そう言って日弦は窓から出ていった
とは言ったもののここは二階だった
正体って……
課題が終わるころには全てが終わってるはずよ
じゃあね
そう言って日弦は窓から出ていった
とは言ったもののここは二階だった
おい!
って……どこ行ったんだあいつ……
和幸が窓から顔を出すと日弦の姿はなかった
俺と愛梨……お前……まさかな……
愛梨、ちょっといいか?
どうしたの?あんたから声かけるなんて珍しいわね
愛梨は和幸の顔を見つめる
以前まであった憎悪に似たような感情はその眼には宿っていなかった。
話があるんだ。
昼休みにグラウンド横のベンチに来てくれるか?
愛梨は静かにうなずいた。
で?話って?
愛梨と和幸は二人でベンチに腰掛ける
和幸は奥歯にものが挟まったように歯切れが悪い
話せないならこっちから話していいかしら?
こっちも用事あるから
用事?
あなたの過去について
雅のこと
っ!?
息の上がる和幸の手を愛梨がとる。
不思議と和幸の息切れが治まってくる。
変な話なんだけど、昨日の夜雅が夢に出てきたの。和幸に伝えてほしいって……
和幸は何も言わずに愛梨の握る手を見つめている。
私のことは気にしないでって……
あの日のこと。雅が死んだ日のこと……
あれは俺のせいで……
違う……
愛梨が真剣な目で和幸を見つめる
違わない……あの日俺が雅を拒絶してしまった。だからあいつは道路に飛び出して……
俺があいつを……
だから俺は他人とかかわらない……
かかわったら……また人を……殺してしまう……
あれは道路に飛び出したわけじゃない……
ホントにただの事故……
だから気負わないで……
あなたには笑っててほしい……
雅はそう言ってた。
それは……お前の妄想だって……
もしくは俺のためについた嘘……
湊日弦さんが言ってたって言えば……信用してくれるかしら?
和幸の心臓が大きく音を立てた。
日弦という名前が彼女の口から出たということは、日弦と愛梨が接触を持ったということ
また、愛梨に雅の気持ちを伝えたということ。
それは暗に……いや、はっきりと湊日弦が何者であるかということを表していた。