■賞選考結果とネット小説書籍化の不一致

 賞選考情報のデマや下読み制度が機能していないことを話しましたが、誤解をされる危険もあるため、補足話をこれからします。
 また、先ほどの下読みのデタラメさは、証拠に基づく事実であり私的見解ではないですが、今回の話には私的見解が入っています。というより、特に断りがない限りは、私的見解なのは当たり前です。

 さて本題。
 下読みの選考が機能してなかったとしても、そのことと『ネットでは読者に支持されるものが賞選考では評価されない』ことは、同じ苦言になりません。
 あるいは書籍化の際に大幅に改稿されることがありますが、それは編集が無能だと言えるものではありません。(改稿されることに不満を持つ読者もいるので、こう記しました。)
 ネット小説での人気作と同程度に『読者受けする』『売れる要素のある』作品は、星の数ほどあります。賞選考に送られ落選したものに山のように埋もれていますし、もっといえば、ネット小説サイト内にも埋もれています。この状態で、予備知識なく人気ネット小説を賞選考で通過させることなど不可能です。
 強調しておきますが、技術に優れているかとか玄人ぶった話ではなく、商売の上で同価値のものということです。

 ではなぜネット小説書籍化はしうるのか。
 読者がいるという実績や知名度、つまりは宣伝にコストがかからないからです。
 宣伝において、『こんなに売れています』という宣伝が最も効果的なのですが、それを実際に売る前にできるのが、ネット小説です。そして実績――買ってくれる可能性の高い読者がすでについています。
 営業職の人が転職する際、『これだけ顧客を持っています』という人と、『能力はあるので頑張ります』という人では、どちらが採用されるか、わかりきった話です。

賞選考結果とネット小説書籍化の不一致

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