裏死魔太郎はカメール松本にリナと共にディープパープルを去る相談をしていました。

カメール松本

なりませぬ!そんな事断じて許しませぬ!!解せぬ!

裏死魔太郎

まあ、カメ本のポジション上絶対そう言っちゃうんだけどさ、そこを何とか。

カメール松本

大体、この暮らしのどこが不満なのですか?
毎日最高の寿司を食べ、好きな歌をうたい、リナ様とその…ちょめちょめして

裏死魔太郎

(ちょめちょめ?)
うーん、まあ一言で言い表しますと















裏ちゃん

この暮らしに

飽きちゃった。




カメール松本

え、ただのわがままな人?

裏死魔太郎

ところでこっちに来る時からずっと気になってたんだけど、あの祭壇にある宝箱的なやつは何?

カメール松本

え?あれは玉手箱といいまして。
このディープパープルに代々伝わる、その…

裏死魔太郎

魂が入ってるんだろ?
ここに迷い込んだ人間の。つまり僕とリナちゃんだ。

カメール松本

・・・何をおっしゃてるやら私にはさっぱり

裏死魔太郎

正直に話してくれよ。
もう見ちゃったんだ。
カメールさんがその甲羅のダッシュボードに入れて運んで来てくれた、本当は浮世で死んでたはず僕と彼女の火の玉がか細く揺れてた。

カメール松本

いつから気づいていたのですか?

裏死魔太郎

すくなく見積もっても少年の僕は体感的にここに3年はいる。
その間、こんなに栄養価が高くて適度な運動をしているのに全く身体的成長はおろか、体重の増減すら感じられない。
そもそも人間の僕が何の苦もなく君たち海の者たちと共存していること自体が違和感。

カメール松本

ご明察でございます。
玉手箱とは“魂”を“待ってく”れる箱なのです。死にゆくお二人を現世に留めるにはこの中に保管するしか手段がありませんでした。

ここにお連れした時から聡明な方だとは思っていましたが…この事をリナ様には?

裏死魔太郎

言えないよ。意味わかんないだろうし残酷過ぎるだろ?
僕たち実はお化けなんだってさ!とか。

どうやらこの体は死ぬ寸前の記憶はいじれるみたいだけど、身体の状態までは修復できないみたいだね。

彼女服を脱ぐと“悪戯の跡”が凄いんだ。
きっと浮世で悪魔みたいな変態共に無残な目に遭わされて…

だからカメ本はリナちゃんに竜宮城の乙姫様っていうキャラ設定に変更した。

カメール松本

浜辺で年端もゆかない彼女があのまま海の藻屑になって死んでいくのはどうしても耐えられなかったのです!
私のエゴとは判っていたのですが、彼女を生まれ変わらせたかった。

裏死魔太郎

やっぱり。じゃあ、きっとあのスライキッズたちにリンチされて死にかけてたのは君じゃなく僕だったんだろう?

カメール松本

申し訳ありませんでした。かえってあなたたちにとってここはただのまやかし、魂の牢獄に過ぎなかったのかもしれません。

裏死魔太郎

いや、いいんだ。
クソみたいな走馬灯をみせられるよりはよっぽどましだったよ。
少なくとも僕はかわいい女の子と恋を出来たわけだし、最高のボーナストラックだったよ。




素敵な幻をありがとう


カメール松本

怖くないのですか!?
だって、あなたは地上に戻った瞬間に今度こそ天に召されてしまうのですよ?
たとえ仮初だとしてもここにいれば永遠の命が手に入るのですよ!?

裏死魔太郎

うん、ぶっちゃけ死ぬほど怖い。洒落になんないくらい。

でもそれ以上にこの楽園で昼も夜も、始まりも終わりもワケわかんなくなっちゃう自分の方が怖いんだ。
それならいっぺん、ちゃんと死んで生まれ変わった方がましかな。

カメール松本

裏死魔さま…

裏死魔太郎

そんでいじめられないように、他人を恨まなくなれるよう強くなるよ。

ただカメ本に話したことでリナちゃんを連れていく自信を完全に失った裏ちゃんなのでした。





私も同じ気持ちです!
裏死魔さま!!

リナ

ごめんなさい、全部聞いてしまいました。

カメール松本

リナ様!?

裏死魔太郎

リナちゃん、その…何かごめん。

リナ

いいえ、裏死魔さまのおかげで私が何者かわかりました。
覚悟は出来てます。
カメール、私も人間としての命をまっとうしたいです。

カメール松本

2人ともどうしても浮世に、地上に戻られるというのですね。








はい

はい






こうして、裏死魔太郎と乙姫リナはタートル松本の背中に乗ってもう一度浮世へと戻っていく事になりました。













裏死魔太郎

ありがとう、カメ本。
本当に楽しかった。

カメール松本

私もです、裏死魔さま。
あなたが教えて下さった歌の数々はずっと海の底で語り継がれていく事でしょう。ですが…

リナ

カメール…



涙が止まらないカメール松本の背中を強く叩いてから裏死魔太郎はこう言いました。

裏死魔太郎

じゃあさ、今度は一緒に人間に生まれ変わってよ?
そして僕ら友達になって一緒にまた歌おうぜ。

カメール松本

はい!必ずやお供しましょう!

裏死魔太郎

リナちゃんはとにかく女の子として幸せに生きて。
同じ時代にまた出会えたら元気な笑顔を見せてね。

リナ

はい!


三人は海の中で永遠の約束を交わしました。



そして一行は裏死魔とカメールが出会った海岸まで辿り着きました。

リナ

キレイ。これが地上の夜なのですね!

裏死魔太郎

ラッキー。
一番見たかった夜景の時に戻って来れたよ。
これをリナちゃんに見せたかったんだ。

リナ

はい、

裏死魔太郎

カメ本、開けて。

カメール松本

かしこまりました!

裏死魔太郎

最後は歌ってお別れしよう。じゃあ、みんな元気いっぱいでヨロシク!

リナ

はい!

カメール松本

はい、力の限り!!!
我は海の子 白波の~…



カメール松本は瞼を閉じながら裏死魔がくれた歌すべてを声が枯れるまで歌い続けました。



歌い終わる頃には裏死魔とリナは玉手箱の煙に連れられて、
やわらかな夏の夜風へと姿を変えていました。

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