食欲が全く湧かなかったため、夕食を断って俺は自室に直行した。

母は心配そうな顔を一瞬見せたが、了解。と明るくおどけてみせた。

何か悟られただろうか。

ベッドに横たわると、今日起きた出来事が頭の中を駆け巡った。

水夜との再会。

麻薬を打った。

ムンドゥスに集う救済者達。

モルタリスという化け物。

フェブラの真実。

教皇の死。

羊おじさんと名乗る、不審な男。

色々なことがあった。いや、最後のは忘れるんだった。

そして救世主。

静かに時間をかけて考える。

向こうの世界。ムンドゥスのこと。こちらの世界。フェブラのこと。救世主と、救済者。インサニア。モルタリスとの戦い。

教皇の死体が、さっと脳をよぎった。

皮膚と頭を溶かされた、無残な死体。

一歩間違えれば、自分がああなっていたのだ。

そう思うと、全身が寒気に覆われて震える。

確かに恐ろしい。

もちろん死にたくない。けれど。それは世界を救うための戦い。

未来の。平和の。安心のための、戦い。

そう思うと、恐怖心が掻き消えるほどの高揚が俺を包み震えは止まる。

殺さなければならない。

世界を、救わなければならない。

そう。俺は救世主なのだから。

教皇の死を贖うように。モルタリスを殺して、殺して、殺しつくしてやる。

久々に満たされた気持ちで眠りについた俺は。

それでも天井の模様に見下されていた。

pagetop