17歳って微妙だと思う。


まだ選挙権はないし、
R18コーナーにだって入れない。


だけどそれなりにはこの世界を知っているつもりではいる。


培ってきた人付き合いも、
犯してはダメなことも、

時には自分の意思を強調することも、
時には流されることが必要なことも。


橋下詩織

藍、次数学だよ。移動しないと。

迫田藍

あ、忘れてた。今準備するから待ってね。



膝上15センチのスカートを翻して、少しだけ色づいたリップクリームを塗って、


迫田藍は、今日もうまく生きている。





私の将来の夢は化粧品の会社に勤めること。


大学は、国公立の社会学部に入るために英語と現代社会では成績は上位の方をキープして。



染めたことのない髪を、ばれない程度に巻いているのは強がりの証。

人並みに友情も恋愛も知っているつもり。





ほら、17歳を上手に生きて。
窮屈に思う教室という箱の中で息をして。



橋下詩織

藍は本当にサバサバしてるよね。そういうとこ大好き。みんな思ってるよ、仲良くなりたいって。

迫田藍

やだ、なんのお世辞よ。仕方ないからポッキーあげる。ていうか、詩織のがよっぽど。

橋下詩織

やったね、ラッキー。




ほら、素敵。


何不自由ない生活を、私はそれなりに生きているし、それなりに気に入っている。


親友の橋下詩織とつるんで笑う私は、幸せ者だ。













三浦隼人

はいよ、キットカットのブラック。

迫田藍

何急に。今日は何目当て?

三浦隼人

数学、俺当たるから。宿題見せなさい。




私の机の上にキットカットがポンと置かれて、見上げるとそこには、

好きだろ、コレ。

と笑う男の子がいた。


橋下詩織

また、三浦が藍のこと釣ってるんだけど。

迫田藍

三浦のが数学出来るくせに、毎回毎回。



やれやれと数学のノートを三浦隼人に差し出す。

彼は私が高校生になって初めてできた友達である。



飄々と生きて、ゆるく笑って、干渉しないくせにいつの間にか隣にいてくれる、そんな人。



彼のそういうところが私は好きだ。




詩織と喧嘩したときも彼氏と別れた時も、

ま。なんとかなるって。

とだけ言って慰めるでもなく解決策を編み出すわけでもなく、ただ私の話を聞いてくれた。



それが私にとって一番ありがたいことだということは、もうとっくに気付いているのだろう。三浦のことだから。



付き合ってるの?とよく勘違いされるが、お互いにそれはあり得ないと笑う、そんな関係。



詩織のことも三浦のことも、私にとってはとてもとても大切でかけがえのない人。





だけどそんな彼らにも、言えないことだって、ある。


なんでも話してね
って、言葉には甘えられないものもある。





三浦隼人

ノートあざます。

迫田藍

んー、こっちこそキットカットありがとう。

三浦隼人

藍がちょろくて助かってますいつもいつも。









言えない。










私にはいま、好きな人がいる。



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