おばば

せっかく山から下りてきたんだったら、お茶でも飲んでいきんさい

狸原

ま、まぁ…いいけど

狸原

ラッキー!
ちょうどお腹空いてたし、ごはん食べたら軽く畑でも荒らすぞー

おばば様の提案に、うまく乗っけられた狸原。

一方、小兎は納得のいかない表情を浮かべていた

小兎

今日は、私の負けってことでよろしくってよ

と言葉を濁した。

もちろん誰に聞かせる訳でもない。自分に言い聞かせるように何度も同じ言葉を繰り返した。

おじじ

まあ。最初から無理だと分かっておったがな
さて、後はおばばに任せて仕事に戻ろうかの

小兎

さ、最初から!?
い、や…今日はたまたまよ。そう、たまたま!!

と、吐き捨てて小兎はその場から立ち去っていく。

その光景をぼんやりと眺めていた狸原はぽつりと言葉をこぼした

狸原

これぞまさに、脱兎のごとしってか

通された縁側で、呑気にまったりくつろぐ狸原。

春の温かい日差しが村を見守るように佇んでいる。ああ、今日もこの村(限界集落)は平和だ。

おばば

ほれ、お茶じゃよ

狸原

お、待ってました!

おばば様から湯呑を受け取り。ずずずっと啜る。

ほほ笑むおばば様とくつろぐ狸原。

おばば

そろそろかのう

小さく呟いたおばば様。

目の前の狸原はお茶を飲みほしたところだった。

狸原

ごちそうさ…

狸原

あれ…急に瞼が重たく…

その場に倒れこむ狸原。

その傍らでおばば様は先ほどと同じようにほほ笑んでいた。

おばば

やっと効き始めたわ
それにしてもおじじも…あの小娘もほんとに使えないのぉ

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