和幸は愛梨の話を聞いた直後、一目散に屋上へ向かった

彼女は必ずここにいるはず
湊日弦は……

和幸

湊!

日弦

あら、早かったわね……

和幸

湊日弦……いや……雅……

和幸は少女をまっすぐと見つめる
彼女は負けましたといった表情で、しかし、どこか幸せそうに和幸を見つめた。

日弦

そう、私は雅……
厳密にはその霊体みたいなものだけどね

和幸

なんでこんなこと……

日弦

だって和幸、お友達いなさそうだったし。手伝ってあげようと思って
それに……

そう言って日弦は悲しげな表情を浮かべる

日弦

いつまでも和幸に過去に縛られてほしく無かったの。
あの事故は私の不注意だったの。
確かに最後にあった時にケンカはしたし、ひどいこと言った。
でも、謝りたかったの。
本当に……あなたは悪くないわ。

和幸

雅……
それを言うために……

日弦

そう。こうでもしないと和幸は言うこと聞かないでしょ……昔から頑固なんだから……

和幸

ほっとけ……

和幸の表情に笑顔が戻る。
それを見て日弦は嬉しそうに微笑んだ。

日弦

じゃ、用は済んだから

和幸

おい、どこ行くんだよ……

日弦

忘れたの?私は死んでるのよ?
成仏するに決まってるじゃない

和幸

そう……なんだ……

和幸はそう言いながら目を伏せる
そんな和幸を見てもなお、日弦は明るい声で続ける。

日弦

和幸。最後くらい笑って
私はあなたの笑顔が好きだったし
それに、私が成仏する前の最後の記憶にあなたの泣き顔を記憶させる気?
それって嫌がらせじゃない?

和幸

それもそうだな
ありがとう、雅……

日弦

それはお互い様よ
ありがとう……
心置きなく……帰れるわ……
じゃあね……

そう言うと雅の身体が光に包まれた。
すると日弦は何かを思いだしたかのようにポケットに手を入れた。

日弦

課題クリアのご褒美
あなたの本返してあげる

和幸

ありがとよ……

日弦

バイバイ

彼女はその言葉と同時に光を放って消えていった。

和幸

バイバイ……雅……

和幸が見上げた空は彼の心を表すように綺麗に晴れわたっていた

愛梨

急に飛びだしていったけど大丈夫だった?

教室では愛梨が心配そうな顔をしていた。
和幸は笑顔で大丈夫と答えると席に着いた。

和幸

なんだよ雅のやつ……栞の場所間違ってんじゃねぇか……

そう言いながら和幸は栞をとりだした。するとそこには『雅より』と書かれていた。栞を裏返すと、そこには雅の文字でメッセージがあった

日弦

ずっとあなたの友達だよ
私はあなたの心にいます
         雅より

和幸

あいつ……

和幸は誰にも聞こえないような声で呟くと、栞を元のページにはさみ直した。
後ろから三神のにぎやかな声が聞こえる。

友達を作るのも悪くないな

和幸はその言葉を心の中で呟くと、友達の元へ歩いていった。

最終話:本当に……あなたは悪くないわ。

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