30分に渡るカメール松本の説得の末、
裏死魔太郎は渋々ディープパープル(竜宮城)へと向かいました。


道中、
裏死魔はあまりにヒマだったので亀の背中の上で、
弾き語りを始めました。


海は広いな 大きいな

月がのぼるし 日が沈む


海は大波 青い波

ゆれてどこまで続くやら


海にお舟を浮かばして

行ってみたいな よその国

カメール松本

不思議な歌ですな。なんという曲ですかな?

裏死魔太郎

どぅも。日本の旧三大・海の歌シリーズの一つ『海(海は広いな大きいな)』。本当はビギンのアレを歌いたいところだけどそれはさすがに今の裏ちゃんには無理。

カメール松本

お舟を浮かばせて…ですか。
ではカメの私ではいささか役不足でしたかな?ふはははは

裏死魔太郎

バレた?

カメール松本

え?ウィットに富んだジョークではないのですか?

裏死魔太郎

なんつってー、三味線弾いちまいました(※)。もう何言っても嘘つきの戯言!

三味線を弾く…主に麻雀などの勝負事で小芝居打って相手を騙す時の例え。
ex,「ダメだ、全然テンパイすらしないや。参ったなあ…あ、それロンです」

カメール松本

お、お上手ですな!
ところでとても三味線の音色も素晴らしいですね。

裏死魔太郎

はい。父が宮仕えの三味線職人だったもので。
ただ、同業者の嫌がらせ、父の楽器が呪われてるだ、質が悪いだ散々言われた挙句、父は職を無くし、この海に投身自殺しました。

途方に暮れて海を散歩しているところカメ本さんがめちゃくちゃイジメられてて…

カメール松本

(変な略し方されてる)さようでございましたか。それは心中お察しします。

裏死魔太郎

なんで人間が人間や動物をいじめたり嫌がらせするかわかります?

カメール松本

裏死魔様がよろしければ是非お聞きしたいです。
実際ずっと気になっていました。

私共海のモノにはそういった感情が無いものでして、不思議でならないのですよ。
人間たちのそういった現象が。

裏死魔太郎

自分が傷つきたくないから。
だから先に他人を攻撃して自分に何か言われるリスクを減らそうと努力するんです。
自分のコンプレックスを誰かに悟られないようにするためにね。

カメール松本

なるほど。

裏死魔太郎

人間が許し合う時のことわざに“すべてを水に流そう”っていうのがあるんですけど。あれってすげえムカつくんですよ。
じゃあ、親父はてめえら三下の三味線職人どものドブ臭えエゴを守るために海に沈められたのかって。

何も解決してないじゃないか。












人間なんかに生まれなければ良かったのに




裏死魔太郎

冗談じゃねえよ!!

カメール松本

(同情するけど甲羅痛い)難しいのですね、地上で生きるというのは。

私たちの住む海ではそういうエゴや憎しみは一切ございません。

どうか少しでも裏死魔様の心の癒しになればと思います。

ほら見えてきましたよ?




























裏死魔太郎

ワォ!超デカい。意外と西洋風なんですね。

カメール松本

はい、こちらが私どもの故郷ディープパープル、通称竜宮城でございます。
実はこの建造物自体が実は我々海の者たち亡骸が寄り添い、融解して形を成しています。

裏死魔太郎

ぎょぎょぎょ!死体の塊とな?

カメール松本

ははは。そういうと確かに聞こえが悪いですが、これは私共にとって光栄な事なのです。

人間と違って私共には容姿や個性のこだわりといった観念はございません。

必要なのは調和と共存です。

いつか私もこの殿の一部になる事は光栄ですし、しごく自然な事だと感じでいます。

裏死魔太郎

そういう割にあなた、かなり個性的だと思いますよ

裏死魔太郎

あれ?何か女性の歌声、というかハミングが聞こえるよ?

カメール松本

はい、この声の主は海底の歌姫リナ様。
そちらの伝記でいうところの乙姫様に相当します。

リナ

はじめまして、リナと申します。

裏死魔太郎

え、あ、どぅも!裏死魔太郎です。

リナ

この度はカメールを助けて頂きありがとうございました。
精一杯おもてなしさせて頂きますので、ゆっくりしていって下さいね。

裏死魔太郎

ありがとうございます。その、素敵な歌声ですね!

リナ

ありがとうございます!
そんな事言われたの初めてです。
とっても嬉しい~、うふふ。




















海底2万メートルで

裏死魔太郎は

生まれて初めて

恋に落ちましたとさ



続く

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