レストランの中で、パパが知らない女と話しているところを目撃した。
僕と水実は外からガラス越しにその様子を見ていた。
女が立ち上がり、そして僕らに気付いた。
続いてパパがこちらを見た。
パパは僕らを見てビックリ顔になっている。
ほほう、まずいものを見られたって顔ですな。
女が笑顔でこっちに手を振った。
レストランの中で、パパが知らない女と話しているところを目撃した。
僕と水実は外からガラス越しにその様子を見ていた。
女が立ち上がり、そして僕らに気付いた。
続いてパパがこちらを見た。
パパは僕らを見てビックリ顔になっている。
ほほう、まずいものを見られたって顔ですな。
女が笑顔でこっちに手を振った。
くきー!
水実が変な声を上げた。
僕らは急いでレストランの中へと入っていった。
途中、あの女とすれ違った。
べー!
水実が女に舌を出した。
早足でパパのいるところまで行き、パパの顔を見ないようにして席に座った。
見損なったぞ
あの女の人、誰?
僕と水実はパパに尋問した。
顔が困ってる。
やっぱり浮気なんだ。
浮気は男の甲斐性ですかぁ
眼鏡のお姉さんはどうしたんですかぁ
僕らは口を尖らせて言った。
あのね、さっきの人はただの友達。
ていうか僕は山根さんとは何の関係もないんだよ
さいてー
さいてー
僕と水実は声を揃えて言った。
ひどい。
何の関係もないだなんて。
なんてことを言うのだろう。
しかもチョコパフェを僕らの前に置いたぞ。
こんなもので僕らを丸め込もうというのか。
ちくしょう、美味しいじゃないか。
まあ、水樹ったら。
そんなにがっついて。
パパの思う壺よ
水実こそ。
口にチョコつけまくって何言ってんだ
だって、美味しいんだもん
おお、旨いな。
ちゃんと食べれるんだな僕ら
ねー。
何かを食べたの初めて。
美味しい
あ、さくらんぼ食べた!
一個しかないのに
僕らは初めて物を食べる喜びに我を忘れていった。
チョコパフェを一気に食べ尽くしたあと、パパの所業を思い出した。
なんてパパだ!
こんなんで許されると思うなよ
お姉さんを悲しませたら許さないんだから
僕らはチョコパフェなんかに懐柔されないんだぞ。
そう思った。
とりあえずお口を拭きなさい
パパがパパみたいなことを言った。
ついにパパとママの卒業式がやってきました。
私と水樹は校庭の外で、学校の体育館を眺めていました。
ママ。
パパと恋人になれたかな
僕たちのできることはちゃんとやったよ
水樹がいつになく真面目な顔をしています。
きっと私と同じで不安を感じているんだと思いました。
しばらくして、沢山の高校生のお兄さんやお姉さんが出てきました。
一人のお姉さんが、大人の人と一緒に私たちのいる方向へと歩いてきました。
ママと若いおばあちゃんでした。
手を振ってもいいよね
うん。
この前お話だってしたんですもの
私と水樹はママに向かって手を振りました。
でもママは私たちに気づいてくれませんでした。
ねえ水実。
ママ、僕らのこと見えてないみたいだよ
う、うん。
こんな真正面で手を振ったら絶対気付くはずだもん
ひょっとして、パパと結ばれなかったのでしょうか。
私は泣き出しそうになりました。
沢山の人がワイワイしている中に、パパの姿を発見しました。
何やってんだパパ。
ママ、どんどん遠くへ行っちゃうよ。
この日を逃したら、もうママと一生お別れだよ
水樹も泣きそうなのを我慢しているのがわかりました。
あ、パパがこっちを見た
水樹の言うとおり、パパがこっちを見ています。
パパには私たちがちゃんと見えているみたい。
パパが私たちのところへ向かってきました。
水樹がママの通り過ぎていった道を走り出しました。
思わず私も後を追いかけます。
ね、ねえ。
何で逃げるの?
走りながら水樹に言いました。
え?
いつもこうしてたから……わ、パパがものすごい勢いで走ってきた
ひゃあ!
パパが追いかけてきたので、つい夢中で逃げました。
でもパパは大きいのですぐに追いつかれて、肩を掴まれました。
きゃー!
きゃーきゃー!
私はびっくりして叫びました。
ちょ!
ご、ごめん。
ほら、何もしないよ
パパが慌てて手を離しました。
ねえ、このままでいいの?
水樹がパパに言いました。
どこにいるかわかる?
パパは水樹の言いたいことがわかったみたいです。
そして、パパはママに会いたがってるんだって思いました。
私はまた涙が出そうになりました。
この道をまっすぐのとこなの。
早く行ってよ
私はママが過ぎ去った方向を指差して言いました。
パパは何も言わず、私が指差した方へ走り出しました。