どこから話し始めたものか。さて、困った。
まず僕がここにいる理由なんだが、それは他でもない。君たちに、とあるエピソードを語れと命じられたためなんだ。
僕は副業として語り部を名乗っているから、ものを語ること自体に抵抗はないのだけれど、いかんせん、この話の「全体」を語るには、ある男を主人公に据えなくてはならないようでね、そいつが厄介なんだ。
その男は、僕の天敵とも呼べる男。いい歳して自分の本能の赴くままに好き勝手に行動をする。粗暴。野蛮。とにかく何事も雑で荒い。こいつが関わると僕たちのありとあらゆる計画が倒されてしまうんだ。いやはや、迷惑千万ここに際まれり。二度と関わりたくないと思っていたんだが。
だからこの仕事、気が乗らないなぁ、なんて思って冒頭に至るのさ。引き受けてしまったからには仕方がないことなのだけれどね。
……ちょっと気になってきた?コイツのことが?えっ正気かい?
僕の語り部としてのセンスゆえかなぁ、なんだか釈然としないけど、君がそう言うなら話さざるを得ないじゃないか。飽きたら飽きたって言っておくれよ。すぐに止めるから。
じゃあ、コホン、ひとつ話そうか。………