伊納アスナ

ふむ……アスナが生徒会に入った理由……ですか

佐島亮

あの、名前の豪華そうな人が、僕の後を追って入ったんじゃないかって言ってたんですけど

伊納アスナ

名前が豪華……ああ、高屋敷梨華殿ですね

鈴石茜

本当に豪華そうな名前だ……

伊納アスナ

まあ、高屋敷殿には説明していなかったので

伊納アスナ

まあ、いろいろと

鈴石茜

なんか……アスナちゃん、テンション低い?

伊納アスナ

低いですよー超低いですー

伊納アスナ

今すぐにでも帰りたいくらいに低いですー

鈴石茜

そういえばさっきの高屋敷さんって子が、アスナちゃんが廊下でふらふらしていたって教えてくれたんだけど

伊納アスナ

そ、それは……その、体育祭のクラス準備も生徒会の準備も大変そうで逃避をしたか……いえ、なんでもありません

伊納アスナ

で、でもその後、変な下級生に付きまとわれてしまいまして

鈴石茜

あー、あの子

佐島亮

どこかで見た顔でしたねー

鈴石茜

あれでしょ。夏祭りの後、変な勧誘に絡まれていた子

佐島亮

あー。いましたね、そんな子も。

伊納アスナ

そうですけどー

伊納アスナ

何故アスナが絡まれなければならないのでしょう

伊納アスナ

不満です

鈴石茜

しかも王子様~なんて呼ばれているしね

伊納アスナ

アスナは……

伊納アスナ

アスナは可憐な乙女なんですよ!!

鈴石茜

いやそこ別に協調するところじゃないし

佐島亮

まあ、あの子に逃げるようにこっそり伝えたのはアスナさんですし、アスナさんのことを恩人として慕っているんではないですか

佐島亮

王子様っていうのは……そういうプレイでしょう

伊納アスナ

佐島亮

そういうプレイです!! 百合っ子の『お姉さま~』と、一緒です

鈴石茜

ああ、なるほど

伊納アスナ

ふ、二人で納得しないでください。意味が分からないです

鈴石茜

んーっと

鈴石茜

攻めが受けのことを『僕の可愛いお姫様』っていうのと同じ

伊納アスナ

ああ! それで受けは『僕も男なのに……!』って返すんですね

鈴石茜

そうそう

佐島亮

そういうマニアックな話はよしてください

鈴石茜

我ながら分かりやすい例えだと思ったんだけど

伊納アスナ

でもやっぱりアスナは王子様は嫌です

伊納アスナ

…………

伊納アスナ

こ、このシチュ……もしかしてアスナは受けなんでしょうか

佐島亮

いや、百合の場合は王子様の方が左ですよ

鈴石茜

やっぱり話が段々マニアックになっていくからやめよう!

伊納アスナ

まあとにかく、アスナは一方的に慕われても困るんですよー

伊納アスナ

サボるにサボれなくなりましたし

鈴石茜

ん? なんか言った?

伊納アスナ

い、いえ! なんでも!

佐島亮

まあとりあえずそれの原因は分かったのでいいとして……

伊納アスナ

いや、全然よくないんですけど

佐島亮

アスナさんは何故生徒会に?

鈴石茜

私もそれ、気になっていたんだよねー

伊納アスナ

別に気にするようなことでもないと思うのですが

鈴石茜

だってアスナちゃん、正直素行もよくないし

伊納アスナ

ひ、酷いことをいいますね

伊納アスナ

アスナはなんというか……

佐島亮

なんというか?

伊納アスナ

生徒会ってとっても面白そうだな、と!

佐島亮

……それだけですか?

伊納アスナ

しぶといですね……

鈴石茜

やっぱ気になるし

伊納アスナ

……面白そうだと思ったのは本心です

伊納アスナ

だって生徒会に入れば……

伊納アスナ

佐島殿の弱味が握れると思って!

佐島亮

え……

伊納アスナ

アスナと佐島殿は一年の時に同じクラスだったんですよ。で、佐島殿はアスナのクラスの学級代表だったのです

伊納アスナ

それはそれは、クラスをまとめるのが上手な非の打ち所がない学代でしたよ

鈴石茜

流石……佐島くん……

伊納アスナ

でも、アスナはある日気が付いてしまったのです

伊納アスナ

佐島殿が……オタクだということに

鈴石茜

え?

佐島亮

伊納アスナ

余裕を崩さない佐島殿……その化けの皮を剥がしたいと思ってしまいまして……

伊納アスナ

だから、飛び込みました

佐島亮

な、何故……

伊納アスナ

面白そうだからです

佐島亮

意味が分かりません

伊納アスナ

ただ、今の佐島殿はオタクだということを垂れ流しですね

伊納アスナ

こう、いじりどころもないくらいに……せいぜいツッコミどころがあるくらいです

佐島亮

まあ、確かに僕はオタクだということを隠す派ですが……

佐島亮

この面子じゃ隠す意味は全くないでしょう

鈴石茜

確かにねえ

佐島亮

クラスでは今でも一応非オタを貫き通していますよ

鈴石茜

へえ……初めて知った

佐島亮

僕は鈴石先輩とは違うんです!

佐島亮

真昼間から女の子のシャワーシーンを眺めてテンション高ぶらせたりしていないんです!

鈴石茜

私に矛先を向けるな!

鈴石茜

まあ……初めて知ったなあ。佐島くんのそんな一面

佐島亮

いや、出会ったころは僕、一般人のフリしていましたよ?

鈴石茜

そうだっけ?

佐島亮

そうです。鈴石先輩とは違うんです

鈴石茜

私は別に、わざわざ言いふらしたりとかそういうのはしていないんだけど

でも、結果的に、佐島くんと二次元について叫び合ったりするようになっているなあ

鈴石茜

どうしてこうなったんだっけ

気が付いたら……こんな関係になったようにしか思えないや

出会った頃のことなんて、頭から消し去られて覚えていない

鈴石茜

何故、だっけ

なんとも、もやもやしている

伊納アスナ

佐島殿の弱点……それは既に見つけましたが……

伊納アスナ

今はまだ、秘密の方が面白そうですね

鈴石茜

過去、かあ

鈴石さんは、回想する!

続く

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