橘が本格的にゲーム開発へ参加してから、1年近く経過していた。初期の頃は僅かではあるものの、まだゲームをする余裕があった。しかし、開発が進むにつれてそんな余裕も無くなり、ゲームをするのも、約1年ぶりとなる。
ああ、橘君。
お疲れ様。
お疲れ様です。
いや、一時はどうなることかと思ったけれど、なんとか終わったね。
これも君のおかげだよ。
いえ、大したことは……。
いやいや、随分と気に入ってもらえたようだよ。
次の機会があれば、また君に参加してもらいたいとか。
それは……勘弁して下さい。
ははは。この一年、本当に忙しかったからねぇ。
僕ももう、できれば遠慮したいね。
何はともあれ、やっとゆっくりできるね。
僕は休みを貰って、家族で旅行にでも行こうと思うんだ。橘君は、何か予定とかあるかい?
特には考えてないですね。
じゃあ、僕も旅行なんか……。
……いや、久しぶりにゲームがやりたいですね。
そうか。強いねぇ。
僕はもう、暫くゲームなんて見たくないよ……。
それじゃあ僕は帰るよ。
はい、お疲れ様です。
もう、1年経つのか。
橘が本格的にゲーム開発へ参加してから、1年近く経過していた。初期の頃は僅かではあるものの、まだゲームをする余裕があった。しかし、開発が進むにつれてそんな余裕も無くなり、ゲームをするのも、約1年ぶりとなる。
本当に久しぶりだ。
1年も間が開いたんじゃ、皆には随分引き離されてるだろうな。
橘は、6号のようになったヤクルトを想像し、1人笑った。
しかし、その笑みはすぐに消えることとなる。
……おかしいな。
ゲームが起動しないぞ。
メンテナンスでもやってるのか?
タイミング悪いな……。
橘が公式サイトを確認しに行くと、見知ったサイトの代わりに、一枚絵が表示されただけの簡素なページに飛ばされた。
絵の中心には、サービス終了の文字があった。
サービス終了……?
- ネットゲームの終わり -
ネットゲームはプレイするための環境を提供する者(ゲームの運営会社等)が居なければ成立しない。
オンライン前提のゲームは基本的にオフラインでは動作しないため、ゲーム運営者がサービスの提供を続けられなくなってしまった場合、以降のゲームプレイはできなくなってしまう。
そんな馬鹿な……いつ終わったんだ?
サービス終了の日付は、もう2ヶ月も前だった。
終わったのか。
あまり人が多いゲームではなかったから、仕方無かったのかもな。
それよりも……。
ゲームの終了はショックだったものの、いつか終わるものだということは理解していた。それよりも気がかりだったのは、一緒にプレイした仲間のことだった。
まさかこの期間に終わるとは思っていなかったため、当然最後の挨拶などしていない。
橘は彼らについて、ゲーム内のこと以外は何も知らない。もはや、2度と会うことはないだろう。
それなりに、楽しくやってたんだがな。
あまりにもあっけない。最後なんて、こんなもんか……。
橘はただぼんやりと、PCの画面を眺めていた。