第三話 おしまい
ううぅ……背中が痛い……
無事か、たぬき……って無事なわけねーか
嫌な予感したから来たぜ
その様子から察するに……焼かれたか?
賢者様、いらしていたんですね
ええ、気付いたら焼かれました……
突然背中にマキを背負っていて、振り返ったらあるはずのないそれが燃えていたんです
おかげで自慢の巫女装束こそ無事でしたが、火傷を負ってしまいました……
そこは装束よりも自分優先しろよ……
お前さんも大概だな……
お陰様で……今日は踏んだり蹴ったりです
変な老夫婦には狸汁にされそうになるし……
背中は突然燃えるし……
今日はこのまま寝ることにします
……………………
あーいや、待ってろ
今、お前用に薬を手配してある
やけどにはよく効くらしい
本当ですか!?
ありがとうございますっ!
罪悪感半端ねえ……
この無垢なたぬきに俺はなんて事を……
だがこれもそろそろ路線がおかしくなっているかちかち山に補正するためだ……
必要悪なんだ……
やらなきゃいけないことなんだ……
然しお前さんの住まいもとんでもないな……
ここは天然の洞窟じゃないだろう?
あっ、はい
この場所は古代に存在したという大国の名残だそうで、私はそこに住み着いているだけです
卑弥呼がのいたっていう国か……
時系列めちゃくちゃだな……
こんな場所ですが、ライフラインはしっかりしていますよ?
水道ガス電気、みんなきていますし
ここ洞窟だよな!?
しかも名残!!
なのにライフラインとな!?
お前さん……
実は幻想なんとかって所の出身だったりしないか?
あそこには脇だし巫女も居るけど同類か
それとも何か怪しげな術で改造したのか?
……と言われましても……
私はこの山生まれ、この山育ちですよ?
人間に化ける野生動物の大半は、ミラクルとちょっとした裏技で大抵、この程度の生活基準は満たしてますよ?
人間の文明を間借りしているだけですけどね!
公共料金とかは支払いません!
あれ、どうしてだろう……
このたぬき含めてだいたいの生物、痛い思いしてもいい気がしてきた……
……そうだ
人間の文明を勝手に使っているたぬきは無垢ではない、害獣である
そして俺は森の賢者
賢者たるもの、愚者にはバツを与えねばなるまい
俺が、俺達が、賢者だッ!!
……そろそろ、薬が届く頃だな
あっ、そうなんですか?
あぁ、寝る前に塗ってもらうといい
俺ではセクハラになるからな
届けてくれたうさぎが塗ってくれることだろう
わざわざ心配して頂いてありがとうございます!
本当に助かりました!
フッ……
愚かなるたぬきよ
知らぬまま塗布されるがいい
お前に塗られるそのやけど薬
俺が羽合さんのオヤジに習って調合した特別な薬なのさ
南国の島に移動なしにできるとは良い時代になったもんだ
真実はいつも何とか……ってな
お前が犯人でないことはしっているが、真実はお前が悪だということだ……
大変お待たせいたしました
賢者様、仰せのものをお持ちいたしました
ご苦労だったな
よくぞやってくれたうさぎよ
では……始めるといい
全力でな
御意
へっ?
全力……?
大丈夫……痛いのは一瞬だから
が、我慢します……
じゃあ、お願いしますね……
たぬき……自分の罪を、数えろ……
やれやれだな……
ギニャアアアアーーッ!!!!
そう、確かに彼女に罪はない……
だが彼女を悪だと誰かが言うのであれば
俺は賢者として彼女にバツを与えねばならない
バツを与えられる理由?
そんなものは決まっている
たぬきだからさ
……けんじゃ、さま……
なん……だとッ!?
はかり……ましたね……けんじゃさ……ま……
なぜだ……なぜ動けるっ!?
あの薬には、痛みを伴う特効薬をこれでもかと配合したはずだ!!
塗られたら最後、気が狂うほどの激痛に苦しみ数時間は再起不能になるはず!!
私は……風狸……ですよ……
この程度の痛み、乗り越え、て……
…………
うさぎ、何をしたんだ?
薬の中にカプサイシンとシオと激辛のエキス、追加で練りこんでみた
アホかぁッ!!
アウチッ!!
何してんだお前はっ!!
俺は効力のある薬しかいれてねえぞ!?
あれつまりはだいたいお前のせいか!!
うんっ、私のせい
でもあそこまで動けるなんて、意外……
ここは、本気であのたぬきを排除しなければいけない
おの……れ……
けんじゃさま……
うさぎ……
な、何をする気だ……?
賢者様、ここは私に任せて下がってて
ア゛ァ゛……あ゛あ゛ァ゛あ゛ア゛ぁ゛……
やばい!
たぬきがどっかのホラー映画みたいな声出してる!!
大丈夫!
私が倒すッ!
こっちはなんだ!?
かもーーーーんっ!!
レッドバローーーーーンッ!
何か降ってきた!?
ガ○ダムッ!?
違うよ、賢者様
この子はレッドバロン
私達うさぎが所有する数機のうちの一つ
外敵駆逐用決戦兵器に開発されたのです
相手の返り血を浴びすぎて真っ赤に染まったのが特徴的なのです
近々やるであろうババアとの最終決戦に備えて試験稼働中なの
……たぬき一匹殺すのにここまでするか……
ダメだこのうさぎたち、早く何とかしないと……
オオオオオオォォォォオオオオオォォォォォォ!!
ってあっちも本気かよ!?
何か今度は地響きするんですけどォッ!
この反応……まさかっ!?
レッドバロン、気を付けて!
ユルサナイ
ユルサナイ
ケンジャサマアアアアアアア……
えっ、全部俺のせい!?
我、謳ウハ痛ミノ嘆キ
我、奏デルハ悲シミノ聲
我、願ウハ夜天ノ宙
我、欲スルハ虚ロノ世
たぬき幻術禁忌ノ型
災禍ノ調ェ!!
……私の憎悪を……思い知れェ……!
今度はなんだ!?
た、たぬきが……
あの可愛いたぬきが……
化け物に……!
アレは、禁忌術……
とうに滅び、失われた術式なのに……
くっ!
レッドバロン!
インプット!!
エネミー、デリート!!
殺しなさいッ!!
うわぁ………
たぬきとうさぎの最終決戦かぁ……
どーしようこれ……
まあいいや
なるようになれば
第三話 おしまい