小野 ゆかり

あの…お食事ができたので…。

千堂 旭飛

なぁ…。
ひとついいだろうか。

小野 ゆかり

はい?

千堂 旭飛

君は頼られることが苦痛になったら…
どうしている?

小野 ゆかり

え……。

千堂 旭飛

答えれないのならいい。
見たところ君は…
眠り姫のよう王子の救いを待つだけだ。

小野 ゆかり

そ、そんなことは…!

千堂 旭飛

食事ができたんだろう?
行こうか。

小野 ゆかり

は、はい…。








……頼りにならないとは、実に歯痒く

頼りになるとは苦痛でもある。


どちらにして俺には苦痛でしかない。


ならば、どうしたいのか…





そうだなぁ……。







佐藤 紘

あ、千堂さん
おかえりなさい。
遅かったですね?

千堂 旭飛

あ、あぁ…。

千堂 旭飛

佐藤くん探しに行ったら
ついつい本に読みふけっちった☆

佐藤 紘

え…?

千堂 旭飛

あれ…だめか?

田畑 結城

甘い!

田畑 結城

こうやるのだよ☆

佐藤 紘

な、なんというか…
意外すぎて…。

佐藤 紘

あんたは、やらんでいい!

小野 ゆかり

あの…佐藤くん?

佐藤 紘

あ、はい。
なんでしょう。

小野 ゆかり

せっかく近くに居たから…
挨拶しておこうかなって…。

佐藤 紘

あぁ、そうでしたか。
えっと…僕の自己紹介は聞きましたよね?

小野 ゆかり

えぇ。
私は小野ゆかり(おの ゆかり)
高校2年だから…あなたの一つ上ね。

佐藤 紘

先輩多いなぁ…。

小野 ゆかり

学校は森丘咲高校…
伝わるかわからないけど…

波島寿くん
都築慶介くん
津田和樹さん
篠崎手毬ちゃん
佐々木慎介くん

この五人とは同じ学校なの。

佐藤 紘

ご、ご丁寧にありがとうございます。

佐藤 紘

誰だかさっぱり…。

田畑 結城

食事、食べないか?

小野 ゆかり

そして、私たち六人…
みんな演劇部に入ってるの。

佐藤 紘

あ、千堂さんから聞きました。
ここにいる皆さん…
演劇部に関わりがあるんですよね?

田畑 結城

食事、食べないか?

千堂 旭飛

話もいいけど、冷めてしまうよ?

小野 ゆかり

あ、はい。
そうですね!

田畑 結城

何故だ…。

佐藤 紘

食事食べないかって…
本人気づいてないんだろうか。

千堂 旭飛

田畑の言い方がおかしいのは
今に始まったことじゃないからな…。

佐藤 紘

じゃあ、ここ座りますね。




自宅では到底目にすることができない程、とても高価そうな椅子に腰を下ろして一息つく。


僕が座ると、何故だとしつこい田畑さんも椅子に腰を下ろした。


これはなんの晩餐なのだろう?

長方形のテーブルを大人数で囲み、そのテーブルにはずらりと、食欲を誘う香りを漂わせた食事がある。


既に食事に手を伸ばす者もいれば、お喋りに夢中で食事に手が伸びていない者もいた。





カタンッ



隣の空席を誰かが引いた。


羽鳥 弘継

隣…いいか?

佐藤 紘

はい、大丈夫ですよ。

田畑 結城

ならば俺は向かいに座ろう。

佐藤 紘

はい?

都築 慶介

この味噌汁おいしい…。

佐藤 紘

あれ、この人いつの間に…。




いつからだろう。気づけば、羽鳥さんとは逆の隣に黒いフードの怪しい人が、味噌汁を啜っては感動の声を漏らしていた。


佐藤 紘

あのー…
よければ自己紹介してもらっても…。

都築 慶介

都築慶介(つづき けいすけ)です。



ズズズズズッ


たった一言発して、彼は味噌汁へ集中する。


佐藤 紘

聞くだけ無駄かな…。

小野 ゆかり

都築くんとは、同じ学校の生徒なの。

佐藤 紘

そういえば、そう言ってたっけ…。

小野 ゆかり

あなたと同い年よ。

佐藤 紘

そうなんですか!

佐藤 紘

実は、皆さん年上ばかりで…
少し緊張もあったので…

小野 ゆかり

ふふ、他にもいるわよ?

小野 ゆかり

!?

田畑 結城

ん?

斑 洋二

はっ…だっせ。

宮代 奈々子

アンタに言われたくない。

小野 ゆかり

佐藤くん
私、片付けてくるわね。

工藤 陽景

小野さん
よければ手伝うよ。

小野 ゆかり

ありがとう。

佐藤 紘

僕も手伝うべきかな…。

田畑 結城

下手に人数が多くても
逆に迷惑になることもある。

佐藤 紘

まともなこと言ってる!!!

宮代 奈々子

そもそも、アンタがぶつかって…。

斑 洋二

知るか。

宮代 奈々子

あのねぇ。

斑 洋二

なんだよ。

佐藤 紘

あぁ、なにやら不穏な…。

田畑 結城

君達やめないか!

宮代 奈々子

…………。

斑 洋二

………ちっ。





一連のことを見ていたわけではなかったが、どうやらメガネの女子に不良っぽい男子がぶつかったようで、その際に落としたシチューの食器が割れた音だった。


田畑さんの一喝(?)で、二人はもめずに離れていったものの、どうにも空気が悪い。


あの二人の怒鳴り声や態度から、この監禁(?)状態へ対する不満、焦りや苛立ちといったものが、皆込み上げてきた頃なのかもしれない。


辺りが静まり、カチンと食器を鳴らす音ばかりが、広い食堂に響く。





羽鳥 弘継

枕がなくてお先まっくら!




辺りが静かになり、5分も経っていない間合いだった。

一瞬辺りがざわついたが、すぐに静かになり、声の主へと視線が集まる。


羽鳥 弘継

もぐもぐ…。




が、案の定…羽鳥さんは何事もなかったかのように食事をしている。


佐藤 紘

こ、この人…寒い!!!

田畑 結城

ぷっ…ははははっ!!!

田畑 結城

ひっ…息が…ははっ…。

佐藤 紘

まさかの一人大爆笑。

佐藤 紘

……空気を取り持ってくれたのかな。

西園寺 詩乃

私も…とっておきのが…

西園寺 詩乃

布団がふっとんだ。

シ~ン

佐藤 紘

定番すぎて寒!!!!

田畑 結城

なんだそれは、ふっはははっ。

佐藤 紘

またもや一名爆笑。

千堂 旭飛

…皆、今日はもう床につく。
おやすみ。
部屋は一番奥の部屋を使わせてもらう。

佐藤 紘

あれ…。
随分早いな…。
あれ…そういえば何時なんだろう?

田畑 結城

あっちに時計がある。
どうやら午後8時13分みたいだ!

佐藤 紘

もうナチュラルに心読むなコイツ。

西園寺 詩乃

あ、じゃあ…
女子は皆でお風呂いこー!

七海 秋人

 お ふ ろ 

工藤 陽景

男子は…
一日くらい入らなくてもいいよね。
(絆創膏貼りなおすの勿体ないし)

田畑 結城

なら、今日は解散でいいな!
皆…絶対に朝の5時にここに…

佐藤 紘

はやい!……です。

田畑 結城

冗談だ☆
朝の10時には集まろう。






こうして僕たちは解散することとなり、男子たちは有無を言わさずに各部屋…もしくは談話室へまとまることとなった。


一部、抜け出そうとした者もいたが、どうやら皆捕まったらしい。


恐ろしいことに田畑さんは陸上と掛け持ちしているらしく、その足は見事な速さだった。








そして無事に女子たちが風呂から戻り、本当の意味で解散となる。

しかし僕は、そのとき…羽鳥さんに呼ばれた。

皆が寝静まった頃に来るようにと。









4話 眠りの茨姫 完

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