考えたところで、僕の脳みそでは…あれが限界なのだろう。

諦めて食堂へ向かい、途中にある調理場へ足を運んだ。


早くも夕飯の準備を始めているのか、調理場はいい香りが漂い、不謹慎にも少しお腹が減ったと思った。


宮代 奈々子

あれ…アンタ…。

佐藤 紘

あぁ、宮代さん。
夕飯の準備ですか?

宮代 奈々子

そう。
アンタはどうしたの?

宮代 奈々子

……何か…
忙しいんじゃないの?

佐藤 紘

そういえば…
千堂さんがフォローしても
工藤さんの死を知ってる人は…。

佐藤 紘

あの……。
まぁ…そうなんです。

冴木 美也子
東雲 日和
佐藤 紘

遠くにいるけど…
ここで話すのは憚られるな。

宮代 奈々子

あ、話さなくていいから。
想像はついてるの。

佐藤 紘

そうなんですか?

宮代 奈々子

うん。
一度、羽鳥がきてるしね。

佐藤 紘

羽鳥さんが…?

宮代 奈々子

アイツ意味わかんない。
イカとタコとひじき…
ジューサーにかけて持ってたのよ。

佐藤 紘

飲めるか!!!

佐藤 紘

そういえば、そんな感じの独り言してたな…本当に作るなんて…大丈夫かあの人。

宮代 奈々子

でしょ。
なんでも田畑用らしいけど。

佐藤 紘

…そんなことしたら田畑さんが…!

宮代 奈々子

さぁ?
アイツもおかしいから…。
飲んでも大丈夫なんじゃないの?

佐藤 紘

…………そうですね。

佐藤 紘

あ、それであの…
聞きたいことがあったんです。

宮代 奈々子

ん?

佐藤 紘

えっと…羽鳥さんが来たときから居たってことは…その時から今までここに?

宮代 奈々子

………そうよ。

佐藤 紘

あ、よかった。

佐藤 紘

その間に、只野さん来ました?

宮代 奈々子

……只野…?

佐藤 紘

ご存知ないでしょうか…。

宮代 奈々子

あぁ、いや…わかった。
あの腹黒そうなモノクルだ。

佐藤 紘

腹黒そうなモノクルって…。

宮代 奈々子

来るには来たわ。
なんだか水が欲しかったみたい。

佐藤 紘

じゃあ…本当のことだったんだ。

宮代 奈々子

あぁ、でもね。
そんときくらいかな?

宮代 奈々子

包丁が一本なくなってるの。

佐藤 紘

え…。

宮代 奈々子

……私、作業中で見てなかったけど…もしかしたらソイツ一本持ってたのかもしれないのよ。

佐藤 紘

そんな…。

佐藤 紘

結局…包丁は…ここから来たもの…なんだ。

佐藤 紘

その時に刃物がなくなったのなら…日向さんは自殺が出来ない。

佐藤 紘

だとしたら…まるで只野さんが…。

宮代 奈々子

………何かあったのね。

佐藤 紘

はい。

宮代 奈々子

ま、いいわ。
解決したら聞かせて。

佐藤 紘

はい。

佐藤 紘

それじゃあ僕…
食堂に行って来ますね。

宮代 奈々子

うん。
いってらっしゃい。


























佐藤 紘

ふー…あれじゃ…まるで只野さんが殺したか、包丁を渡したって感じだけど…どうやって確かめようかな。



今の状態じゃ判断しがたいな、なんて結論に押されてお目当ての西園寺さんを探して、周囲を見渡す。


西園寺さんは常に騒がしい人なので、だいたい位置は把握しやすい。

だが、近くには意外な人物が立っていた。

佐倉 百恵

ふふ、そうなの。

西園寺 詩乃

いいなぁ。
私も誰かを好きになってみたい。

佐藤 紘

てっきり…只野さんと一緒にいるとばかり思ってたけど…。

佐藤 紘

それになんだか…思った以上に明るいなぁ…。

田畑 結城

ん?何が明るいって?

田畑 結城

まさか俺の髪が…後退してるって!?

佐藤 紘

うわ、いつの間に背後に。

佐藤 紘

いや、言ってませんし
田畑さんのことじゃないです。

田畑 結城

気を使ってくれるのか…
君は実に優しいやつだ。

佐藤 紘

自意識過剰か!

佐藤 紘

あー…ところで…
ちょっと…事情が…。

佐藤 紘

そういえば、この人…たぶん日向さんのこと知らないよね。

田畑 結城

ん?

佐藤 紘

あとで…書庫に行ってもらえますか?
羽鳥さんが…今一人でいるんです。

佐藤 紘

んー…さすがに佐倉さんのこともあったし…見張りって意味なのは…伝わるかな?

佐藤 紘

佐倉さん、あっちで楽しそうに雑談してるけど。

田畑 結城

わかった、粗品を持っていこう。

佐藤 紘

家に遊びに行く感覚か!

田畑 結城

ふっふっふ…
弘継め…お前は書庫にいる…
ならば粗品をやろう…ふふふ。

佐藤 紘

何持ってく気だよ…。

田畑 結城

気になるか?気になるか?

佐藤 紘

いえ、なんか…どうでもいいです。

田畑 結城

えええ、マジ?

佐藤 紘

マジです。
早く行ってください。

田畑 結城

むー…。

佐藤 紘

いや、可愛くないですよ。

田畑 結城

それじゃ、行って来よう。

田畑 結城

さらば!!!

佐藤 紘

イラッ



そう言って厨房にまっしぐらだ。
本気で粗品を持って行く気なのだろう。

どう考えても、ふざけていい状態ではないと思うのだが、イカタコひじきのミックスジュースを作る羽鳥さんといいネジが足りないように思える。

佐藤 紘

僕も人のこと言えないか。

佐藤 紘

……だいぶ変なことで時間食っちゃったけど…西園寺さん達に声…かけてみようかな。

佐藤 紘

西園寺さん、佐倉さん。

佐倉 百恵

あ、佐藤君。

西園寺 詩乃

およ?

佐藤 紘

話に横槍入れてすみません。

佐倉 百恵

どうかしたの?

西園寺 詩乃

あのね、佐藤君。
今ね!ももちゃんから…
彼氏の話を聞いてたのよ!

佐藤 紘

え、あ…はい?

佐藤 紘

まさか日向さんのこと…
言っちゃったり…とか…。

西園寺 詩乃

あ、ごめん。
あのね…ももちゃん…

西園寺 詩乃

只野くんと付き合ってるんだって!

佐藤 紘

え………?

佐倉 百恵

そんな大きな声で言わないでよ…もう。

佐藤 紘

ん…と…え…?
付き合ってるんですか?

佐倉 百恵

えへへ…。
ついさっき…恋人になりました!

佐藤 紘

え……えぇぇぇ…。

西園寺 詩乃

いいわよね。
私も恋したいわ。

西園寺 詩乃

佐藤君は彼女いるの?

佐藤 紘

え、いや、あの…
いませんけど………。

佐藤 紘

いや、そうじゃなくてですね。

佐藤 紘

あー…佐倉さんの前じゃ言いにくいな。

佐藤 紘

あの…お菓子の薬って…取り返しました?

佐藤 紘

こういうときに限って、この言い方が使えるとは…。

西園寺 詩乃

えーとね…はい、コレ。

佐藤 紘

あれ…お菓子の薬って書いてある。

佐藤 紘

いや、これ別もんだろ!

西園寺 詩乃

え?お菓子の薬って書いてるよ?

佐藤 紘

いや、だからですよ。

西園寺 詩乃

んー?

佐藤 紘

ダメだ、わかってない。

佐藤 紘

まぁいいです。

佐藤 紘

なんかもう、この人達って聞けば聞くほどわけわかんないな。なんでいきなり付き合ってんの…この人は冗談じゃなくて、本気でお菓子の薬だと思ってるわけ…。

佐藤 紘

あれ、結局僕…なにもわかってなくない!?

佐藤 紘

はぁ…とりあえず…
ありがとうございました。

佐藤 紘

あの…それと…
佐倉さんはなんで只野さんと?

佐倉 百恵

さっきね、告白されたの。

佐藤 紘

はい?

佐倉 百恵

ずっと前から好きで居てくれたんだって…。

佐藤 紘

そ…そうですか。

佐倉 百恵

いっつも…相談に乗ってくれたのは…そういうことだったのね。

佐藤 紘

ん…いっつも?

佐倉 百恵

そう。日向くんが冷たいときに、どうやったら振り向いてくれるかなーって。

佐藤 紘

…………。

佐藤 紘

そう…ですか……………。

西園寺 詩乃

????

佐藤 紘

あ、僕…
そろそろ失礼します。

佐藤 紘

お話し中…ありがとうございました。









一度、羽鳥さんの元へ向かおうかな…。







それにしても…聞き出せた情報だと…只野さんの告白で、只野さんと佐倉さんが付き合い始めたのか…。

ずっと前から好きで、それで佐倉さんの相談にのってたみたいな事を言ってたけど…。

あれ?佐倉さんが薬を飲んだ理由って…日向さんの気を引きたかったって言ってたけど…




只野さんが……あの仮死薬を勧めたんだろうか。


宮代さんの話だと包丁を持って行ったのは只野さんで…。



………全部…
只野さんの計画で思惑通り…?






















15話 恋心・愛情・狂愛2

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