4月19日

近所のドーナツ屋さんで新作メニューが始まったらしい。
こういうの、にーの喜ぶんじゃないかな?
と、昼休みに誘うと案の定だった。

犬伊

にーの、一日中楽しみにしてたね

新乃

・・・

今日はにーのにとって長い一日だったに違いない。
ようやく訪れた放課後、店の前で早く入りたいとウズウズしている。

扉を開けると小気味良いベルの音が鳴った。
木造の建物で、暖かみのある明かりで落ち着く空間が広がっていた。

雨ケ谷

いらっしゃいませ、奥の席へどうぞ

店の奥にはカウンターがあり、店員の人が声をかけてくる。
他にお客さんはいないらしく、俺たちは窓際の席に座る。

席に座ると店員さんが、お手拭きと水、メニューを持ってきてくれた。
ドーナツ屋さんに来たつもりだったけど、普通に喫茶店だったのかな。

そう思ってメニューを開くと、見開き一面刷りのメニュー表にはいろんな種類のドーナツの写真が表示されてた。

雨ケ谷

テイクアウトもできますよ
食べていかれるのでしたら、ドリンクセットがおすすめです

犬伊

すごいですね、こんなドーナツ屋さん初めてです

雨ケ谷

最近オープンしたばかりなんですよ
私自身、ドーナツが好きでお店を持つのが夢でしたので

犬伊

そうなんですね
あ、にーのもう決めた?

新乃

・・・

にーのは早くドーナツが食べたいらしく、メニューのドーナツを指差した。

犬伊

じゃあドリンクセットで、にーのはこれとこれね?
俺は・・・これとこれでお願いします

雨ケ谷

かしこまりました
セットの飲み物は何にいたしますか?

犬伊

俺はコーヒーで
にーのは?

新乃

・・・

にーのが指差したのはオレンジジュースだった。

雨ケ谷

かしこまりました
今お持ちしますね

店員さんはクスッと笑うと、カウンターに戻っていった。
オレンジジュースを選ぶんだもの、にーのって本当に甘い物が好きなんだな。

雨ケ谷

お待たせいたしました
こちらお先に、オレンジジュースとショコラ、もちもちドーナツです

雨ケ谷

こちらコーヒー、クルーラー、クリームドーナッツです
ごゆっくりどうぞ

それぞれ二個ずつのドーナツと飲み物が置かれる。
特段甘い物を好んで食べるわけじゃないから、ドーナツなんて久しぶりだった。

犬伊

いただきまーす

新乃

・・・

俺が手を合わせると、にーのも手を合わせて食べ始める。

新乃

・・・

幸せを噛み締めるように頬張るにーの。
それにつられて、俺も一口、クリーム入りのパンのようなドーナツを食べる。
口いっぱいに広がるくどすぎない甘さに、にーのの気持ちがわかる気がした。
これは確かに美味しい。

犬伊

美味しいな

新乃

・・・

犬伊

にーのの美味しそう、一口ちょうだい

新乃

・・・

もちもちと弾力のあるドーナツを食べるにーの。
見てると美味しそうで、俺はにーのの食べる反対側にかじりついた。

犬伊

こっちも美味しいな
俺のも食べる?

新乃

・・・

俺が言うや否や、お返しと言わんばかりに俺のドーナツにかじりつく。
ドーナツだけじゃない、甘いのごちそうさまでした。

つづく

犬伊の部活が始まります。

雨ケ谷

またのお越しをお待ちしております

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