おじじ様の連絡を受け、小兎がやってきた
おじじ様の連絡を受け、小兎がやってきた
何があったの!?
よく来てくれた、小兎
おじじ様の凛々しい顔つきと、床に臥せているおばば様
明らかにこの家の様子がおかしい
しかし、その凛々しくも神妙な顔つきのおじじ様に、あれやこれやと質問攻めをしたところで的を射た返答は帰ってこない
何があったのか、答えてよ!!
小兎や
わしは悔しい。悔しくてならないのじゃ
あの狸がおばばをこんな目にさせた…わしが仕事に出かけていなければ、こんなことには…
だ か ら 何 が あ っ た の ! ?
わしにも分からないんじゃよ!
しかし、今のわしはおばばの近くにいることしかできない
どうか小兎よ、あの狸を懲らしめてくれないか
袖を濡らしつつも、小兎に話すおじじ様
その姿はとても弱弱しく、直視できるものではなかった
仕方ないわね
私があのバカ狸を懲らしめてあげるわ
…でも勘違いしないで、私はあの狸に昼の借りを返すだけだから
声高らかに宣言すると、早速山の方へ向かう小兎
そう、これは仕方なく。昼の借りを返すだけだ。言ってしまえば名誉挽回のチャンス
もんもんと自分のこれから起こす行動の理由づけを考えながら、一歩一歩踏みしめていく
いやー今日もたのしかったなー
偶には、ハラハラドキドキみたいなのも悪くないな
なに能天気なこと言ってんのよ、バカ狸
む…誰がバカ狸だって
あんた以外いないでしょ!!
わざわざそんなことを言いにここまで来たの?
御足労様です、アホ兎様
誰がアホ兎よ!!
私は、あんたを成敗しに来たんだから
成敗って…時代劇の見すぎなんじゃないの
あ、でもあの限界集落なら、時代劇くらいしか見るの無いか
うるっさいわね
とにかく、おばば様の敵を取りに来たんだから!!
へー、敵って?
そういうと狸原は小兎の手首をつかんだ
ちょっと、気安く触らないでよ
嫌ならほどいてみなよ?
敵を取りに来たんでしょ?それとも、これくらいも反撃できないの?
体中の力を振り絞ったところで狸原の手がほどかれることはなかった
悪戯っぽく狸原は、小兎の手首を捉えている手を自分の体にに引き寄せた
ちょうど、狸原と小兎の鼻先が触れるくらいの至近距離である
それとも何?誘われてるの?
ば…ばっかじゃないの!!
そんなことある訳無いでしょ!!人の話ちゃんと聞いてた?
あ。もしかして、おばば様と同じようにされたかったとか?
小兎の脳裏に過るのは、床に臥せていたおばば様のいたいけな姿であった
もしかして、私もあんな風になっちゃうの?
いや…いや…
大丈夫だって
最初は痛いかもだけど、安心してって
そう言って小兎に微笑みかけると、狸原は小兎の首筋をめがけて手を伸ばした
や…やだ
喉から出た声はあまりに弱弱しく、そして小さな声だった
依然として、狸原が自分の首筋に手をかけている
しかし、あの至近距離で目を合わせ続けることは小兎にはできなかった
強く閉じられた瞳から、狸原の行動を観察することは不可能。足音的に、狸原のいる場所が少し変わったのでろう
ああ、もう無理
自分の最後を悟ったように、ギュっと瞼を再度閉じる
そんなに力まなくったって大丈夫だってば
その言葉さえ、今の小兎には届かなかった