さて、始めよう。
場所を改めての第一声がそれだった。
廊下で見張っていた羽鳥さんも、半ば無理やりに田畑さんの個室へ連れて来ることとなった。
代わりの見張りは日向瑞樹さんという、工藤さんの死に、一番動揺していたと思われる人だ。
なぜ犯人捜しのような真似になったのか、僕には明確な目的はなかっただけに些か疑問であるものの、田畑さんに背を押されて椅子に座った。
さて、始めよう。
場所を改めての第一声がそれだった。
廊下で見張っていた羽鳥さんも、半ば無理やりに田畑さんの個室へ連れて来ることとなった。
代わりの見張りは日向瑞樹さんという、工藤さんの死に、一番動揺していたと思われる人だ。
なぜ犯人捜しのような真似になったのか、僕には明確な目的はなかっただけに些か疑問であるものの、田畑さんに背を押されて椅子に座った。
さ、始めようか。
はい…。
まずは…
検死だとか詳しいことはできないけど…
あれは、駆け付けた時には硬くなっていた。
さて問題です。
ここから推測できることは?
えっと…
亡くなってから時間が…?
そうだ。
そして温度によって…
死後硬直にかかる時間が違う…。
昔、うぃきぺでぃーあで見た!
……………。
全身まで硬直していないから…
うん、12時間は経っていないだろう。
12時間前は皆
集まってましたからね。
そこで、だ。
俺は温度計を持ってあの部屋へ行った。
何度だったんですか…?
弘継、教えてくれ!
自分で見てないのか!!!
……あー…18℃くらいだったと。
この人達…やる気あんのか。
ありがとう。
だとすれば2、3時間といったとこだ。
……解散したすぐ後くらいか。
………。
……………。
誰が犯行できたは置いといて
次は死体の状態について…。
死因はよくわからない。
いや、はっきりしてるだろ!
ありがとう、そうだった。
あれは調理場で使っていたものだそうだ。
ちゃんと綺麗に洗ってから
何人かの女子に聞きまわった。
この包丁
調理場にあったもの?
とでも聞いて回ったんだろうか。
というか…
引き抜いたのか…包丁。
しかも丁寧に洗って…。
いや、それ
本来ならいけないことだから!
この物語が刑事ものなら
確実に、刑事失格だな。
え…刑事もの…?
ん…?
プイッ
まぁ、いい。
よし…次はアリバイだ!
急だなっ!!!
本題は犯人捜しだからな!
あ……。
あの…。
万が一犯人がわかったら…
その…どうするんですか?
………………。
それはやはり…
どう言ったものか…。
処罰…と言えば、物騒な気も…
うーん………監禁?いやいやこれも危ない。
署までご同行願おう?
いやいや、これぞ刑事ドラマみたいだ。
…………
まぁ、身柄を拘束する程度だ。
あくまでも…明確な証拠があれば…な。
そ、そうですか。
やはり刑事ドラマ風でよかったのか!
田畑さんは何をにやにやして…。
まぁいいや。
それで…言いにくいんですが…
与えられた個室にいたので…その…
……………。
君のアリバイは俺が証明しよう。
え…?
…………………。
……………。
ん…?
田畑さんが羽鳥さんを……凄んでる?
…………
ゆきりん、彼は……。
何か…いいあぐねて…?
そもそも羽鳥さんと僕は…
解散直後には会っていないのだから、
ここはいいあぐねてもおかしくは…ない。
僕も個室に居たって言っちゃったわけだし…。
計画なしに言ってみた…だとか?
………………………。
…………?
そもそも羽鳥さんは…
僕と会う前に…誰に会いに…。
個室にいなかったのは確かだけど。
…………訂正しよう。
確たるアリバイではないだろうけど…
彼が個室に入ったところは見かけた。
……………
そうか。
なんなのだろう…。
さっきから妙な間が空く。
最初から…
佐藤くんも弘継も疑ってない。
だから君らはここにいる。
…………信用してると…?
……………。
あたりまえじゃないか。
…何故。
弘継とは長い付き合いだからだ。
佐藤くんは…
この中で一番人畜無害だ、顔が。
は…?
素直じゃないか。
ツッコミも容赦なくなったし。
この人…
ツッコミ入れらてる自覚あったのか。
さ、それじゃ…
俺はアリバイを聞いてこよう。
行って来ます!
え…いきなりですか?
行動は早いな…。
あ、そうだ弘継。
お前は日向と変わっておけよ?
……そう言えば…。
日向さんと見張り、交代してたんだっけ。
………その前にゆきりん。
今は…深夜の3時だ…皆寝てる。
あ。
あ。
寝ないことには慣れてる。
むしろ寝てないフリも得意だ。
見張りは、ちゃんと交代しよう。
………だから二人とも…
ちゃんと今晩は休んで、改めて行動しよう。
そうだな。
そうですね…。
じゃ、明日…
アリバイ聞いて回ったら…
またここで密会を開こう!
密会…いい響きだ!!!
おやすみ~!
本当に嵐のような人だ…。
大切なことを忘れていた。
田畑さんはいつになく真面目な顔で言う。
ここ、俺の部屋だから
俺じゃなく…君達が出てってくれたまえ。
そういえばそうだった…。
……………。
あれ…羽鳥さん出るの早いな。
僕も急ごう。
田畑さん、お邪魔しました。
おやすみさい。
あぁ、おやすみ。
7話 嘲笑 完