私は帰路を歩きながら、大きなため息をついた。
吐いた息が白くなり、寒さが一層際立った。
コートのポケットに手をつっこみ、足を早める。
プログラマーの専門学校を卒業し、そのままIT業界へと足を踏み入れたのだが、やめておけばよかったと後悔することも多い。
特にここ数ヶ月は酷かった。
私が関わるプロジェクトは最初から厳しいスケジュールを組まされ、無理やり納品日に間に合わせる形となった。
結果、摘出される不具合の数々。
当たり前だ。
十分な試験も行えなかったのだから。
品質以前の問題だと憤怒する上司。
対応に追われ、残業の日々。
日付が変わる瞬間を会社で迎えるのが当たり前となっていたが、それもようやく落ち着いてきた。
会社の最寄駅で電車の到着を待つ。
ホームにぶら下がった時計は八時二十分を指していた。
今日は久しぶりに早く帰れる。
そのことをメールで琴葉に伝えた。
琴葉は、私の大好物である激辛ペペロンチーノを作って待っていると返信してくれた。
彼女の作るペペロンチーノは、本人が食べれないほどの辛さなのだ。