マスター

うーむ、一体どうしたらよいものか

ナルサワ

ポチっとな

マスター

うむ、世代を超えた女たちの生々しいガールズトークというのもまた一興!ステイナウ!

ばあさん

追いかけないくていいのかい?あの人、嘘ついてると思うよ。本当はお嬢ちゃんにあの指輪を渡すつもりだったんだと思うよ

キョウコ

そうかもね。でもどっちでもいいの。
今の流れを壊したくないのよ。
成功にしても失敗にしても自分で自分の人生を選択したい。
昔みたいに旦那の顔色を窺って結局折れて数年棒に振っちゃう真似はしたくない。

マスター

実際むげに出来ない話だ。
私も生前の妻には頭が上がらない。

ばあさん

じゃあ、なんで彼を呼んだんだい?
アンタぐらいの器量の女ならわかるだろう?
相手に下心の有る無しくらいは。

マスター

そーだそーだ!

キョウコ

うーん、いけないってわかってはいるんだけど、いつも人生の変わり目に何となく会いたくなるの。
すごく優しいから、あの人。
まどろっこしい話し方だけど、聞き上手だし、褒めてもらうとやる気がちょっと出るっていうか。

マスター

身勝手!それに彼の事を良く言ってるようで敬意がまるで感じられないじゃないか!

ばあさん

まあ、分からなくもないがね。
女の独り商売は中々捌け口がないもんさ。

キョウコ

やっぱり会ってはいけない人だったわね。
もうこっちから連絡とるの辞めるわ。

ばあさん

そうかい?やるならケツの皮まで引っ剥がしておやりよ?

キョウコ

え?

マスター

なんて?

ばあさん

お嬢ちゃんは半端に良い女なんだよ。美人にしては優しすぎる。
吉原のお女郎さんのようにとまでは言わないけどさ、
付かず離れず、
客を一生掌で回すか、いっそ手籠めにするぐらいの覚悟が無いと女独りで店はやっていけないよ。

キョウコ

それはおかみさんの体験談?

マスター

エグみが出ない程度に聞いてみたい!

ばあさん

むしろ逆だね。
あたしは主人に従って半世紀以上ずっとこの店で生きてきた。
あんたみたいな野心とか自我なんて無いよ。
だからあの人が死んでから私はお化けになって、なんとなくここに憑りついているだけ。

キョウコ

良い話ですね。

マスター

私にはどこか耳が痛い話だな。

キョウコ

でも私はそういう人間じゃないと思う。
旦那がいようが、彼がいようがどうしても孤独を感じてしまうの。
そしてこの気持ちを誰に理解してもらおうとも思わないわ。

ばあさん

そうかいそうかい。

キョウコ

女将さん、間違ってます?
私の生き方?

ばあさん

あのね、お嬢ちゃん。
じゃあ、正しい商売人てどういう人間だと思う?

マスター

ずばり粋な空間と唯一無二の個性。
そしてそこに華を添えるインテリジェンス。
といったところかな。ふふふ。

キョウコ

うーん、沢山お金持ってる人かな?

マスター

だからキミのそういう所が私は間違っていると…

ばあさん

アタシもそう思う。

マスター

どぅえ!?

ばあさん

商売人は一番カネ持ってる奴が一番正しい。
だからお嬢ちゃんも自分が正しいと思いたいんなら、どんな手を使っても毎晩ウチに来てボトル一本必ず開けていくくらいの器量は見せておくれよ。

キョウコ

その通りね。
元気出たわ、ありがとう。
また明日も明後日もボトル開けに来るわ、ごちそうさま。

マスター

たくましい人たちだ。

ばあさん

ところでさっきからアンタ!お茶漬け一杯お冷一杯食べきるのにいくらかかってるんだい?
男なら酒の一升瓶でもポンと頼んでいきなよ!!
こちとらそこら辺の純喫茶店とかいって不味い飯出すとことはワケが違うんだよ!

マスター

え!?あ、はい。すいません。

ばあさん

美味いかい!?

マスター

はい!なんといいますか、鯛を使っているのに魚の臭みも一切無く、香り高い緑茶が何ともまた風味と彩豊かな茶碗の中のハーモニーを演出していて、音楽に例えるならエリック・サティの…

ばあさん

誰も能書き垂れろなんて言ってないよ!
美味いかい?って聞いてんだ!
イエスかノーかではっきり答えなよ!

マスター

イ、イエス!!美味しいです!

ばあさん

ったく、江戸っ子の主人が生きてたらアンタみたいなトロいのは今頃隅田川に沈められてたよ。命拾いしたね。感謝しな。

マスター

は、はあどうも。ありがとうございます。
(何か発想がレディース風?)
ご馳走様でした。お勘定お願いします。











一応私も半世紀以上浅草に住んでいる江戸っ子のはずなのだが…


パートB
おしまい

次週に続く

フォロウミー・イフ・ユーキャン 分岐パートB

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