木下遥香
私が思うに、うちの高校でいちばん可愛いと思う女の子だ。
柔らかそうな髪の毛、丸くて黒目が大きい瞳、甘いマスク。
男女ともに人気があって、私も話してみたいと思っていたのに。
木下遥香
私が思うに、うちの高校でいちばん可愛いと思う女の子だ。
柔らかそうな髪の毛、丸くて黒目が大きい瞳、甘いマスク。
男女ともに人気があって、私も話してみたいと思っていたのに。
私、もう、ダメかもしれない。
なんで?
敵視、されたよね。
ここに来るってことは、木下さんもソーイウことなんですか?
あんな可愛い子まで、渡くんの、その、あれ、なのか。
んー。あの子は違うかな。
え、そうなの?
あの子はそんなんじゃないよ、と、
そんな風に渡くんは笑った。
それがどうも切なげに見えたのはどうしてなのだろう。
渡くんは、…木下さんが好きなの?
へ?
いや、なんとなくなんだけど。
そんな気がしなくもなかったから。
すると彼は、
いや、全然違う。
わざとヘラヘラしたように否定をした。
あの子は幼馴染。保育園のときから一緒で、家まで徒歩15歩くらい。んな目で見たことないよ、お互い。
ないない、やめてよ。
そう言って渡くんは手をヒラリと振って見せた。
そういえば、木下さんには彼女と同じクラスに彼氏がいたんだっけ。
全く関わりのない私でも知っているような美男美女カップル。
あの子はね、俺が屋上にいるの知ってて注意しにくるの。変なことやめろって。
ま、無理だけどねそんなの。あいつの言葉に効力なんてないよ。ああでも、これからはそんな使い方しないかな。
不意に合わさる視線はきっと渡くんの武器。
青木さんと一緒に過ごすからね。
青木さん、と丁寧な低めの声がだだ甘くてゾクリと開いた。
でも、
ごめんね、私なんかと関わったせいで。渡くんにも渡くんのファンにも…。
私にとっては、出会い系で出会ってしまったただのクラスメイトなのだから。
なあに、それ。まるで俺と一緒にいるのが不満みたいな言い方するんだ。
不満だなんて、
と言いかけて、
佐藤とのお昼の時間を奪われたことや、女の子たちからやっかまれることを考えて、やはり不満だと思い直す。
でもやっぱりさ、木下さんは渡くんのこと好きなのかもよ。私のこと睨んでたもん。
不満そうな声色と、
関係を持っているかのような対応。
17年間女子として生きて来た私の、間にしか過ぎないけれど。
でも、放課後、って。
放課後に約束しちゃうほど、なんでしょう?
と私が言うと、
ああ、あの子、彼氏が一緒に帰れない日は俺と帰ってんの。家近いから送ってあげるってだけの俺の優しさ。
彼氏と俺の仲の良さ。わかった?と渡くんは息を吐いた。
そうなのね。
もしかして、俺のことが気になってんの?
渡くんのその挑発的な言葉には、
それだけは、ないよ。
と、本心で返した。
だと思った。やっぱり可愛いね、青木さんは。
からかわれることには、少しずつ慣れてきているのかもしれない。