新道 進一

 遅いぞ、お前ら。

 体育館までそんなに時間がかかる距離でもないだろ。

 俺と信也が体育館に着くと、新道は体育館の中央に、瑞希と静香は壁にもたれながら何かを話していた。

榊原 信也

 ごめん、ごめん。迷子の子が居たから、道案内してたんだよー。

 信也が、今さっきの出来事を新道に説明した。

新道 進一

 迷子? そうか。

 あいつ、もう来てたのか。

 新道が思い出したかの様なそぶりをして言った。

榊原 信也

 え、新道教官。あの子と知り合いなんですか?

 紹介してくださいよー。

 信也が目を輝かせて媚びるように新道に聞いた。

新道 進一

 はぁ、今朝も言っただろ。

 明日編入してくる生徒だ。

 新道はため息をつきながら言った。

榊原 信也

 それ、本当ですか? 俺、告ろうかな。

 信也が顎に手を当てて、真剣に悩んでいる。

 確かに、俺も可愛いと思った。

 しかし、あの顔どこかで見たことあったような……。

 思い出そうとするが、あと一歩の所で思い出せない。

新道 進一

 まあ、編入生の件は一旦置いといてだ。

 せっかくお前らのために体育館の使用権もらって来てやったのに。時間を無駄にするな。

 模擬戦始めるぞ。

 そう言って、新道は手に持っているタブレットの電源を入れた。

 電源を入れると同時に、体育館の壁面が一度鮮やかな緑色に光り、体育館の壁面がバリアで覆われていく。

霧裂 静香

今日こそ勝ちます!

 そう宣言したのは静香だった。

神宮寺 瑞希

勝ちは譲らないわよ?

 瑞希がそれに答える。

新道 進一

じゃあ、今から相手を抽選で決める。

試合のルールはいつもの通り、トーナメント形式だ。

新道はそう言って、手に持っているタブレットを操作した。

榊原 信也

今日は誰が相手かな?

神裂 優斗

相手が俺だったら、前回みたいにボコボコにしてやるよ。

榊原 信也

それはどうかな?

前回みたいにはいかないぜ?

 そうこう言っている間に、タブレットから、作業の完了音が聞こえてきた。

新道 進一

お、抽選結果が出たぞー。

第一試合は神宮寺と霧咲、第二試合は神裂と榊原だ。

各自準備次第始めるぞー。

 新道は、そう言うと、体育館の中央に移動した。

霧裂 静香

今日は勝たせてもらいます。

 今日の静香は、やけに気合が入っているようだ。

神宮寺 瑞希

お手並み拝見ってところね。

 瑞希と静香が、お互いにスタートポジションに着き、模擬戦の開始許可が新道のタブレットに表示された。

 ここらで、彼女達の紹介をしておこう。

 まず、静香こと、本名を霧咲静香と言う。

 彼女は主に射撃で相手を制圧する戦闘タイプだ。

 豊富な火力と狙った敵を逃さない高い命中率を持ち合わせている。

 普段の俺たちのチームでは、後方支援役が不在のために、仕方なく後方支援に徹しているが、本来は中距離からの遊撃を得意としている。

 あとは、神宮寺家に仕える専属メイドっていう事だけど、その話はまた今度。

 もう一人の方は、さっきも教室で少し紹介したが、瑞希こと、本名を神宮寺瑞希と言う。

 俺の幼馴染で、俺らのクラス委員だ。

 成績も学年トップで、武術の成績もトップクラスだ。まあ、文武両道って奴だ。羨ましい限りだ。

 チームでは、俺と同じく真っ向から切りかかるタイプで、前衛役だ。

 まあ、彼女の家がお金持ちだということも今回は省かせてもらう。

榊原 信也

 優斗、二階席で見ようぜ。

 ここに居たら多分危ない。

 後ろから肩をたたいて来たのは、信也だった。

神裂 優斗

 そうだな。

 二人があの調子だと、派手にやるのは目に見えてるな。

 瑞希と静香は既に臨戦態勢にあった。

 俺と信也は体育館の二階席に移動することにした。

 二階席は主に観戦用なので、対魔導バリアが張られ、一階に居るよりは比較的安全と言える。

榊原 信也

 朝もそうだけど、さっきから誰と話してるの?

 頭大丈夫?

 信也が俺に聞いてくる。

神裂 優斗

 次俺の思考読んだら腕一本は覚悟しとけよ。

 俺は本気だ。模擬戦のドサクサに紛れてこいつの腕を切り落としてやる。

榊原 信也

 おお! 本気かよ。怖い、怖い。

神裂 優斗

 よし、切り落とし確定だ。文句言うなよ。

榊原 信也

 いやいやいや、冗談キツイぜ。

 優斗が言うと洒落になんねーよ。

神裂 優斗

 大丈夫だ。冗談でも洒落でもない。

榊原 信也

 まあ、それくらい本気で来てくれないと、面白く無いから良いか。

 前回負けておいて、どの口が言っているのやら。

榊原 信也

 お、そろそろ模擬戦が始まるみたいだ。

 下を見ると、瑞希と静香が自分のデバイスに手を掛けていた。

第三話:《模擬戦~蒼穹の魔剣と二色の魔銃1~》

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