彼女は、自分の正体を隠して俺の側にいた。
サポート役だと言っていた。
正体がばれそうになると、セイさんによって隔離されていた。
そうだ、正体がばれてしまうのはこの物語の筋道に反していたからだ。
セイさんは、サンザシの正体を無理に知ろうとすると、サンザシが消えてしまうと言っていた。
でも、結局、サンザシは消えてしまった。
どこで? 最後の物語で。
どうして? ……そうだ、消えたんじゃない。
彼女は、自分の正体を隠して俺の側にいた。
サポート役だと言っていた。
正体がばれそうになると、セイさんによって隔離されていた。
そうだ、正体がばれてしまうのはこの物語の筋道に反していたからだ。
セイさんは、サンザシの正体を無理に知ろうとすると、サンザシが消えてしまうと言っていた。
でも、結局、サンザシは消えてしまった。
どこで? 最後の物語で。
どうして? ……そうだ、消えたんじゃない。
療養中だって……セイさんは、そう言っていました
思い出した。サンザシは、療養中。そのまま、彼女に会っていない。
だとしたら。
セイさん、サンザシは、サンザシはまだ!
うん、そうだね、いるね、いるいる
会わせてください! サンザシはどこに!?
いいの? 今、会うの? 物語を当てたあとの方がいいような気がするけど
どうして!
覚悟ができるから
ーーどういう意味だ。
考えて、考えて、考えて。
……あっ
俺は呟いた。
わかった
わかってしまった。
覚悟、と言われて、想像したのは悲しい結末だ。
例えば死別。それでなくても、別れ。
悲しい物語の中に、正体を秘密にしているものは?
真っ先に浮かんだものは、人魚姫だ。
でも、それだけじゃ、と思う。彼女はサポーターだ。その、位置付けは?
そこで、はっと気がつく。
俺は、最初に、彼女のことを、鳥のようだって……
脳内に浮かぶ、白い鳥。
自分の正体を隠し、俺のために力をつくし、そして、最後に消えてしまう。
正体が、ばれたから……
そう、その物語だよ
言ったら、彼女には会えませんか
まさか。最後にほら、その物語でも、お別れ、言うじゃない
正体がばれてしまっては、そばにいることはできません。
さようなら。
物語を言わないと、いけませんか
もちろん。今までと同じように、君が鍵を開けるように、物語を呼んであげないと、巻き添え食らった物語が消えちゃうよ。サンザシちゃんとも会えないよ。それは、だめでしょう
……サンザシ
さようなら。さようなら。
鶴の恩返し……でしょう
うん、正解
どうして、と思う。
どうして、なんです。おかしいじゃないですか。サンザシは、俺に恩を返してくれていたのですか
いったい、何をしただろう。
助けてもらったのは、俺だったのに……サンザシ、俺はいったい、君に何を……
それはまあ、本人に聞くんだよ
ぱちん、とセイさんが指を鳴らす。
すると、どこからともなく現れた。目の前で、ふわりと浮遊している。
会いたかった、彼女が、そこにいた。
サンザシ!