第二話 おしまい
うえぇ……
何時の間にか全部私がいけないことになってるんですかぁ?
私、何もしてません……
罠仕掛けるなんて、酷いですよ……
…………
…………
あのぅ……笑顔が怖いです……
そもそもおじいさんとおばあさんの作物を荒らしているのは、私じゃなくて隣山のたぬきなんですけどぉ……?
…………
…………
私、確かにたぬきですけど……
たぬき違いかと……
って、聞いてますか?
れっつ
ダァアアアアアイ!
ふあっ!?
な、何するんですかぁ!!
鉈なんて振り下ろして!
こっち足固定されてて動けないんですよ!?
逃がさない、かな……? かな……?
ウッデイ!
ほあぁ!?
わぁ!?
……危ないですね、もう!
ナタはブーメランじゃないんですよ!
投げないでくださいッ!!
ならばバットよッ!
ウッデイ!
これしきっ!!
私とて昭和たぬき大戦ポンコツを乗り越えた古参!
ヤル気ならば私も容赦しません!
くっ……
じいさん、このたぬき……ッ!
そうじゃなばあさん……
このたぬき、出来るわいっ!!
たぬきに責任転嫁するのはやめて欲しいです!
毎度毎度、賢い人々の影で被害者になるのはいつもたぬきなのです!
ほざけ畜生風情がッ!
ばあさんの手塩にかけて育てた野菜を掻っ攫う害獣め!
その罪……
万死に値するっ!!
覚悟せい、たぬきッ!
貴様は背中にマキを背負わせそこに炎を焼べてやる!!
そ、そんな拷問はお断りなのですっ!
不本意ですが、こうなれば……ッ!
たぬきの里一番の術の使い手、風狸(ふうり)の私が世のたぬきのため、おじいさんとおばあさんを成敗致しますっ!
お覚悟をッ!
覚悟するのは貴様じゃたぬきィッ!!
ぶっ殺すッ!!
ひぃぃぃぃぃぃぃぃーーーー!!
食われたくないのですううううう!!
はぁ……ハァ……
このたぬき、何もんじゃ……
一体どんな修行すれば、ばあさんとマトモに戦えるんじゃろうな……
ばあさん、大丈夫かね?
あたたたた……
まったく、ワシも年だぁねぇ……
ぎっくり腰にでもなったかのう
まさか風狸だとは思わなかったわい……
だから犬の仲間は嫌いなんじゃ……
鬼ヶ島にいた頃から、犬とモンキーとキジだけはダメなんじゃよ……
何時ぞや蒼い未来狸と決戦したときも、島吹っ飛ばされる被害がでたの、覚えておるかじいさん?
あったのぅ、そんなこと
あの時は酷かった……
ワシのパンチで時空を超えて戻したはいいが、島が余波で吹っ飛んじゃったなぁ……
キジとモンキーは倒せるのじゃが、犬だけはダメじゃのう……
たぬきは犬と似たようなもんじゃからか、今でも勝てんわい
なぜに、お猿さんだけ英語なのですか
じいさん、たぬきが火力を上げて欲しいようじゃぞ?
分かったぞい
熱いのですぅー!
焼けるのいやぁー!
熱いのなら茶釜にでも変身すればよかろうて
そうしたら売りさばいてくれようかの
完全に別のお話なのですよ!!
酷い、酷すぎるのです…………
人の皮を被った妖怪みたいです……
何を今更
ワシは元々、鬼ヶ島の鬼じゃよ
見てのとおり、ワシャ般若じゃぞ
元々、勝ち目なんてなかったのですね……
……私、何もしてないのに……
理不尽であろう?
鬼とは常して、理不尽で不条理
厄災と呼ばれる所以は人の世に悪として存在するからじゃよ
ワシはその、じいさんに口説かれておるから悪さは二度とせんが、鬼は常に傍若無人に振舞うもんじゃよ
ばあさんはワシの嫁じゃ
誰にもやらんぞ
惚気けられた!?
惚気けておらんよ、事実じゃ
お主も悪さしないと誓うのなら、別に解放してやらんこともないぞ?
気分が良くなったきたのでな
じいさんに看病される口実を作った事で許してやっても良いぞ?
鬼は頑丈じゃからそうそう怪我せんのでな
えぇー……何でそうなるんですか……
単純にイチャイチャしたいだけじゃあ……
それが本音じゃが何か?
お邪魔虫は追い払いたいのが理由じゃよ
ふたりきりでいちゃつくのも悪くないのぅ
よしたぬき、お前さん消えろ
そんで二度と悪さするでない
あっさり解放された!?
しかも一方的!!
たぬき違いしておいて、謝罪もなしですか……
ひどい夫婦ですねえ……
キェーッ!!
はよ消えんかッ!
ひぃっ!?
わ、わかりました!!
愛の巣から出ていきますよもう!!
なんで私がこんな目に……
ターゲット、確認!
一式、セットアップ!
射出っ!
ん……?
何か肩が重い?
っていうか、ドサッ?
なにもない……
聞き間違い?
続いて、カチカチ装置の起動!
射出っ!
……?
疲れてるんですかねえ……私
電気式全自動発火装置、点火!
がたがた?
なんの音?
くっ!?
機械式では無理だった!?
やはりカチカチとは鳴らない!?
へっ……?
なに今の?
なにかを点火したような音?
ギニャアアアアアアーーーーー!?
焼けてる!?
焼死回避しているハズなのに何か焼けてるううううううう!!!!
あああああっつああああああっ!!
よしっ、成功……
カチカチしなかったけど……
取り敢えず、第一段階完了
犬のくせにネコみたいな声出すたぬき、許すまじ
次は薬を渡すフリをして、毒を塗りこんでやる
ふっふっふっ……
ふははははははははっ!!!!
第二話 おしまい