大勢と合流したものの
上手く皆で話をすることは難しく
僕らは別室へ移動することとなった。



先輩方の訳のわからないノリによって
散々逃してきた質問をここぞとした。


どうやら僕らは本当に閉じ込められたらしい。

電話はもちろん
インターネット等の電波自体が届かない。



話ができる者から聞いた話だと
ある者は散歩に
ある者は健康のために
ある者は飼い犬を弔うために


僕は学校行事(参加任意)の最中迷子に



皆、山へ訪れた最中に遭難したのだと言う。







そして皆、演劇部
もしくはそれに関わる者。


僕もまた…
演劇部の台本を書いている文学部の人間だ。


そして皆の格好について。
彼らはここで目覚めた際に格好が変わったようだ。

僕や西園寺先輩など
格好が変わっていない者も少なくないようだ。




いったい誰が、なんのため。



わかったことは一つだけ


仮装のような人達が着ているのは
近日の公演衣装であるということだった。







千堂 旭飛

しかし、驚いた。
洋館かと思っていたら和室もあるとは。

西園寺 詩乃

本当ね。
私、和室好きなのよ。

羽鳥 弘継

………。

田畑 結城

弘継も気に入ったか!

佐藤 紘

和室は落ち着きますよね。

佐藤 紘

今聞きたいことは一通り聞いた。
けれど、疑問が拭えないことも多い。

千堂 旭飛

それで、本題へ入るけど…。
窓や扉…開かない状態なのは話したな?
だが、食糧が多く蓄えられている。

千堂 旭飛

そして、住むに苦労しない設備。

千堂 旭飛

調理場、一人一部屋、書庫
風呂、食堂、洗濯室、お手洗い
焼却炉、生活用品を基調にした倉庫…等

西園寺 詩乃

私たちに暮らせっていうの?

西園寺 詩乃

なら
新鮮な山の幸を置いときなさいよ!

佐藤 紘

そういう問題…?

田畑 結城

しかし、いずれ尽きる…。

西園寺 詩乃

そうなったら自給自足ね!

千堂 旭飛

それは…まず
ここから出ないといけないだろう。

佐藤 紘

まず
ここを出る方法を考えましょうか。

田畑 結城

窓は割ってみたか?

千堂 旭飛

……割れる様子はない。

佐藤 紘

割れたらとっくに出てる…か。

羽鳥 弘継

…………まるで、物語だな。

佐藤 紘

え?

田畑 結城

弘継
言いたいことがあるなら言え。

羽鳥 弘継

………ここに集められたのは
早い話、役者と物語を紡ぐ者。

羽鳥 弘継

わざわざ衣装まで用意されている。
だとすれば…目的だけは推測ができる。

佐藤 紘

目的なんてあるのかな…。

羽鳥 弘継

それが何…とは言わないけどな。

佐藤 紘

言えよ!!!!

田畑 結城

わからないんじゃないか?

西園寺 詩乃

もう、弘継…。
素直に言わないとダメじゃない。

佐藤 紘

なにこの空気。

千堂 旭飛

……とりあえず…。

千堂 旭飛

俺達に何かさせよう…
そう思ってる…ということでいいか。

羽鳥 弘継

こくっ

羽鳥 弘継

話がズレたな
ここを出る話に戻そう。

西園寺 詩乃

出る方法が見つからなかったら
諦めることにしましょう!

佐藤 紘

いやいやいやいや…

千堂 旭飛

まぁ、出る方法を探す。
今後の方針は…結局これだろう。

田畑 結城

それもそうだね。
出てしまえば、犯人の目的なんて関係ない!

佐藤 紘

いや、気になるよ!!!

千堂 旭飛

ある程度、役割は分担しよう。
女子には食事などの家事を…。
俺たち男は分散して、脱出の糸口を。

佐藤 紘

千堂さん
スルースキル上がってるなぁ

西園寺 詩乃

なら、私が夕飯作るわね。
全員分は多いから…
広間から何人か誘って作るわ。

田畑 結城

俺は…風呂を見てこよう。

千堂 旭飛

佐藤くんはどうする?

佐藤 紘

あぁ、じゃあ…
僕は…書庫にでも行って来ます。

羽鳥 弘継

俺も同行しよう。

千堂 旭飛

そうか。
なら、俺は田畑についていこう。
他の場所へは他の人へ声をかけておこう。

佐藤 紘

千堂さん、そっちに行っちゃうのか。
少し残念…。

佐藤 紘

しかし羽鳥さんと同行…か。
ときどき何考えてるのか…。

西園寺 詩乃

はい、かいさーん!







こうして僕たちはそれぞれ別々に行動した。


西園寺さんは食事の準備を。
千堂さんと田畑さんはお風呂……を。
僕と羽鳥さんは書庫を。




佐藤 紘

うわぁ…随分大きい書庫ですね!

羽鳥 弘継

………そうだな。
ところで…ずっと聞きたいことがあった。

佐藤 紘

聞きたいこと…ですか?

羽鳥 弘継

そうだ。
君は…どんな脚本を書いてきたのか。

佐藤 紘

あぁ、なるほど。
羽鳥さんもお書きになられるんでしたね。

羽鳥 弘継

………あぁ、同業者だからこそ。
他者の書いたものに興味がある。

佐藤 紘

そうですね、最近だと…
柘榴の棘というオリジナルのものを…。

羽鳥 弘継

オリジナル…内容は?

佐藤 紘

とある一家の話で
その一家の次男の書生が主人公なんですが…




僕は僕が紡いだ話を教えた。



とある一家の次男の話。
彼は誰からも頼られる人だった。

兄や姉、父や母、妹や弟
友人や親せきにまでも頼られる逸材だ。

だが、ある日…とある烏がそそのかした。


頼られているのではなく利用だよ、と。


だが書生は「それは違う」と言い返し去った。






佐藤 紘

まだまだ勉強中の身なので…
浅はかな内容ではありますが…

佐藤 紘

これが最近書いたものです。

羽鳥 弘継

……………。

佐藤 紘

お気に…召しませんでした?

羽鳥 弘継

あ、いや…少し考えごとを。

羽鳥 弘継

その書生とは…まさに

佐藤 紘

はい。
千堂さんが演じてくださるみたいです。

佐藤 紘

まだ続きはありますが…

羽鳥 弘継

そろそろ、探索も始めようか。

佐藤 紘

ですよね。








羽鳥 弘継さん

田畑さんが言うよりもずっと口数が多い。


そんな彼と書庫を探索するも
気になる本を見つけては読みふけり…
そうこうしているうちに
他の探索メンバー達が終わりを告げにきた。



結果として、雑談と読書で終わった。












羽鳥さんはどういう脚本を書くのだろう?















3話 脚本家 完

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