おーい、来てやったぞ! とっとと出てきやがれ!
親父に「ドラゴニック・オーブ」とやらを渡され、体内に受け入れた瞬間、あたいは気を失った。
そして、目を覚ますと辺りは灼熱の洞窟。
親父が言っていた「紅」というレッド・ドラゴンの住処なのだろう。
勿体ぶらずに出てこいよ~
誰じゃ……ワシを起こすのは……
お前が紅か?
いかにも……お主は竜王の娘じゃな?
前置きはいいからさ、とっとと「力」をくれよ
くくく……無礼なヤツじゃ……
頼み方というものがあるじゃろうて
うっせーよ! 早く「力」を寄越しやがれ!
……言葉がなってないのぅ
そんな輩に「力」はやれんわ!
へー、レッド・ドラゴンともあろう者が、無礼なだけで臍を曲げるなんて……
器がちっせぇなー!
……
ちっせぇ! ちっせぇ! はははは!
……もん
はい?
ワシの器、小さくないもん……
もっとハッキリ言って貰わないと聞こえねぇな
小さくないもん!
こいつが紅か……。
強面の竜の顔でもした大男が出て来るかと思いきや、華奢でちっちゃな女の子じゃないか。
しかも律儀に言い返してくるし……。
ぷるぷる怒りで震えているし……。
なんだか可愛い。
いやいや、見た目に騙されてはいけない……!
じゃ、器の大きいところを見せてくれよ!
問答無用で「力」をあたいにくれるとかさ!
そ、それは……さすがに……
何だよ……器、ちっちぇじゃん……
ご、ごめんなさい……
シュンとうなだれる紅。
……若干、責めているようで気が引けてきた。
で、どうしたら力をくれるんだ?
む……
ワシと勝負して勝ったなら、喜んで力を貸してやるぞ!
一転、笑顔になる紅。
わかった! で、何で勝負するんだ?
お主の好きな勝負方法で良い
へー、太っ腹だな
だから言っておろうが! ワシの器は小さくはないと!
こいつ……割とお調子者なのかもしれない。
んー
じっくり考えるが良いぞ
さすがのあたいでも、おそらく力勝負では勝ち目はないだろう。
……かと言って、頭を使った勝負は全く自信がない。
つけ入る隙があるとすれば、紅のこの性格か……?
少し、探りを入れてみよう……。
なあ、質問しても良いか?
んー? 答えられる範囲なら答えてやるぞ?
お前の「男性経験の人数」を教えてくれ!
……
何人とヤッたか、教えてくれって言ってんだよ
な、な、な……
何てはしたない!
どうしてだよ……よくあるガールズトークだろ?
む? そうなのか……?
……
……
わ、ワシは結婚しとらんから、そんな経験、あ、あるわけないだろうが……
俯いて、赤くなる紅。
……こいつ、ただのバカ正直だ!
ふーん、さんきゅ!
じゃ、男性経験の人数で勝負しようぜ!
は、は、は……
謀ったな!!
ん~? 答えられる範囲なら答えるって言ったのはお前だぜ?
た、確かにそうじゃが……
で、勝負するのかしないのか、どっちだ?
ええぃ、負け! ワシの負けじゃ!
やったぜ!
ああ、憎たらしいのぅ……
ちなみにあたいも経験はねーけどな!
だ、だ、だ……
騙したな!!!
人聞きわりーな! 騙してねーよ!
お前が勝手に敗北宣言したんだろ?
……ぅ
二の句が告げられず、涙目になる紅。
ま、これから仲良くやろうや! 紅ちゃんよ~!
な、な、な……
馴れ馴れしく呼ぶでない!
へいへい、紅様ぁ!
ああ、ほんに憎たらしいのぅ……
こうして、無事にレッド・ドラゴンの力を手に入れたのだった……。
-次回を待てっ!-