俺は、彼女を死から離した。

それが、君の罪

 彼女は、俺に応じた。

それが、彼女の罪

















 俺の世界はーー。
 魔王の物語の世界は、崩壊した。










物語の神様の僕、神様達から大ブーイング。


何してるんだ! 

登場人物の管理ぐらいちゃんとしろ!

僕は、肩身が狭い思いをしながら、ひとまず登場人物達を救いだした。

登場人物がいなくなると、物語も形をなさなくなるからね。

そして、他の世界の神様に頼んで、いろんな世界でその登場人物の魂を預かってもらうことになった

魔王の物語を、つまり世界を修復した暁には、その魂を持ってくる必要がある

魂だけの保存は不可能だ。魂だけになると、行くべき場所がある。君も行っただろ

だから、新しい命として、新しい肉体も作ってもらった上で、預かってもらっていた

ところが、とんでもないことがおきた。

君の魔力は他の物語にまで飛び火した

桃太郎、シンデレラ、親指姫、おおかみと七匹の子やぎ、うさぎと亀、かぐや姫……物語にも、魂みたいなものがあってね。

本が肉体なんだけどさ。

ひとつの物語が壊れた余波で、物語の枠からとびでて、あろうことか別の世界に染み込んじゃったんだよ

しかもその世界は、僕が登場人物を預かってもらった世界だった。偶然ではないだろう、君の魔力に引っ張られたんだ

物語が、魔王の物語の登場人物を巻き込んで、ひとつの世界の運命になっちゃったんだ……分かる? 


物語通りに展開させないと、さっきの物語も、魔王の物語の登場人物も、滅んじゃう状況だったわけ

さすがの僕も、焦ったよね。でも、僕は魔王の物語の修復で手一杯だったのさ

さあ困った、他の物語を筋道通りに導く人が、必要だ

そこで、君とサンザシに白羽の矢を立てたのさ

 目を開けると、そこはいつもの部屋だった。
 俺は、ソファに座っている。


 隣には、ミドリがいた。
 目の前で、セイさんが笑っている。

神様達は怒っていた。

君の好き勝手な行動にも、君の手をとってしまったサンザシにも

……そうでしょうね

お、やっと答えられるようになったかい

ええ……体はまだ、動きませんが

 体は、ソファに沈んでしまいそうなほどに重かった。吐き気も、めまいもする。

僕の話したこと、理解した?

ええ。体は重いですけど、脳みそはクリアなんです

そっか。では、最後まで聞いてもらおうかな。

そう……神様達は、君らを消そうとした。
僕は反発した。

いや、感謝してほしいわけじゃないんだよ。
ただ、そうだったってだけ

僕は提案した。

彼らは学ぶ必要がある。

世界中にたくさんの人がいることを、それを滅ぼしてはいけないことを、生と死を……。

コリウスは、彼女のことを忘れ、魔力も封印した上で。

サンザシは、彼のことを全て覚えて、それを言えない身のままで

それが何よりの、贖罪にはならないだろうか。罪滅ぼしにはならないだろうか。

頼む、頼む! 彼らを生かせたいんだ、わがままを聞いてくれー! 

……勝手にしろとあきれられ、僕は君らを無事、物語修復のメンバーに加えることに成功した

8 記憶の深淵 君との大罪(3)

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