絵美が自宅へと帰って来た。
ただいま~。
絵美が自宅へと帰って来た。
家の奥の方から母親の返事が届く。
おかえり~。
絵美は家に帰ると、先ず自室へ行く。
そして制服から普段着へと着替える。
着替えを済ませた絵美はリビングへと向かった。
リビングでは絵美の母親が
麦茶を飲みながらテレビを見ている。
番組は夕方のニュース番組だった。
私も飲もう~っと。
絵美はそう言うと、
リビングの隣の台所へ行って麦茶を入れた。
そしてリビングに戻り、
母から見て右の側に座る。
あんた、今日は何処に
寄り道をしてきたの?
俊君チ。
俊君チって、あんた、まさか、変な事を
しているんじゃないでしょうね?
変な事はまだしていないよ。
まだって、あんた、
チューはしちゃったけど。
ふーん。
まあ、いいわ。
でね、夕飯の支度を始める前に、
ちょっと話があるんだけど、いいかな?
何?
今度の日曜日にね。
うん。
俊君がお父さんとお母さんに
紹介をして欲しいって
言っているんだけど。
あら、まぁ。
今時、珍しい子ね~。
でしょ~。
あんたは山ノ井君の親御さんとは
面識があるの?
うん。
お母さんとは、この間。
お父さんは俊君が小さい時に
事故で死んじゃったって。
あら、そうだったの。
俊君のお母さん、
とてもいい人だよ。
それで今度はウチの番って訳ね。
うん。
俊君ね。
うん。
親に隠れて付き合ったり
したくないって言うの。
本当に今時、珍しい。
天然記念物みたいな子ね。
親に隠れて付き合ったりすると、
親子の距離が
開いちゃうんじゃないかって。
そうかもしれないわね。
それで私が嬉しかったのがね。
うん。
親に知っていて貰えば、
私がお父さんに
何でも話せるんじゃないかって。
へぇ~。
そして私とお父さんに、
そういう関係でいて欲しいって、
言ってくれた事なんだ。
随分、しっかりした事を言う子だこと。
でしょ!?
私なんか、まだまだだな~って。
そりゃあ、ねぇ。
でも、そんなもんじゃないの!?
そうかな!?
だって、まだ高校生に
なったばかりじゃない。
うん。
山ノ井君の方が
生意気なだけだわよ。
お母さんからすると、
俊君は生意気なんだ。
でも、素敵な男の子じゃない。
うん。
日曜日が楽しみだわ。
お母さん、早く会ってみたいわ。
お母さんは、そう言ってくれると
思ったんだけど。
何!?
私、お父さんに紹介をするの、
ちょっと怖くて。
そうね。
だから、私、最初は、
お父さんに紹介をするのは
渋っていたんだけど。
ふふふ。
俊君が私の事を本当に大切に
してくれていると思ったから。
そうだね。
ちゃんと紹介をしなきゃ
いけないなって思ったんだけど。
うん。
お父さん、大丈夫かなって。
何が心配なの?
由佳はお父さんにばれて、
無理矢理に別れ
させられちゃった事があるから。
由佳ちゃんに、
そんな事があったのね。
だから、私はそうなったら、
嫌だと思うから。
大丈夫よ。
そう!?
確かに男親にとって、
女の子供というのは
特別だったりするから、
うん。
時には由佳ちゃんの
お父さんみたいに
厳しくなったりもしちゃうけど。
うん。
お父さんは解ってくれると思うよ。
そうかな!?
だって、山ノ井君、
絵美の話を聞いている限りじゃ、
とてもいい子じゃない。
うん。
それにいざとなったら、
お母さんが何とかしてあげるわよ。
本当!?
大丈夫。
お母さん、ありがとう~。
それじゃ、夕飯の支度をするわよ。
うん。
今日は何?
今日は筑前煮と蛸の唐揚げ、
それにもやしのサラダ。
そう言いながら、
絵美の母はリモコンでテレビを消し、
立ち上がって台所へ向かった。
了解~。
絵美もそう言って立ち上がり、台所へ行った。
そして二人は夕飯の支度を始める。
日が暮れるには、もう少し時間がかかる、
そんな夏の夕方だった。