裏死魔太郎

イチ、ニノ、サン、ハイ!!



松原遠く消ゆるところ

白帆(しらほ)の影は浮かぶ

干網(ほしあみ)浜に高くして

かもめは低く波に飛ぶ



見よ昼の海


見よ昼の海



島山闇に著(しる)きあたり

漁火(いさりび)光り淡し

寄る波岸に緩くして

浦風軽(かろ)く沙(いさご)吹く


見よ夜の海


見よ夜の海




カメール松本

歌って、本当に良いものですね!



いつしか歌の概念は海中を席巻し、

海の者たちは音楽に合わせて腰を振る事に加えて、

歌をうたう昂揚感を覚えました。




裏死魔はまるで音楽の先生のように

ありとあらゆる歌を

海の者たちと体感年数で3年くらい
嗜み続けました。




…ちょいちょい、活きの良い寿司をつまみながら。

そしてとうとう裏死魔は乙姫リナへの愛の時限爆弾を暴発させたのです。

リナ

あの、裏死魔様…いまのはどういう?

裏死魔太郎

え、いやその…キスのつもりだったんだけど、緊張して前歯同士がぶつかっただけで終わっちゃったっていうか…
痛くなかった?

リナ

あはは、裏死魔様にもそういう習性があるんですね!?
私も歌ってる時によく群れでじゃれてこられるんですよ~。体中くすぐったくてもう!

裏死魔太郎

うん、それはさかなの鱚(きす)かな。
たしかに彼らもリナさんの事が好きなんだろうけど、僕のはそういうんじゃなくってもっとこう…

裏死魔太郎

恋なんだ。君にもっと深く触りたいんだよ。

リナ

それはその…他の海の者たちのように裏死魔様は私と交尾したいという事なのでしょうか?

裏死魔太郎

え、あ、うん。生物学的に言うとそういう事なんだけれど。もっとこうシチュエーションがあるというか、情熱的な感情がこみ上げてきたりなんかして…

リナ

難しいのですね。でも正直、私の体は他の海の者たちとは違い、どちらかというと裏死魔様人間たちに近いので、肉体的な互換性はあるのかもしれません。
裏死魔様がお相手なら










私の事、好きにしてもいいですよ


裏死魔は北斎の浮世絵を頭に浮かべながらリナと交わりました。


それから精根尽きるまで彼女を抱き、
好きな音楽を歌いまくり、
腹いっぱい飯を食べ、
まるで自分の体の一部であるかのように
乙姫リナと昼とも夜ともつかない
ハイライフを延々と過ごしました。



一見、世界一幸せそうな裏死魔でしたが、
ある事に気づいてしまったのです。



裏死魔太郎

リナちゃん。君は僕の願望に合わせているだけであって、僕を愛しているわけではないんだよね?

リナ

申し訳ありません、裏死魔様?
言っていることが私には難しくてちょっと…
今の暮らしの何が不満なのでしょうか?

裏死魔太郎

いや、不満はないよ?
ただ、これ以上の感動は得られないと思ってる。少なくともこのディープパープルで同じ暮らしを繰り返している限りは。

リナ

つまり、私はどうすればいいのでしょうか?

裏死魔太郎

僕と一緒にこの竜宮城を出て、地上で暮らさないか?
リナちゃんとならどんな苦しい事も耐えられる気がする。
それにキミと故郷の星空を眺めながら歌いたいんだ。

リナ

でも、私ここでしか暮らしたことが無いから。地上での生活なんて考えられなくて。

裏死魔太郎

じゃあこのままここで魚たちの〇ックスマシーンで一生を終えても後悔しないの?

リナ

そ、それはちょっと…

裏死魔太郎

でしょ?
リナちゃん、二人で新しい世界に行こう?
ここでは出来なかったけど環境が変われば僕らの子供だって出来るかもしれない。

リナ

子供…たしかに裏死魔様とこれだけ交尾しても私は産卵しませんよね。なぜでしょう?回数でいったら鱚の数を上回っていてもおかしくないのですけどねえ?

裏死魔太郎

ごめん、このまま話を続けてもキミの表現はラブストーリー的にいささか問題だ。
黙って僕に付いてきてくれないかい?


そんなこんなで裏死魔太郎は乙姫リナを口説き落とし、

カメール松本にディープパープル竜宮城を去る手伝いをしてもらおうと、彼の元へと向かいました。

続く

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