信也はそう言って、一階の二人を人差し指で指す。
下を見ると、瑞希と静香がお互いのデバイスに手を掛けスタートポジションに着いている。
ほら、もう始まるみたいだ。二人の試合。
信也はそう言って、一階の二人を人差し指で指す。
下を見ると、瑞希と静香がお互いのデバイスに手を掛けスタートポジションに着いている。
これから、第一試合を始める。
二人とも、準備は?
新道は、二人に聞く。
いいよ。早く始めようよ。
瑞希が、新道を急かす。
こちらも、いいですよ。
静香もそれに答える。
なあ、優斗。
信也が俺に聞いてきた。
何だよ。
俺は、信也に聞き返す。
どっちが勝つか、賭けないか?
信也が提案してきた。
お、いいね。じゃあ俺は、今日は静香に賭けようかな。
んじゃ、俺が瑞希な。
負けた方が勝った方にジュースだからな。
信也は、そう言って二階席の出口へ向かう。
おい、どこに行くんだよ。
俺は、出口に向かう信也に言った。
トイレだよ。さっき行きそびれたからな。
信也はそう言って、体育館を後にした。
視線を体育館の二人に戻すと、ちょうど試合が始まろうとしているところだった。
模擬戦、第一試合。はじめ!
「BATTLE START!」
戦闘開始の機械音と共に、体育館の床と壁が姿を変える。体育館の壁がなくなり、広大な荒野が姿を現す。
これは、ヴァーチャルヴィジョンシステムと呼ばれるもので、体育館の壁に使用されている特殊魔導壁により、空間型の魔導が発動し、この体育館ごと仮想空間化し、その仮想空間でバトルをすることができるというシステム。通称、VS(バーサス)と呼ばれている。
もちろん、仮想空間内であれば、一定の範囲内の魔導は、仮想空間の外に被害が及ぶということも無い。
しかし、人体へのダメージは無効化されないので、そこは気をつけなければいけない。
いきますよ!
静香はデバイスを両手で持ち、胸の高さの位置で構える。
いつでもどうぞ!
瑞希はデバイスを片手で持ち、前に突き出す。
練成!
練成!
二人は同時に叫んだ。
静香がそう叫ぶと、静香の周りの地面から緑色の魔方陣が浮かび上がった。武器練成の開始である。
さらに、緑色の魔方陣から深緑の青葉が舞い出し、静香の両腕を包む。同時に彼女の両手に黒い革の生地に、緑色に光るラインの入ったグローブが形成。
そしてその両手に、黒い銃身に緑色に光るラインの入ったハンドガンと、白い銃身に赤色に光るラインの入ったが形成された。
瑞希が叫ぶと、同時に青色の魔方陣が地面から浮かび上がり、武器の練成が開始される。
魔方陣からは青く輝く流水が湧き上がり、彼女の右腕を包む。
黒い革の生地に、青く輝くラインの入ったグローブが形成され、その手には刀身が青色に輝く剣が形成された。
練成時間はほぼ同じね。
瑞希が自分の練成した剣を見ながら呟く。
今回は勝たせてもらいます
静香が二挺のハンドガンを構える。
やれるものなら!
瑞希も剣を構える。
二人の間に、静寂が流れる。
お互いに、相手の出方を伺っているようだ。