霊深度

-3の、

君と面白味 ?

食前!

CridAgeT

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私が起きる直前まで、しとしとと雨が降っていたらしい。

雨は嫌いではない。

静かに湯を沸かして、この間作った緑のシロップに漬けておいたレモンの薄切りを、カップにゆっくりと浮かべる。





お湯がほんのりと色づいた。

カゲツもそろそろ起きてくるだろうし、ビターペストリーでも頂こうか?

その時、異質な音が響いた。

……電話

この家では、めったに電話が鳴ることはない。

連絡や仕事先からの呼び出しは大抵私の携帯に来るし、電話帳などに載せてもいない。



そもそも、仕事以外で誰が私に用があるというのか。


―――ひとつだけ、心当たりがあった。

……はい

熨斗目(ノシメ)だ

……君か

アレを持って今から言う場所に来い。

できる限り早く

****街……

   よくも   

私は、  すんでのところでカップを持ち直した。

……割らずに済んだ

なぜ私が呼ばれているんだ?

私に今更何の用が?

分かるだろう、言わずとも。僕は命令に従っているだけだ

……断ります

なに?

今更、と言ったでしょう。
処分した『もの』に、後々用ができたところで、もはやあなたの管轄ではない

返事を待たずに私は続けた。

シドだろう?


私も、お前の所有物じゃない

電話を叩き切る。

 ……カゲツ

こんなふうに二人でお出かけなんて珍しいですね!!

……悪いな

いえむしろ嬉し、いえ、何でもないです

……

雨で濡れたタイルの地面はよく滑る。

現場まで行かないと、居ないか

先生?

少し覚悟しろよ

路地を折れて、暗いほうへと歩いていく。

なんか、嫌な感じ……

お前もそこそこ『弱い』霊なら覚えておけ。

これは、近づかないほうが良い

しばらく進むと、ぴんと張られた細い黒の糸が行く手を阻んだ。

二重に張ったより糸の結界

……間違いないな、ここだ

糸を一本、指でつまむようにして振ると、溶けるように結界は消えた。



同時に、結界を監視していたのだろう、怪訝そうな顔の男が現れた。

誰だ? 

ん、立ち入り許可はあるようだな

ああ。

刈安(カリヤス)に用がある

え? カリヤス? ちょっと待っててくれ

あいつどこ居んのかなー

眼の一つしかない監視官が奥へと消えていった後、私は小声でカゲツに呼びかけた。

カゲツ、今日はどうだ?

んー……

このあたり、すごく湿っぽいです。
それと、さっきの人、なんか体重よりけっこう重い!

そうか。現場や他の奴についても分かるか? 見てこい

はい!

カゲツは駆けていった。

数分が経ったか。

私もついていったほうが良かったか?

いや、心配いらないだろう

そんなことを考えていると、

あんまりホイホイ現場に連れ込まないでくれ

カゲツの首根っこを文字通り掴んで、カリヤスが歩いてきた。

せんせい、全部見て回ったんですけど、つかまっちゃいました……

ほら、返すぞ

  はぁ

私はカゲツの耳を押さえた。

カリヤス

分かってるよ

ノシメが話したんだな?

カリヤスは目を逸らしたり合わせたりしながら、頭をガリガリと掻いた。

仕方なかったんだよ。ノシメがシドに逆らえるわけないだろ? 大したことは知られてないし、言わせないから安心しろ

それで済むとお前は思うのか

なあカガミ、話くらいはしてもらえるな? 俺だって何も聞かされないままは嫌だぞ?

せんせい?

……私のことは、これ以上、一切口外しないと誓えばな

大きな音が鳴った。

お前、腹が空いてるんだろ?

私はすぐに台所に向かった。

ああ……誤魔化しようがないな

そう言いながら、急にカリヤスは顔をしかめた。

……何を作る気なんだ?

カルパッチョだ。適当な白身魚とアボカドを……ディルとケッパーも使う予定だが

なんか怪しい名前が出てきたんだが、食えるのか?

せっかくお前の『食べられる』ものにしようと思ったのにな。

それなら白桃パスタと、トマトとコケモモの茎のジュレにするか

すまん俺が悪かったから魚のほうにしてくれ!

プラス10

マイナス3

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小計 プラス7


積算 プラス9


霊深度 現在???

霊深度- 3の  「君と面白み」 食前

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