むかしむかしのそのむかし…からかけ離れたとある現代。

都市化の進む中、時代の流れに取り残された限界集落の村が有りました

そんなくそ田舎な山の頂上から、呑気な鼻歌が聞こえてくる。

狸原

さーて、今日もおじいさんをおちょくる旅に出るとしよっかなー

なんて口ずさみながら、山のいたずらっ子狸原は、今日もロクでもない目標を掲げ、ふもとの限界集落へ向かうのであった。


同刻、山のふもとの村

小兎

皆様、準備はよろしくって?

おじじ

小兎や、本当にこの作戦であの狸原を捉えることはできるんじゃろうな?

小兎

当然よ。私を誰だと思ってるのかしら?
この山一番の博識なんですから!!

小兎は無い胸を張りながら、どや顔をかましていた。

そのどや顔が、更におじじ様の心配をかき立てる。おばば様はクスクスと笑いながらおじじ様を宥めるように言葉をかけた。

おばば

まったくおじじ様は、ほんと心配性なんですから。こんなにしっかりした仕掛けを拵えるのですから大丈夫ですよ

訂正。おじじ様を宥める気0のおばば様でした。

おじじ

むむむ…おばばがそこまで言うのだったら大丈夫かのう

村(限界集落)では狸原捕獲計画が進められていた。

と言ってもその全貌は、狸原の好物であるシイタケを畑の真ん中に設置し、その周りに落とし穴を仕掛けるというものである。

おじじ

こんな子供だましみたいな策で捕まるようなやつじゃったかな?

おじじ様の不安もつゆ知らず、小兎の瞳は期待に満ち溢れていた。

小兎

さあ。早く来なさい、狸原。
あんたがみじめに捕まる姿をこの目に収めてあげるから!

小兎は胸の前で腕を組みながら、畑の方を眺めていた。

今回の為に、大きく分けられた隣の村から仕入れた肉厚シイタケ。しかも炭火であぶり、醤油を垂らしたというシンプルな味付けだ。

あえて、他の調味料に頼ることなく、本来のうま味を最大限に生かした調理法。隣の村出身である狸原がこの匂いに誘われて出てくる…というのが小兎の考えであった。

林の方から慌ただしい足音が響く。

小兎を含めた村民全員、そっと物陰に隠れ、畑の方に視線を向けた。

狸原

スンスン
なんだかいい匂いがするぞ

何も知らない狸原は、周りに警戒することなくは畑へやってきた。

小兎

さあ、早くそのシイタケを食べようとしなさい!!
そして無様に落ちてしましなさい!!!

小兎の思惑に反して、狸原はその歩みを止めた。

そして、周りを見渡す。

狸原

でも、こんな明らかに罠ですよってところ俺でも行かないけどな

あえて周りに言い聞かせるように。狸原は呟いた。

おじじ

わしもそう思う

狸原

なんか興ざめだな…帰ろっかな

おばば

ちょいとお待ち。狸原

その一 立ち上がるおばば様

facebook twitter
pagetop