あーあ、俺にもアラタと一緒にいる茜ちゃんみたく、俺を慕ってくれる女の子が空から降ってきたり、異世界から来たり、机の引き出しから出てきてーくんねーかな……お?

と、そこで見かけたのはアラタ推しのミドリ先生と……誰だ?

ーーーー

ーーーー

うさみみに透き通るような白い肌。

ミドリ先生が笑顔で話しているのとは対照的にその少女は無表情でこくこくと頷いている。

すると少女はその様子を見てる俺に気づき、

…………

……!

にこりと笑い、会釈した。

そのとき、わかった。

俺の胸がずきゅうん! と何かで刺し貫かれたのを。

そうこうしているうちに少女とミドリ先生は構内へと入っていった。

一人残された俺は一人ごちる。

……きたわ。俺にも。「運命の出会い」ってやつが

ーーーーてなことが昨日あったんだよ

へー

ほーう

なんだよ、その1ミリたりとも興味なさそうな返事は!

安心しろよ、正人。興味がないだけじゃない。お前はつくづく幸せなやつだなぁと哀れんだだけだから

興味がないことを否定しろし! そして、更にディスりを重ねるな!

初詣の時から思うてたが……本当に使徒は退屈しない友人を持っとるのぅ

こんなバカ友人をお褒めにあずかり、光栄すぎる所存です、神様

大体なぁ、その女の子の名前は? 年は?

うっ……

何もわからないだろ? それで「運命の出会い」と言えるポジティブシンキングは僕も見習いたいね

使徒よ。いいではないか。「出会い」というのはどこでも転がってるものじゃぞ?

ーーーー果たして「運命の出会い」もそれに当てはまるのか、甚だ疑問ではあるが……

ま、実ると良いな。「運命の出会い」

くっ! いいよな、アラタは!

あん?

茜ちゃんみたいな女の子といつも一緒にいてさ! あれ、そういや今日は茜ちゃんは一緒じゃないのか?

あいつは今日から友達と旅行にいってるよ

ほほーう? で? 実際、どうなんだよ、茜ちゃんとは?

どうって……

別になんもねーし

その顔は「なんかある」って顔だぜ、アラタくーん

うっせ! この話は終わりだ!

相変わらず素直じゃない奴だな……お?

立ち止まった正人の方へ目をやると、

…………

校門前で箒がけしているうさ耳少女がいた。

アラタっ! ほら、あの娘だよ、あの娘!

聞いてたとおりの特徴だな。あと正人、近い

だろ!? だろ!? かわいいだろ!? やっぱ「運命の出会い」だったんだよ!

聞こえてるから、離れろっっつの!

などと、校門前でぎゃーぎゃー僕と正人が話していると、

うさみみ娘が僕たちに気づいた。

……おはようございます

そう無表情ぽつりと告げ、掃き掃除に戻った。

じゃ、僕も挨拶してさっさと中に入るか。

あ、おはようございま

……無表情娘キタコレーーー!

うぉっ

確かに我から見ても綺麗な女子じゃのう

そう正人は叫ぶとつかつかとうさ耳少女の前へ歩みよった。

はじめまして俺の名前は藤原正人といいます趣味は筋トレですいやあお美しい。是非、お友達になりたい昨日も笑顔で会釈してくれましたよね覚えてますか?

おい正人。なんだ、その自己紹介ともナンパとも取れるアプローチは。

……斬新な切り口だな

うむ。斬新過ぎて神である我もついていけんわ

対してうさみみ少女はーーーー

……

きょとんとしている。

当然すぎる反応だ。

やがて、ポケットから手帳を取り出してパラパラとめくり、正人に目をむけ、

申し訳ありません。全くもって記憶にございません

……え

そう政治家の弁論のようなコメントを残し、うさ耳少女はぺこりと一礼し、構内へ歩き出した。

やれやれ。

校門で固まっている正人に近づく。

……正人

アラタ……ははは。「記憶にございません」だってよ。バカみたいだな、俺。「運命の出会い」なんて一人で舞い上がってよ

正人

はははは。笑えよ、笑ってくれよ

くっくっ……ぷふ!

大丈夫だ。僕より先に神様が腹を抱えて笑ってるから。

それよりも僕は今こそ、友人に伝えなければならないんだ。

僕は傷心している正人の肩に優しく手を置き、穏やかに告げる。

僕の昼飯はやきそばパンでいいからな?

まずは傷ついている友人を慰めろよおおおおおおおお!

12参拝目「正人と1日記憶少女」

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