それから僕は浦島太郎として当たり障り無いように生活をしながらも色々な人に『鬼ヶ島を知らないか?』と聞き込みをしていった。
けれど誰も鬼ヶ島の事は知らず。
何も掴めないまま1週間が過ぎた
それから僕は浦島太郎として当たり障り無いように生活をしながらも色々な人に『鬼ヶ島を知らないか?』と聞き込みをしていった。
けれど誰も鬼ヶ島の事は知らず。
何も掴めないまま1週間が過ぎた
本当に鬼ヶ島は見つかるのだろうか……
日課の釣りを終えて浜辺を歩いていると、そんな不安が頭をよぎる。
いや、僕が諦めてどうするんだ。マナだって辛い思いをしていんるだ!絶対に会いにいく…………なんだあれ?
自分自身と葛藤していると、浜辺の真ん中辺りで騒がしい声が聞こえる、目を凝らしてよく見ると、子供達が何かをいじって遊んでるようだ
あれは…………亀か!
亀と分かって直ぐに子供達がいるところに駆ける寄る
えへへっ、亀苛めるって面白いな
なぁ、次は土の中に埋めてみねぇ?
あははっ、やろう、やろう!
君たち!
僕は少し大きめの声で叫んだ
子供達も大人の声に驚いたのか、瞬時に振り返り僕を見る
あんた誰だよ
僕は浦島太郎。ってそんなことより亀をつついて遊ぶなんて、可哀想じゃないか
お兄さんに文句言われる筋合いはないよ!亀で遊ぶの楽しいんだもん!
そうだ、そうだ!
全く反省の色が見えない子供達に僕はある提案をすることにした
………………分かった。それじゃ亀と引き換えに僕が釣ってきた魚を3匹あげよう。それでどうだ?
……分かった
よかった。今日は運よく3匹釣れたんだ。子供達もちょうど3人、
僕は腰にかけた袋をそのまま子供に渡した
『じゃあな』といって去っていく子供を尻目に、海岸に仰向けになってある亀を拾い上げる
もうこんなところに来たら駄目だぞ
カメは水に浮かべると直ぐに海の底に帰っていった
その日、僕は何も食べずに眠りについた
翌日、いつものように釣りをしていると突然、人間の大きさの亀が海から出てきた。
えぇ!?
その何処と無く昨日助けた亀に似ている亀が
浦島太郎さん、僕は昨日、あなたから助けられた亀です。お姫様があなたを竜宮城におつれしなさいというのでお迎えにまいりました。
前言撤回、昨日助けた時よりも数10倍大きくなった亀が喋った
別に鬼というものがいるのだから、人間の大きさの亀が喋っても不思議じゃない
ただ竜宮城は僕も初めて聞く名前だった
竜宮城って何?
竜宮城は海の底にある城です。そこの支配者でもある乙姫様が浦島さんの事をえらく気に入って、連れてくるように言われました。
支配者………
乙姫という名の通り、姫なのだろう。なら“主(あるじ)”で良い筈だ。なのに亀は乙姫様の事を“支配者”と言った。僕はそこに少しだけ違和感を覚えた。
分かった。それじゃ僕を竜宮城まで連れていってくれ
それを加味しても竜宮城への誘いは僕にとってまたとない機会だ
もしかしたら乙姫様は鬼ヶ島の事を知ってるかも!
そんな期待を抱きながら、浦島太郎はさっそく亀のこうらに乗ると、海の中に入っていった。
10分くらいしてだろうか、僕は目の前に見えた大きな建物に驚いた
まさか海底にこんなものがあるなんて!
さぁさぁ、浦島さん中にお入り下さい。
あぁ
亀に言われるがまま、竜宮城の中に入っていく
……凄い
乙姫様の部屋に辿り着いた僕は、そう呟いた
壁には綺麗な貝や、宝石が散りばめられているし、半分は海の中を見れるようになっている。
本当に凄いとしか言いようがない
うふふ、そんなに驚いてもらえるなんて嬉しいです。
周りの景色に圧倒させられていたのだろうか、いつの間にか目の前に人が立っていたのにようやく、気づく
あなたが乙姫様ですね?
そうです。私は竜宮城の主である、乙姫と申します。浦島太郎さん、この度は亀を助けて頂いて誠にありがとうございました。
いえいえ、僕は当然の事をしたまでであって、こちらこそこんな素晴らしい場所に連れてきて貰い、嬉しい限りです。
…………
………どうされました?
僕の目をずっと見つめる乙姫様に、全てを見透かされている感じを覚える
やはり
不適な笑みを浮かべる彼女の言葉に続けられた“それ”が全てを物語っていた
あなた鬼ですね、
浦島太郎さん