* * *
ー クルナ近海 ー
* * *
シーラさん御一行が
港町ズールを旅立ってから10日。
定期船の目的地である港町クルナに
もう間もなく到着します。
おい、コボルト!
ライルです!
お、悪かったな。
もうすぐ着く街…クルナとその先のレヴスにいる間はこの麻袋に隠れていてくれないか?
???
なんでですか?
ちょっとな。
クルナは異形の者に過剰反応する気質のやつが多くてな…。
わかりました……。
では、その隠れている間はシーラ様の事よろしくお願いします。
あぁ、任せとけって。
港町クルナ・招かれざる客
* * *
ー 港町クルナ ー
* * *
着いたな。
お前さん達、気をつけろよ?
この街は……。
あぁ、大丈夫、心得ている。
?
ホントかぁ?
お前さん達はなんにも知らねぇからなぁ……。
あ!
スタスタスタ……
ズールの乗船券販売所にいた
身なりの良い女の人を見つけたシーラさん。
航海の無事を共有したく話しかけます。
良かったですね、無事予定通りにつけて。
ゲェ!!!
!!!
ダメだ!
シーラ!
……無礼者。
え?
身なりの良い女の人は
突然、懐から短剣を取り出して
シーラさんを斬りつけてきました。
危ない!シーラ!
きゃっ!
ぐッ…。
間一髪、ポメラさんがシーラさんに跳びかかり
短剣を避けることができました。
このまま続けるというなら、アタシが相手をするぜ?
……フン。
……覚えておれ……。
スタスタ
シーラよ、この街クルナは特権階級の者共による『斬り捨て御免』が許されている危険な街なのだ。
特権階級のヤツラは他の街でしおらしくしてて、この街に入った瞬間に人が変わったように凶暴になるんだ。
なぜそんな事が……。
くっ
ポメラさんの左腕から血が滴っています。
ポメラ!?
大丈夫、かすり傷だ。
……思ったより深いな……。
わしの回復呪文ややくそうでは傷がふさげん……。
それでは、私がヒーラーを喚びます!
それはいかん!
なぜですか?
とりあえず、宿を取ろう。
ここで話すには色々問題がある。
* * *
クルナの宿屋で部屋をとった
シーラさん御一行。
部屋を締め切って
ポメラさんの治療が行われます。
ヒール!
助かったぜ、傷が塞がった。
ありがとう、ドライアド。
またいつでもお喚びください
……さて
と切り出すソルフェージュさん。
順を追って話すとしよう。
……魔王アインスターク。
この名は知っておるな?
はい。勇くんとソルフェージュ様達が対峙した3年前の魔王です。
うむ。
アインスタークは自らの領土を広げるという形で侵略をしていった。
それは世界の北側から順に進められた。
まず最初に占領されたのは、これから向かう『最北の街レヴス』。
そして、次に占領されたのが、ここ『港町クルナ』だ。
クルナは魔王アインスタークのお膝元として機能する街だった。
そうなんですね……。
その際にアインスタークは破壊ではなく支配にこだわり、人心操作を展開しこの街を支配下に置こうとした。
しかし、この地の者らもただ言いなりになるわけではなく、彼らなりの戦いをしたのだ。
特に特権階級の者共はアインスタークの要求をうまく折衝して無理のない範囲で飲み込み、この街はアインスタークの配下になることを選んのだ。
つまり特権階級の者共は結果としてこの街を破滅から救った英雄なのだ。
さっきみたいな身なりのいいヤツなんかは、大体特権階級のヤツラなんだ。
……特権階級。
そして、その時にアインスタークからの要求できた統治法の1つが治安目的での『斬り捨て御免』だ。
領地外からの来た者が不穏な動きを見せた場合、特権階級の者共が問答無用で切り捨てる事ができるというものだ。
『切り捨て御免』が無理のない要求!?
素っ頓狂な声を上げるシーラさん。
驚きの顔が隠せません。
アインスタークは
一部の人間に権利を与えつつ、
その結果として手駒の様に
動くようにしていった。
要所要所で暴力を見せることで
効率的に支配。
アインスタークは
このやり方を好んだのだ。
でも……。
アインスタークは滅んだのに
なぜまだ『斬り捨て御免』なんてのが
残ってるのですか?
元々特権階級という特殊な位置にいた者共だ。彼らにとっても都合が良かったのだろう。
故にアインスターク亡き今も、治安目的の『斬り捨て御免』は生き続けており、事を知らず迂闊に話しかけた旅行者が凶刃に倒れる事件も跡を絶たないのだ。
なんてことなの……。
良いかシーラよ。
そなたもアルザレアの血を引く王女である以上、これから言う名を覚えておく必要がある。
その名は『領主ムーンドルバ』!
そして、領主ムーンドルバを筆頭とする特権階級の一族、『アンゲドルバ』だ!
アンゲ……ドルバ……。
アンゲドルバ一族の統率による影響力はアルザレア王も一目置く程だ。
アルザレアとムーンドルバの名をそれぞれとって航路にドルバザレアなんて名前が海に付いちまうほどだからな。
だからって……『斬り捨て御免』なんてことがあっていいの?
ただ、勘違いしてほしくないのは、アンゲドルバは元々そう言った卑劣な一族というわけではないという点だ。
特に前領主である『ディゾネドルバ』は
領民を大切にするその政治手腕から
それこそ『太陽侯』と呼ばれるほど
領民たちに慕われておった程だ。
ディゾネドルバ……。
ディゾネ……。
もしかして、ディゾネおじさんの事かしら!?
太陽公の事だ。
アルザレアと親睦を深めていても
おかしくない。
幼いころに面識でもあるのだろう。
はい。
小さい頃、お城の晩餐会に
よくいらしてました。
* * *
ディゾネおじちゃん、おもしろ~い。
はっはっはっ。
シーラ姫は実に可愛いのう。
そしてなんと聡明な。
太陽公よ、あまり甘やかさんでくれ。
わがままになってしまう。
なぁに、大丈夫さ。
シーラ姫はお父様の話しを
ちゃんと聞けますよね?
うん。
* * *
ディゾネおじさん……。
もう何年も前の事なのね……。
一方の現領主のムーンドルバは、権力を振りかざし、横暴さが目に余る。
そういった気質の持ち主だ。
奴にとって『斬り捨て御免』は実に良い統治法だったのだろう。
当然のごとく、ムーンドルバは領民からは疎ましがられておる。
一部ではその名を揶揄して『夜月侯』と呼んでるヤツもいるんだぜ。
とはいえ、アインスターク侵攻時には領民を守った実績があるので、領民は頭が上がらないのが現実なのだ。
『斬り捨て御免』が健在なのは、
そういった裏事情があるからなのですね。
この街に関してはもう一つある。
この街は魔物による長き支配により、魔物に対する嫌悪感は尋常ではない。それは召喚魔法で喚び出される者もしかり。
それで、外でヒーラーを喚んではまずかったのですね。
ひょこっ!
なるほど。
だから僕はここに入っていないと
いけないのですか。
そうだ。
理由はわかりました。でも……。
ライルさんは不服そうに続けます。
ポメラさん、しっかりしてくださいよ。
シーラ様をお守りしていただく約束じゃないですか!
うっ……。
面目ない、コボルト。
ライルです!
やめて、ライル。
ポメラだって私をかばって怪我をしたのよ?
それはわかっております。
……しかし。
私の役目はシーラ様の事を命をかけてお守りする事。
その代役をポメラさんにお願いしたのですから、それを守っていただかなければ意味がありません。
もし無理だというのなら、私は麻袋の外に出てシーラ様をお守りします。
もちろん、シーラ様にご迷惑をかけぬよう、人目につかない物陰から。
……ライル……。
………。
ライルさんの言葉を聞いたポメラさんは、
ふー、と深い息をついたあと、
神妙な顔をして話し出します。
……悪かった…。ライル。
どうやらあたしはアンタの事を
過小評価していたようだ。
もう一度言わせてくれ。
『あたしにまかせろ!』
はい!
かしこまりました。
……。
ふふふ。
さて、久しぶりの地上だ。
船旅の疲れを取るためにも、
今日はゆっくり休むとしよう。
港町クルナへと到着した日。
それは
ライルさんとポメラさんの絆が
深まった日でした。
ディゾネおじさん……。
『前』って事は、もう亡くなられて
しまったって事なのよね。
もう一度、会いたかったな……。
つづく
【勇者勇の装備】
レベル :17
めいせい :155
ぶき :新品の短剣
よろい :鋼鉄のよろい
かぶと :銀の額当て
たて :なし
どうぐ :野ばらのペンダント
焼豚×2
焼きとり×2
淡水ザメの煮凝り
淡水ザメの骨
淡水ザメの牙
黒王の羽
いつもの額当て
王の冠
カジノコイン×2560
なかま :もふもふ
とくぎ :ファイアブレス
トキシックブレス
釣り
じょうたい:カジノ破壊の容疑者、森林を進行中
【シーラの装備】
レベル :11
めいせい :170
ぶき :いつもの本
よろい :いつもの服
かぶと :いつもの飾り
たて :なし
どうぐ :やくそう×94
イーサ薬×9
おみやげ×99
ガラスの破片
なかま :戦士ポメラ
大魔導ソルフェージュ
コボルト
とくぎ :しょうかん
値切り
冷やかし
虫の知らせ
ディゾネの思い出
じょうたい:パーティーリーダー