狸原

あれ…いつの間にか寝てたんだろ?

目を覚ますと、先ほどとは違う場所にいた

周りを見渡しても誰一人いない。暗い部屋の中だ

夢かまどろみのなかか。どうせそんなところだろう。ならもう一度寝てもいいのではないだろうか?

起きたということさえ夢…そう思って背伸びをしようとしたところで、自分の体が縛られていることに気づく

狸原

寝てる間にやられたか…そんな趣味無いんだけどな

狸原

それにしても…なんか熱い

部屋に立ち込める熱気、自然と額に汗がにじむ

身動きの取れない体を左右に揺らしてみるが一向にロープがゆるむ気配はない

狸原

くそ
ここから出ないとなんかヤバそう

手あたり次第、物音が立つようにとゴロゴロ転がる

そうすれば必ず奴が来る。そこからが勝負だと自分に言い聞かせるのである

おばば

おや、もう起きちまったのかい?

狸原

世界一、最悪な目覚めなんですけど!!

おばば

それはよかった
お前さんの最後の目覚めが最悪なもので、このおばばはご満悦じゃ

狸原

最後の目覚め?

おばば

左様
お前さんには幾度となく悪戯をされたからのう

狸原

それはじじいがトロイからでしょ
そんなことでいちいち殺されていたら、命足りないから

おばば

まあ、サクッとお前さんを退治できたら、じじばばハッピーチャンスなんじゃよ!

狸原

そうやって命…軽んじるのいくない!!

今世紀最大の心からの叫びをおばば様はニタニタと笑うだけであった

狸原

それにしてもおばば様?

おばば

なんだい?
命乞いでもするのかい?

狸原

まさか
最近おばば様、お肌のハリが無いからお久しいのかなって?

おばば

何をほざくと思ったら、そんなことかい?

狸原

おじじ様も現役を引退されてる頃合いかなって思って

そう言うと狸原はおばば様との間合いを詰める

狸原

俺なら、おばば様を満足させることができるけど。どう?

そっとおばば様に耳打ちをする

おばば様と言っても、昔は儚き乙女

現役を引退されたと言われても仕方ないおじじ様より、若い青年に惹かれるのは仕方がないことだった

おばば

そこまで自信があるのじゃな
よろしい、このおばばを満足させてみるがいい

狸原

ええ、喜んで

それは流れるように

応じるまま、受け入れるまま

おじじ

な…なんじゃこれは

家に帰ると、捕まえられていたはずの狸原がいない

おじじ

おい、おばば
何があったんじゃ?

床に倒れているおばば様を揺さぶり、声を掛けるが反応はない

おじじ

お願いじゃ
おばばよ、目を開けてくれ!!
何があったんじゃ…いや、よい。どうせあの狸じゃろ
おばばをこんな目に合わせたのは、あいつしかいないのは分かっておる

どうにかしておばばの敵を討ってみせるからな!!!このおじじを怒らせたことを後悔させてやるからな

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