ジーク

こいつら、噂のレアモンスターか。
見るのは初めてだな。

かなり手強いらしいが。

ヤクルト

1度戦ったことがあるんですけど、実際強かったですよ。

レグルス

……なぁ、なんか変な奴居ないか?

 配置は前回と同じ左右に1体ずつ、正面に1体。

 左右のキノコは前回同様、緑色の傘をしているが、正面のキノコは赤色の傘を持ち、盾らしきものを構えていた。

レグルス

前回はあんなの居なかったよな。
レアのレアとか、そういうのか?

ヤクルト

どうなんでしょうか。
僕達のレベルは既に適正外ですから、高レベルのプレイヤー向けに、敵の編成が変わっているだけかもしれません。

ヤクルト

それより問題は、今の状態で勝てるのか、ということですよ。
さっきのボス戦で、全員消耗してしまっています。

レアモンスターのレベルは、こちらのレベルを元に決定されますから、さっきのボスよりも強力です。

ジーク

その上、既に体力は半分を切っている。

レグルス

最悪のタイミングで出てきやがったな。
もう街は目の前だってのに。

ヤクルト

どうしますか?
以前も言いましたが、レアモンスターからの逃走成功確率は100%なので、このまま無視してもいいですよ。

ジーク

私から特に希望はない。
君達に任せよう。

レグルス

クエストの対象じゃないし、俺達は既にカンストしてるからメリットも多くない。
無視した方が無難ではあるな。

レグルス

とはいえ、最後に逃げてクエストクリアってのも情けない話だ。

ヤクルト

ですね。

レグルス

前回の借りもあるしな。

ジーク

ここで負ければ、もっと情けないがな。

 前回同様、レグルスとヤクルトが左右の緑傘へ向き直る。その間、ジークは前方の赤傘を削りにかかった。

ジーク

む。

 炎が直撃する直前、赤傘は手に持った盾を掲げた。

 ジークの攻撃は、簡単に防がれてしまう。

レグルス

アイツ、待機中はガード状態になるようだな。

ヤクルト

かなりダメージが軽減されますね。正面から倒すのは無理そうです。

ジーク

……前のヤツは一先ず置いておく。先に左右を手伝おう。

 既に戦った相手ということで、2人は上手く死角に入るよう立ち回ることが出来た。ジークの加勢もあり、ダメージはほとんど受けていない。

レグルス

左右のヤツは後ろへの攻撃を持っていないんだよな。
背後に回れればこっちのもんだ。

ヤクルト

ただ、問題はアイツですね。

中央のキノコだけは、背後に回っても攻撃を受けます。残り体力は僕もレグルスさんも、良くて1, 2発分ってところですよ。

ジーク

私の耐久力では、あと1発も耐えられないだろうな。

レグルス

俺とヤクルトは、背後から攻撃すれば反撃を受ける。ジークに遠くから狙ってもらえば楽だと思ったんだが……あの位置取りじゃ無理だな。

 赤傘は、背後に障害物が来るように移動している。遠距離からの攻撃は障害物に遮られてしまう。
 背後から攻撃するためには、赤傘と障害物の隙間に潜りこむしか無いが、あの位置では密着するしか無い。つまり、赤傘の攻撃を受けてしまう。

ヤクルト

こっちに誘導できれば……。

ヤクルト

……ダメです。コイツもヘイト上昇スキルを無効化してくるようですね。

レグルス

となれば、横はどうだ?

ジーク

試してみよう。

 ジークが位置を取り、キノコの側面から狙う。しかし、前方からの攻撃同様、盾で防がれてしまう。

レグルス

横も守りの範囲か。
やっぱり後ろから狙うしか無いな。

レグルス

ジークはそのまま、大岩のそばに移動してくれ。
俺がソイツを引きずり出す。

ジーク

わかった。

 ジークは大岩の斜め後方へ、レグルスはキノコの真横へ、それぞれ位置についた。

 レグルスがキノコへ盾を打ち付け、大きく吹き飛ばす。背後の守りを失ったところに、ジークの魔法が浴びせられる。
 しかし、キノコはまだ余裕があるらしい。すぐに立ち直り、再び背後を固められてしまった。

ヤクルト

いい感じです。
流石に後ろは防げないようですね。

レグルス

だが、1発貰っちまった。
前回同様、素早さは相手の方が高いらしいな。

ヤクルト

本当に厄介な相手ですね。

見ましたか? ヤツは特殊な剣撃が使えるようです。攻撃しつつガードしてますよ。

レグルス

ずるいヤツだな。俺達はどちらか一方しか行動できないってのに。

レグルス

さて、俺はもう後が無い。
次はヤクルト頼む。

ヤクルト

わかりました。任せて下さい。

 レグルスの代わりにヤクルトが、先程と同じ位置につく。

 やはり行動はキノコの方が早く、ヤクルトも攻撃を受ける。とうとう全員追い込まれてしまった。

ヤクルト

……よし、耐えました。
今度はこっちの番ですよ。

 ヤクルトが大剣でキノコを吹き飛ばし、ジークが背後を狙う。
 2度目の攻撃も、狙い通り決まった。

レグルス

まずいな。

 僅かだが、赤傘の体力が残ってしまった。
 再び背後を固められ、3人の攻撃が封じられる。

ヤクルト

これは……困りましたね。
もう攻撃手段がありませんよ。

ジーク

このパーティに、ヤツより早く行動できる者はいない。遠距離攻撃も不可……詰みか?

ヤクルト

どうしましょう。逃げますか?

レグルス

ここまで来て逃げたくねぇなぁ。
何か方法は無いのか……。

 正面、左右の攻撃は無効化される。背後からなら攻撃が可能だが、こちらが攻撃する前に、赤傘の攻撃で倒されてしまうだろう。

 赤傘の体力も残り僅かだ。先に行動出来ることを祈って、背後から攻撃してみるべきだろうか?
 脳裏に、初めて敗北した時の思い出が蘇る。

レグルス

……いや、待てよ。
ジーク、戻ってきてくれ。

ジーク

? わかった。

 赤傘の対面に立つ形で、3人が揃う。

レグルス

俺がヤツの隙を作る。
合図したら、ここから攻撃してくれ。

ジーク

正面からか?

レグルス

ああ。ここでいい。

ジーク

わかった。やってみよう。

レグルス

よし、任せたぞ。

 そう言って、レグルスは赤傘の背後に移動した。

 そのまま背後から攻撃……ではなく、盾を構え、ガードの体勢を取る。

ヤクルト

何をしているんですか?

レグルス

背後に敵が居るのに、黙って見過ごすと思うか?
恐らくコイツは、あの時と同じ攻撃を選択する。

ヤクルト

……あ。

レグルス

回転しながらガードが出来るか。
試してみよう。

レグルス

来るぞ!

ジーク

そこか!

 ジークが放つ火球は、回転する赤傘の背中を直撃した。
 それは、トドメには十分過ぎる一撃だった。赤傘は倒れ、ついに沈黙した。

ヤクルト

やっとたどり着きましたね。

レグルス

ああ……。
本当はもっと楽なはずだったんだが、とんだ邪魔が入ったな。

ジーク

しかし、なんとか退けることができたな。
見事だったぞ。

レグルス

そうだな。リベンジも果たせたし、これでもう心残りはないな。

ヤクルト

ええ? どういうことですか?

レグルス

いや、実はな、そろそろ仕事が忙しくなりそうなんだよ。本格的に開発が始まるらしい。

別にゲームを辞めるわけじゃないが、今まで通りにはできなくなるな。

ジーク

そうか……、寂しくなるな。

ヤクルト

残念ですが、元々そのためにゲーム始めたんですもんね。
レグルスさんが帰ってくるの、待ってますよ。

レグルス

おう、また一緒にやろうな。
まぁ、時々は様子見に来るよ。

レグルス

それじゃ、またな。

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