都 大樹

すまない……

みんなには先に謝っておこう。

今日1日を過ごして、収穫はあった。
無事に藤峰と合流し、答え合わせをし、回答をもらって。

そして訪れた先に、白石未筝はいた。僕は彼女と再会し、認められ、友達になった。

都 大樹

それに関していえば、間違いなくいい結果だった

だけど、僕はまた1人。
大切な人を失ってしまったんだ。

今日の朝、彼女からの電話に出たことを僕は後悔し続けるだろう。あの電話にさえ出なければ、なんてことは言わない。

都 大樹

悪いのはあの子じゃないから。悪いのは僕で、そして彼女自身だ

だけどその電話に出たせいで、僕の心はボロボロになってしまったのも事実だ。

だから。お願いだ。いや、もう決めている。
そのことについては、今はそっとしておいてほしい。

話すつもりもなければ忘れるつもりもない。ただ今しばらくは、何も聞かないでもらえないだろうか。

だから代わりに、この話をしよう。
白石未筝との再会の物語と、友達を失った僕と彼女自身の、愚かな物語を。

都 大樹

語りきれるかどうか、自信はないけれどね

* * * * *

白石 未筝

やあ、少年。やっとたどり着けたようだね

今日の昼、白石未筝は僕の姿を見つけると、嬉しそうに言った。

都 大樹

まあ1日目の内に会えているのが1番良かったんだけれどね

そう。1日目に会えてえさえいれば、今朝のようなことは起きなかったかもしれない。

白石 未筝

おや、2日見ないうちに随分とやつれてしまったように見えるけど、どうかしたのかい?

そんな事を考えている僕を見て、彼女は言った。

都 大樹

そんな事はないよ。白石を探すのに随分と手間取ったからね

てきとうに誤魔化した僕の返答に、白石はとりあえずそれ以上深入りはしなかった。

白石 未筝

けれどまあ、ここにこの時間に来たってことは、もう謎解きは必要ないだろう? もし誰かがして欲しいというのなら、キミでなくとも1人でもそういう人がいるのなら、お姉さんは快く引き受けるよ

都 大樹

いや、僕はいいよ。人の力は借りたけれど、あの説明をもう一度聞こうとは思わないさ

白石 未筝

ははあ、藤峰のやつだな。そういえば昨日言っていたな。『明日僕の友達が来るかもしれない』とかなんとか。そうか、それは君のことだったのか

どうやら藤峰は僕のことを友達と認めていたようだった。僕はそっと胸を撫で下ろす。

白石 未筝

しかしそれはひとまず置いておこう。では、約束通り君と友達になろう。もちろんお姉さんの秘密の嗜みも教えるよ

『秘密の嗜み』というところで一際顔をにやつかせていた。何だろう。すごく気持ち悪いぞ。

白石 未筝

だからまずは、君の名前を聞こうか

あの時と同じように、僕はその問いに笑顔で答える。

都 大樹

都大樹だ。よろしく頼む、Aのお姉さん

白石 未筝

なっ!?

そうして目を見開いたのも、前と同じ反応だった。

白石 未筝

君は何を言っているのかなお姉さんは全然わからないよ分かるわけもないよAというアルファベットにも全く心当たりがないしそもそもftdfyf%#$&……

こうなってしまえばあとはこっちのものだ。違う話題を振れば迷わず飛び付いてくる。

都 大樹

ところで白石。そんなお前に聞きたいことがあるんだが

白石 未筝

何だ大樹お姉さんに何でも聞いてくれ!!

それがどんなに答えづらい問いでも、だ。

だから僕は、聞いた。

都 大樹

以前綾瀬と待ち合わせをした時は、何やら喫茶店が待ち合わせ場所だったらしいが、それはどういう事なんだ

白石 未筝

確かにお姉さんは喫茶店が好きだ。特にひまわりという喫茶店が。1日そこに居座ることだってある

けれど。

白石 未筝

だけど

僕が望んだ答えは返ってこなかった。

白石 未筝

だけどお姉さんは、綾瀬なんて人と待ち合わせをした覚えなんてないぞ。藤峰と、それから大樹。その2人だけだ

想像はしていたけど、同時に1番恐れていた答え。

その答えを聞き、僕の耳には今朝のあの電話の言葉が蘇った。

私は何でも知っていますよ? もちろん綾瀬咲月に起きたことも。

けれど、都さん。私が知っているということは、あなたも知っているはずですよね?

* * * * *

こんにちは。ご覧いただきありがとうございます。

やっと白石未筝が登場しました。と同時にクイズの答えも。

タイミングを迷っていたので、入れられてホッとしています。

もう一つタイミングを悩んでいる話があるんですが(笑)

早いものでもう16話です。いつ頃終わりを迎えるのかは私のもまだわかりませんが、もうしばらくお付き合いください

それでは、今回はこの辺りで失礼します。

美樹ちゃんはいつでてくるのだろう…

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