二つの魔法の衝突により、空中で爆発が起こり、一面が煙で覆われる。

 爆発の煙で、視界が悪い。これも、信也の作戦のうちか?

 俺が、そう考えていると、煙の中に光る何かを見た。

榊原 信也

そこだ!

 煙の中から、信也の声がしたかと思うと、金色の斧が煙を切り裂き現れた。

神裂 優斗

くっ―――――。

 俺は、とっさに刀で防ぎ、信也の一撃をなんとか回避する。

 そして、そのまま後方へ跳び信也との距離をとる。

榊原 信也

どうした。避けてばかりだと、俺は倒せないぜ。

 信也が、斧を構え直しながら俺に話しかけてきた。

神裂 優斗

はっ! これも作戦の内だよ。

 俺は信也に反論してみるが、実際のところ信也の言う通りだ。

 避けてばかりでは倒せない。

神裂 優斗

ここからどうする?

 今までの攻撃で、信也の魔力はだいぶ削れているはず。

 仕掛けるなら今か。

神裂 優斗

信也! 望み通り、ここからが俺のターンだ。

覚悟しろよ!

 俺は信也に刀の先を向け、そう宣言した。

榊原 信也

望むところだ!

 俺と信也はお互いに距離を詰め、同時に魔法を発動させた。

榊原 信也

獅子、裂空牙!

 黄金に輝く斧が黄金の虎の姿を纏い、俺に襲い掛かる。

神裂 優斗

一の型、炎斬剣!

 一度目より大きな炎を纏った俺の刀は、さながら大きな炎の剣のようになり、黄金の虎に切りかかった。

 二つの魔法がぶつかった瞬間、視界が真っ白になり、大きな爆発音と共に、俺と信也はお互いに体育館の壁に叩き付けられた。

 BATTLE END!

 試合の終了を告げる機械音が鳴り、雪原のステージが元の体育館に戻っていく。

神裂 優斗

……痛ってー。

 俺は壁から体を起こし、辺りを見渡した。

 爆風の名残で土煙が少し立っているが、それでも信也の姿がぼんやりと見えてきた。

 信也は壁に叩き付けられ、気絶していた。

新道 進一

 医療班に連絡!

 担架を用意してくれ。信也を医務室に運ぶ。

 電話で連絡した新道は、信也の方へ駆け寄っていった。

神裂 優斗

しまった。やり過ぎた。

 その後、信也は医療班の適切な治療により何事もなく復活。

 俺と新道は放課後、模擬戦にも限度があるという事を、学園長からみっちり教えられた。

神裂 優斗

はぁ。今日は疲れたー。

 学園長の説教が終わり、一人教室に戻った俺は、机の横に掛けてある黒い鞄を持ち、教室を出ようとした。

 教室の後ろのドアに手を掛けた瞬間、俺は何かの気配を感じ勢いよく後ろを振り向く。

 しかし、そこに人の姿はなく、ただ、誰もいない教室が夕日を浴びて眩しく光っていた。

神裂 優斗

 気のせいか?

 俺は、疲れていたこともあり、特に気に留めることなくその場を後にした。

第八話:《模擬戦~火炎の魔剣と黄金の魔斧2~》

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