時は3月に遡る
時は3月に遡る
よーし、そろったか?
はい、四人、ですよね
えーっと、新生徒会長の鈴石茜です
あー、茜は去年の経験を踏まえて今年もよろしくな
はーい
…………
あ、新生徒会会計の佐島亮です
おう。佐島は俺の自慢の教え子だからな。期待しているぞ
たった一年担任やってただけですよねー
僕、期待されると頑張れないタイプかもしれませんよ
いやいや、お前の学級代表の仕事っぷりはよく見させてもらったからな
はい、佐島殿のすごさはアスナも保証します
あー……伊納か
はい! 新生徒会書記の伊納アスナです!
お前は……なんで生徒会に入った?
生徒会に入れば生徒の代表として充実した学校生活を創り上げ、同時にその学校生活をおおいに楽しむことができると思ったからです
スピーチのために作った原稿の内容はいいんだよ
まあなんでもいいが……
大体他に立候補者がいなかったのですから先生はアスナに感謝をするべきです
ま、結果的にはそうなるかもしれんが……
かーんしゃっ かーんしゃっ
次行くぞ、次
えー
…………
東海?
…………
ね、寝てる
……あれ
小学校から同級生の東海竜弥だ……でもあいつ、自分から進んで生徒会役員なんてやる人間に思えないんだけど
起きろ、東海竜弥!!
ん…………
……っ
…………っ
東海、人相が悪くて後輩二人にビビられているぞ
んあ……
ふっ
意味もなく鼻で笑うな!
厳しい
どこが!?
あー、東海、自己紹介を頼む
…………
東海竜弥。新生徒会副会長
よろしく
ああ、よろしくな
先生、あの、彼は何故生徒会に?
…………人手不足だ
え
まあ学年トップの東海を生徒会に入れて置けば間違いはないだろう
きょ、去年の副会長も学年トップだったしな
ののか先輩と彼とじゃ全然タイプが違うじゃないですか……
んー……まあ、なんとかなるだろう
心配だなあ
まあとりあえず顔合わせが済んだところで、新生徒会が初めて取り組む行事である入学式について説明してゆく
鈴石はまあ知っていると思うが……
去年を引き継いで生徒会長になったわけだけど……大丈夫かなあ
やる気のない副会長
……眠い
ちょっとアホの子っぽい書記
ふむふむ……
あとは……
あれ? 前日に会場準備に行くなら、その時に新一年生の各教室の準備しないんです?
あー、そうしたいのはやまやまなんだが、新一年生の机に置く教材や資料が当日にならないとできないらしくてな
面倒ですねー
す、素直に面倒だと言い切った……
不思議な……男の子
効率って何より大事だと思います
去年も去年だけど、今年も結構濃いなあ
よーし、今日の説明はここまでだ
あとは話した通り、前日に集まってくれ
はーい
鈴石
はい……?
期待しているぞ
え
去年の生徒会はとてもいい活躍をしてくれたからな……今年も先生たちは期待している
プレッシャーかけないでください
はは。じゃあ、頑張れよ
頑張れなんて言われなくても……
頑張らなきゃ、やっていけませんよ
ふ~う。お疲れさまでーす
いやあ、アスナもついに生徒会役員という肩書きを手に入れちゃいましたぁ
名誉なことです
僕は不安で不安で仕方がないですよー
何がどうなったら僕が生徒会役員になるなんていう選択肢が生まれるのか
えーっと、佐島くん? は、自分で立候補したわけではないの?
半強制的ですね
まあ言いくるめられて結局は自分で立候補したみたいな感じになっていますけど
そうかあ……私も去年同じ感じだったな
ほぅ……生徒会長さんも?
うん、あの先生の眼鏡にかなったらしくて、やたら入るように勧められた
じゃあ、同じですね
まあ、そうだね
そうだ、早速ライン交換しましょうよ!
ああ……
便利な世の中だねえ
いつの時代の人ですか……?
よし、完了っと
では、改めて書記の二年、伊納アスナです! 気軽にアスナと呼んでいただけると嬉しいですぞ
……東海竜弥
因みに、あまり学校に来ない
ええっ
寝る
身体弱いし
す、すごい。堂々とサボる宣言ができるその姿……
僕たちのできないことを平然とやってのける
そこに痺れる!
憧れる!!!
あ、つ、つい口が勝手に……
…………
…………
多分今、頭の中で同じことを思っているかもしれない
この子、同志だ
多分、この人同志ですね……
まあこういうのは、あまり詮索してはいけないけど。
あ、二年の佐島亮です
できる限り体力を消耗しない方向で活動したいです
この子も割と堂々と言い切るよな……
三年の鈴石茜
去年に引き継いで生徒会役員だけど結構至らない点もあると思う
その辺、フォローしてもらえたら嬉しいな
はーい!
了解です
……うん
こうして、新生徒会が誕生した
うーん
あの後アスナちゃんが謹慎処分うけたり竜弥が体調崩して? 学校来なかったりで大変だったなあ
でも……
結局、佐島くんと本格的に意気投合したのっていつだっけ……
結局いつか突然……じゃなくて、徐々にそんな風になっていったのかもしれない
二人だけの期間が続いたし……
今思うとめちゃくちゃ貴重な時間だったのではないだろうか……
鈴石先輩……
やっぱり覚えていないんだろうな……
僕に、初めてやる気を出させたこと。
……続く