時は3月に遡る

教師

よーし、そろったか?

鈴石茜

はい、四人、ですよね

鈴石茜

えーっと、新生徒会長の鈴石茜です

教師

あー、茜は去年の経験を踏まえて今年もよろしくな

鈴石茜

はーい

佐島亮

…………

佐島亮

あ、新生徒会会計の佐島亮です

教師

おう。佐島は俺の自慢の教え子だからな。期待しているぞ

佐島亮

たった一年担任やってただけですよねー

佐島亮

僕、期待されると頑張れないタイプかもしれませんよ

教師

いやいや、お前の学級代表の仕事っぷりはよく見させてもらったからな

伊納アスナ

はい、佐島殿のすごさはアスナも保証します

教師

あー……伊納か

伊納アスナ

はい! 新生徒会書記の伊納アスナです!

教師

お前は……なんで生徒会に入った?

伊納アスナ

生徒会に入れば生徒の代表として充実した学校生活を創り上げ、同時にその学校生活をおおいに楽しむことができると思ったからです

教師

スピーチのために作った原稿の内容はいいんだよ

教師

まあなんでもいいが……

伊納アスナ

大体他に立候補者がいなかったのですから先生はアスナに感謝をするべきです

教師

ま、結果的にはそうなるかもしれんが……

伊納アスナ

かーんしゃっ かーんしゃっ

教師

次行くぞ、次

伊納アスナ

えー

東海竜弥

…………

教師

東海?

東海竜弥

…………

教師

ね、寝てる

鈴石茜

……あれ

鈴石茜

小学校から同級生の東海竜弥だ……でもあいつ、自分から進んで生徒会役員なんてやる人間に思えないんだけど

教師

起きろ、東海竜弥!!

東海竜弥

ん…………

伊納アスナ

……っ

佐島亮

…………っ

教師

東海、人相が悪くて後輩二人にビビられているぞ

東海竜弥

んあ……

東海竜弥

ふっ

鈴石茜

意味もなく鼻で笑うな!

東海竜弥

厳しい

鈴石茜

どこが!?

教師

あー、東海、自己紹介を頼む

東海竜弥

…………

東海竜弥

東海竜弥。新生徒会副会長

東海竜弥

よろしく

教師

ああ、よろしくな

鈴石茜

先生、あの、彼は何故生徒会に?

教師

…………人手不足だ

鈴石茜

教師

まあ学年トップの東海を生徒会に入れて置けば間違いはないだろう

教師

きょ、去年の副会長も学年トップだったしな

鈴石茜

ののか先輩と彼とじゃ全然タイプが違うじゃないですか……

教師

んー……まあ、なんとかなるだろう

鈴石茜

心配だなあ

教師

まあとりあえず顔合わせが済んだところで、新生徒会が初めて取り組む行事である入学式について説明してゆく

教師

鈴石はまあ知っていると思うが……

鈴石茜

去年を引き継いで生徒会長になったわけだけど……大丈夫かなあ

やる気のない副会長

東海竜弥

……眠い

ちょっとアホの子っぽい書記

伊納アスナ

ふむふむ……

あとは……

佐島亮

あれ? 前日に会場準備に行くなら、その時に新一年生の各教室の準備しないんです?

教師

あー、そうしたいのはやまやまなんだが、新一年生の机に置く教材や資料が当日にならないとできないらしくてな

佐島亮

面倒ですねー

鈴石茜

す、素直に面倒だと言い切った……

不思議な……男の子

佐島亮

効率って何より大事だと思います

鈴石茜

去年も去年だけど、今年も結構濃いなあ

教師

よーし、今日の説明はここまでだ

教師

あとは話した通り、前日に集まってくれ

鈴石茜

はーい

教師

鈴石

鈴石茜

はい……?

教師

期待しているぞ

鈴石茜

教師

去年の生徒会はとてもいい活躍をしてくれたからな……今年も先生たちは期待している

鈴石茜

プレッシャーかけないでください

教師

はは。じゃあ、頑張れよ

頑張れなんて言われなくても……

鈴石茜

頑張らなきゃ、やっていけませんよ

伊納アスナ

ふ~う。お疲れさまでーす

伊納アスナ

いやあ、アスナもついに生徒会役員という肩書きを手に入れちゃいましたぁ

伊納アスナ

名誉なことです

佐島亮

僕は不安で不安で仕方がないですよー

佐島亮

何がどうなったら僕が生徒会役員になるなんていう選択肢が生まれるのか

鈴石茜

えーっと、佐島くん? は、自分で立候補したわけではないの?

佐島亮

半強制的ですね

佐島亮

まあ言いくるめられて結局は自分で立候補したみたいな感じになっていますけど

鈴石茜

そうかあ……私も去年同じ感じだったな

佐島亮

ほぅ……生徒会長さんも?

鈴石茜

うん、あの先生の眼鏡にかなったらしくて、やたら入るように勧められた

佐島亮

じゃあ、同じですね

鈴石茜

まあ、そうだね

伊納アスナ

そうだ、早速ライン交換しましょうよ!

鈴石茜

ああ……

鈴石茜

便利な世の中だねえ

佐島亮

いつの時代の人ですか……?

鈴石茜

よし、完了っと

伊納アスナ

では、改めて書記の二年、伊納アスナです! 気軽にアスナと呼んでいただけると嬉しいですぞ

東海竜弥

……東海竜弥

東海竜弥

因みに、あまり学校に来ない

佐島亮

ええっ

東海竜弥

寝る

東海竜弥

身体弱いし

佐島亮

す、すごい。堂々とサボる宣言ができるその姿……

佐島亮

僕たちのできないことを平然とやってのける

鈴石茜

そこに痺れる!

佐島亮

憧れる!!!

鈴石茜

あ、つ、つい口が勝手に……

佐島亮

…………

鈴石茜

…………

多分今、頭の中で同じことを思っているかもしれない

鈴石茜

この子、同志だ

佐島亮

多分、この人同志ですね……

まあこういうのは、あまり詮索してはいけないけど。

佐島亮

あ、二年の佐島亮です

佐島亮

できる限り体力を消耗しない方向で活動したいです

鈴石茜

この子も割と堂々と言い切るよな……

鈴石茜

三年の鈴石茜

鈴石茜

去年に引き継いで生徒会役員だけど結構至らない点もあると思う

鈴石茜

その辺、フォローしてもらえたら嬉しいな

伊納アスナ

はーい!

佐島亮

了解です

東海竜弥

……うん

こうして、新生徒会が誕生した

鈴石茜

うーん

鈴石茜

あの後アスナちゃんが謹慎処分うけたり竜弥が体調崩して? 学校来なかったりで大変だったなあ

でも……

鈴石茜

結局、佐島くんと本格的に意気投合したのっていつだっけ……

結局いつか突然……じゃなくて、徐々にそんな風になっていったのかもしれない

鈴石茜

二人だけの期間が続いたし……

鈴石茜

今思うとめちゃくちゃ貴重な時間だったのではないだろうか……

佐島亮

鈴石先輩……

佐島亮

やっぱり覚えていないんだろうな……

僕に、初めてやる気を出させたこと。

……続く

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