レン

あれ……ここは何処だ……

黒く、深い渦のようなものに呑み込まれる感じだ。辺りを見渡しても真っ暗で、何も見えない

レン

気味が悪い、気持ち悪い、気色悪い

今にも押し潰されそうなドス黒さに、僕は必死に出口を探す

ふと暗闇の中に見えた一筋の光、
僕は渦に逆らってその光を目指す
渦は激しく、鬼の力をもってしても徐々にしか進まない

レン

あと少し………………!

出た!そう思った瞬間に目の前が光で包まれる
瞼が開いたのを感じて、僕は夢から覚めたんだと実感する

うわっ、眩しい!

何も見えないくらいの眩しさ、とっさに手で光を遮る

えっ、動いてる………?

さっき、桃太郎に切られて動けない筈の体がいとも簡単に動く。

どうなってるんだ!?………早く状況の確認をしないと!

しばらくして目が馴れたのか辺りの景色に色が見えてくる

ここは………海岸?

そこは鬼の死体が無造作に倒れている鬼ヶ島ではなく、綺麗な海がどこまでも広がる海辺だった。

どういうこと………マナは?他の皆は?桃太郎は?

僕の頭は有り得ない状況に凄く困惑する。

あのあと海を流れてここに上陸した………とか?

いや、それはない。あんな致命傷をおったんだ、何処かに辿り着くまで生きているわけがない。それ以上に桃太郎に喰らった傷が全く無くなっている………ん?

自問自答を繰り返すと、いつの間にか自分の着ている服が違うのに気が付く。

ていうか体が大きくなってる?

自分の腕や体つきも大人びていた

何かがおかしい。取り敢えず、水面で自分の姿を確認しよう

誰だこれ!?

そこに写ったのは鬼のレンじゃなく、人間の青年だった

えっ?何で人間に?わけが分かんない!?

水面を見ても解決するどころか、更に困惑する。

もう……無理……どうしたんだ僕は……

浦島太郎

本当に夢としか考えられない

1度、目を瞑ろう、そしたら夢は覚める筈だ

だがそんなので覚める筈もなく、瞼を開けてもさっきと変わらない光景が広がっているだけで、僕は落胆する

…………いや、なんだあれ?

さっきは気付かなかったが、少し離れたところに袋と、木で作られた質素な釣竿があった。

誰か釣りでもしてるのか………っ!

釣竿を見た瞬間、いきなり脳が割れそうな程の痛みが襲う
その時、頭の中に無い筈の記憶が次々と、まるで最初から存在したように自然と入ってくる。まるで昔から知ってたみたいに

はぁ…はぁ……分かった

分かったというよりは、思い出したに近いな、今のは多分この体の持ち主の記憶だ。

浦島太郎

名前は浦島太郎、歳は19歳。家族はおらず、毎日魚を釣って生活している。性格は優しく、いたって良好
少し探っただけでも色々な情報が入ってくる

浦島太郎

……つまり僕は浦島太郎さんの体に精神が結び付いたって事?

凄く有り得ない話だが、それが一番現実味を帯びている
夢物語だが、何故こうなったかは分かった、どうして此処にいるかも、でも

浦島太郎

僕はこれからどうしていけばいいんだろう?

未来の事はさっぱり思い付かなかった
浦島太郎として生活していく?

浦島太郎

無理だ。僕自身が人間の生活についていけないだろう。追々、僕の存在が見破られるだろう

またも自問自答、頭を巡る多くの自問に全て否定し続ける

浦島太郎

閃いた

無い知恵を絞り出してようやく見つけた僕が出来ること

浦島太郎

だけどこれは本当に浦島さんの体でやって良いものなのか?浦島さんには浦島さんの生活があった筈なのに……

浦島太郎

僕はどうしたらいんだ……

マナ

分かった、待ってる。

色々考えていると、マナの最後の言葉が脳裏を過る

浦島太郎

………………そうだよね

この体は浦島さんの物で、この生活も浦島さんの生活だ。僕が勝手に奪っていいものじゃない。
……………それでも、待ってくれてる、僕が帰ってくるのをずっと待ってくれてる大好きな女の子がいるんだ。

浦島太郎

僕はマナに会いたい!

それから僕の鬼ヶ島探しの日々が始まった

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