1日だけ一緒にいてほしい
ユウの話を終えた私はアオイの願いを叶えるため
出会いの森の真ん中で並んで座る

嘲笑っていた森はいつの間にか静かになり
いつもの平穏な森になっていた

私はただ座っているだけで
アオイは何も言わず本を読んでいた

そのまま時間は過ぎていくけど
横目で見た彼の本のタイトルに
思わず目が釘付けになった

御堂ミカゲ

それって……

アオイ

んっ?

御堂ミカゲ

読んだことある。ロボットと女の子が恋をする話だよね

知ってる
ユウがよく読んでた本だから
1度見せてもらったこともある

呟いた私の方を向いて
アオイは微笑みかけた

アオイ

君は、どう思った?

御堂ミカゲ

どうって……非現実だから、あまり感情移入出来なかった

正直、この手の話は苦手だった
あまりにも現実味が無さ過ぎて
こんな恋愛、実際にあるはずがない
そう思ってしまうと
どうしても読み進める気になれなかった

そう言った後、アオイの顔をちらりと見る
彼の顔から、さっきまでの笑顔が消えた
とても悲し気で、少し震えている

御堂ミカゲ

どうしたの……?

アオイ

ミカゲちゃん。もしこの本の話が今、実際起こってるって聞いたら驚く?

その質問は、答えを返さずとも見えていた
質問そのものが、アオイの言いたいこと
だけどそれって……

アオイ

……僕が最後のお願いって言った理由、これで少しわかって欲しいなって思って……

御堂ミカゲ

それって、まるで貴方がロボットだって言っているみたいじゃない!!嘘吐くならもっとマシな嘘吐きなさいよ!!

私は、私のモノとは思えない声で叫んでいた
捨てたはずの感情が
心の底から溢れ出してくるかのような感覚

そこで私は、ようやく気付いたんだ
私は、彼を好きになっていた
だけどそれはアオイとしてじゃない
彼を死んだユウに重ね合わせて
穴の埋め合わせをするために
代わりの存在としてアオイを見ていた

違うのに
彼にはアオイという存在なのに
私は、馬鹿だ……

アオイ

ミカゲちゃんはいいよね。人間には本物の心があるから、そうやって涙が流せる

言われるまで私は
頬に伝って落ちていく雫
涙を流している事に気付かなかった

羨ましそうに見つめるアオイ
声が震えていたって
どれだけ目元を細めたって
その瞳から涙が落ちることは無かった

アオイ

僕はロボットだ。ある想いを託された、心のあるロボット

御堂ミカゲ

心のある、ロボット……

アオイ

長くなるけど聞いてもらえるかな

アオイはそう言うと
木々の隙間から見える青空を眺めた

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