。
????
あ、僕…
そろそろ失礼します。
お話し中…ありがとうございました。
一度、羽鳥さんの元へ向かおうかな…。
それにしても…聞き出せた情報だと…只野さんの告白で、只野さんと佐倉さんが付き合い始めたのか…。
ずっと前から好きで、それで佐倉さんの相談にのってたみたいな事を言ってたけど…。
あれ?佐倉さんが薬を飲んだ理由って…日向さんの気を引きたかったって言ってたけど…
只野さんが……あの仮死薬を勧めたんだろうか。
宮代さんの話だと包丁を持って行ったのは只野さんで…。
………全部…
只野さんの計画で思惑通り…?
15話 恋心・愛情・狂愛2