次の日のお昼やすみ。
当たり前のように佐藤の元に行こうとした私を、
何をしているの?と簡単に捕まえた渡くん。
それでもお昼は誘ってくださるんですね…。
次の日のお昼やすみ。
当たり前のように佐藤の元に行こうとした私を、
何をしているの?と簡単に捕まえた渡くん。
これからは一緒にって、約束したじゃん。
渡くんと屋上に向かう私の立ち位置は、
みんなが狙っているところなのに。
ん?
…んで、私を構うの?
身体目当てではないことは、もう知っている。
クラスメイトと屋上でお昼。かなり青春だと思わない?ダメかな。
くす、と笑いながら渡くんは昨日と同じ位置に座り、メロンパンの袋をあけた。
青木さん可愛いから。一緒にいたいなって。お昼くらい付き合ってよ。
渡くんの分かりやすい嘘が、私のことを大いに揶揄う。
似非っぽすぎる、テンプレが邪魔だ。
何の変哲もない平均女子高生を相手にすることにメリットなんてないはずなのに。
心配しなくても、私、リトさんのこと…誰にも言わないから大丈夫だよ。心配しなくても。
なんそれ。
へ…?口止めとかの意も込めて一緒にいるのなら、そんな必要はないよ。心配しなくても、私、誰にも話したりしないから。
私はいつものゼリーの蓋を開けながら、渡くんに言った。
なんそれ。
渡くん、失笑。
違うよ。口封じなんかさあ、しなくても、俺のことがバレちゃうってことは青木さんがって言うのとイコールなんだよ。青木さんはそんなに頭悪くないでしょう?
た、しかにだけど。
その通りだと思う。
彼のことを言ってしまうということは、自分のことを白状するのと同じこと。
だってさ、俺、青木さんのこと気に入っちゃったし。
何が、と聞こうとして、飲み込んだ。
そんな生意気なこと言えるわけがないと思う。
下手なキスとか、変に淡々とした対応。考え方とか。やり慣れてなんかいないくせに、出会い系サイトで年齢偽っちゃう頭とか。
他の女の子と、青木さんは違うでしょ?
うーん、?
ま、とりあえず俺はね、
ん、?
くすくすと笑いながら私に向き合う渡くんは、
俺は、と言って私の腕を引いた。
青木さんに、
渡くん、
渡くんがグンと私に近付き、耳打ちをした瞬間だった。
屋上の入り口、
古びた扉がキイと鳴って開いた。
あー、木下さん、どうしたの?
隣のクラスの女子、木下遥香さんだった。
渡くんが、気怠げな甘い声で木下さんに問うた。
すると木下さんは渡くんと私のことを交互に見て、目を丸くした後に少し苦いような顔を見せた。
…話したいことが、ある。
ふうん。それじゃ、放課後でいい?今はこの子と楽しんでいるからさ。
、
くん、と、渡くんは私を引っ張って、
それでもって木下さんに笑いかけた。
…うん、
気に食わない、
そんな顔をして、私のことを睨むような泣き出しそうな視線を向けて木下さんは屋上を後にした。
…渡くん、
んー、?
大丈夫なんですかね。
ゼリーを食べ終えたあとのカップをゴミ箱に捨てて、渡くんに尋ねる。
ああ、木下さん?
いや、そうじゃなくって。
木下さんに目をつけられるであろう、私の心配をしているのだけれど。