いたか?
いや、こっちはいない!
よし、あっちだ!
……。
時折街道を往来する
ヨーコソの自警団と思われる人々。
勇者様が見つからないように
ツギノの街を目指すには
木の影に身を潜めながら、
森の中を進むしかありません。
到着するのはいつの事でしょうか。
海上の檻
* * *
ドルバザレア洋上
* * *
……という予定で行こうと思う。
……だな。アタシも賛成だ。
うわっ!やられたー!!!
定期船上で大声が木霊します。
!!
!!
なんだ?どうしたんだ?
……木霊?
食料袋に穴が空いてやがる。
きっとウミネズミが入りこんだんだ!
……マズイな。
このまま放置すると食料が目減りするどころか、ヤツラの体についている病原菌が伝染病を引き起こしちまう……。
……やだ、怖い……。
おいおい、俺達生きて目的地へ着けるんだろうな……
にわかに船上がどよめきます。
……ソルフェージュ様。
うむ、そうだな。
よし、いっちょネズミ退治だ。
しかし、どうしたものか。
闇雲に探しまわっても出てこないだろうしなぁ……。
天敵でもいれば……。
ネズミの天敵……。
これね!
業に身を焦がしし者よ
その罪を恐るるなかれ
いでよ、シーフ・キャット!
シーラ様、お呼びですかニャ?
喚び出されたのは
久しぶりのシャルミラさんです。
よく来てくれたわ、シャルミラ。
シャルミラはネズミは好きかしら?
ネズミですかニャ?
この世から根絶したいほど大嫌いですニャ!
……ちょっと想定と違ったけどいいかしら……。
シャルミラ、実はこの船に……
この船に?
ウミネズミが入り込んでしまったらしいの。
ニャーーーーー!んですと―!
お願い、この船のウミネズミを根絶してくれるかしら。
……根絶……。
するニャ!するニャ!
今すぐするニャ!
やや興奮気味のシャルミラさん。
果たして大丈夫でしょうか。
どこニャ……、どこニャ……
耳を立ててウミネズミの音を探す
シャルミラさん。
その目はいつもと違い、
血走っています。
!!!
そこニャ!
そー……
船室脇に並べて置かれた空樽に
視線を向けると、
抜き足差し足忍び足で向かっていきます。
空樽のすぐそばまで行くと、
ニャッ!
という声と共に
空樽の一つを甲板側へと倒します。
すると、船室と空樽にはウミネズミに
開けられた穴がありました。
ニャーーーー!
とシャルミラさんが唸るやいなや、
空樽の底面を船室の穴へと
勢い良く押し付けます。
これで船室側の穴は塞がれました。
勢い良く押し付けられた衝撃で、
空樽の穴からウミネズミ達が
ゾロゾロと猛ダッシュで逃げ出してきました。
逃がさんニャー!
がんばってー!
シーラはスクワイヤ使いが荒いな……。
シャルミラさんは猛スピードで
ウミネズミを追いかけます。
追い回されたウミネズミ達は
器用にマストを登って行きました。
シャルミラさんも負けずにマストを登ります。
……フーッ!フーッ!
追い詰めたニャ!
シャルミラさんがマスト上で
ウミネズミ達を追い詰めました。
しかし、何を思ったかウミネズミ達は
順に宙へ向かって飛び出したかと思うと、
前肢・後肢を大きく広げました。
すると、前肢・後肢の間の飛膜が大きく広がり、
ウミネズミ達は
飛膜に風を受けて空を滑空します。
ニャー!逃げる気かニャ!
うぉ、ウミネズミって空飛べるのか!
そのまま船外へと逃げようとする
ウミネズミ達。
ところが……
まるで見えない何かに衝突したかのように
弾けて次々と落下してきました。
!?
なんだ?
何が起こったんだ?
やったぞ!捕獲して麻袋に入れろ!!
……?
しばらくして、ハッとするシーラさん。
!!!
結界だわ!
なんだって?
さっき、船員さんが叫んだ時、この海のど真ん中なのに叫び声が木霊したの。
おかしいと思ったんだけど、今はっきりしたわ。
それはマズイ!
一旦口をふさげ!
間に合え!
エア・マスクス!
しゅうぅぅぅぅ
来たっ!
やはりガス攻撃か……。
間一髪だったな。
だが、乗客全員までは……。
あぁぁ……おなかへったぁ……。
めしめしめし……。
ニャー……、おなかへったニャ……
食料庫ぉぉぉ……。
ガスを吸ってしまった乗員・乗客らは
うつろな目をしてうわ言のように
空腹を訴え始めました。
その徘徊する姿はまるでゾンビのよう。
よりによってハンガーミストか……。
船上だというのになんという卑劣な……。
海上の檻に囚われてしまった、
定期船の乗員・乗客。
このままでは餓死の道しか残されていません。
どいつが詠唱者だ?
詠唱者がいるとも限らん。
遅延反応を利用した薬袋による結界の可能性もありうる。
……なんとなくですけど……。
ズール港の時と手口が似てますね……。
……だな。
あの時からここまでを含めて相手の手口のようだ。
しかし、船上は広いぞ。
薬袋を見つける前に食料をめぐって暴動となるやもしれん。
なら、ガスを無害化するだけだな。
ふむ。
……でも、どうやって。
結界は船上だけのようだ。
この穴からなら結界外に電気を逃がせられるな。
ソルフェージュさんは船のへりの所々にある
小さな穴を見ながらいいました。
電解だな。
うむ
ポメラさんはジャキッと
背中に背負った斧を抜き、
カチッとダイヤルを
黄色いエンブレムに合わせます。
同列で撃つと乗客巻き込んじまうな……。
良いぞ、ポメラ。
行くぜ!
ソルフェージュさんがそう言うと
ポメラさんはマストの方へと猛ダッシュ。
マストの手前で甲板を蹴り
三角飛びで宙に舞い上がります。
そして、空中で構えた斧を振りかぶり……
霊光滅魔戦斧
《れいこうめつませんぷ》!
と斧を水平に一振り。
その瞬間、網のような稲妻が
人々の頭上を走ります。
キャッ
一方のソルフェージュさんは、
右手をポメラさん、
左手を船べりの穴へと向けて構えて
接地避雷(アース)!
と叫びます。
すると、ポメラさんが放った電撃は
ソルフェージュさんの右手へと集まり、
左手から穴を通して海へと放たれました。
ズバアァァァン!!
稲妻が船上を通ったあとの空気は
ガスが充満する前以上に
清々しい空気になりました。
そして……。
あれ?
あら、あたしったらはしたない……。
ニャ?私は今まで何をしてたんだニャ?
乗員・乗客も正気を取り戻しました。
* * *
お、あったあった。
ガスの濃度が強い発生元は
一瞬の雷撃の誘電で焼け焦げていました。
もうガスは出ないな。あとは……。
船首と船尾に結界もあったぞ。
やはり薬袋によるものだ。
……でも。
……一体誰がこんな事を……。
……。
ウミネズミと謎の結界攻撃を退けた
シーラさん御一行。
危うくあの臆病な船員さんの
予言通りになるところでした。
果たして、目的地まで食料はもつのでしょうか?
つづく
【勇者勇の装備】
レベル :17
めいせい :155
ぶき :新品の短剣
よろい :鋼鉄のよろい
かぶと :銀の額当て
たて :なし
どうぐ :野ばらのペンダント
焼豚×2
焼きとり×2
淡水ザメの煮凝り
淡水ザメの骨
淡水ザメの牙
黒王の羽
いつもの額当て
王の冠
カジノコイン×2560
なかま :もふもふ
とくぎ :ファイアブレス
トキシックブレス
釣り
じょうたい:カジノ破壊の容疑者、逃亡者
【シーラの装備】
レベル :11
めいせい :170
ぶき :いつもの本
よろい :いつもの服
かぶと :いつもの飾り
たて :なし
どうぐ :やくそう×95
イーサ薬×9
乗船券×4
おみやげ×99
ガラスの破片
なかま :戦士ポメラ
大魔導ソルフェージュ
コボルト
とくぎ :しょうかん
値切り
冷やかし
虫の知らせ
じょうたい:パーティーリーダー、航海中